日本の文学賞

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遮光

野間文芸賞

遮光

辻井喬

辻井喬の『父の肖像』は、父という存在をめぐる記憶と戦後社会の変化を重ねた長編。家族史と個人史の奥に、時代の価値観、権力、孤独がにじみ出る。

家族戦後記憶

作品情報

父の姿をたどることは、家族と時代の影を見つめ直すことでもある。

私的な記憶を社会の変化へ接続する構成が評価されている。静かな筆致の中に、父子関係の距離と時代の重みが残る作品として読まれている。

レビュー要約

  • 私的な記憶を社会の変化へ接続する構成が評価されている。静かな筆致の中に、父子関係の距離と時代の重みが残る作品として読まれている。

書籍情報

出版社
新潮社
発売日
2004-07-01
ページ数
157ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784104588022
ISBN-10
4104588024
価格
1122 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

愛する者を失った「私」は、他人が知れば驚愕する、ある物を持ち歩いている。しかし、それは狂気なのか――注目の新鋭の衝撃的な力作。

レビュー

  • 究極のラブストーリーかも

    先に「銃」読んでたから、こちらも、読み進めるのが面白い反面、不安でした。心地よい不安というやつですが。 でも、悲しい涙も出たよ。

  • 『銃』から『遮光』へ

    作者のデビュー作「銃」に続く第二作「遮光」は、非常に似通った兄弟のような小説だ。 『銃』では、死体から銃を持ち帰り、日々銃を持ち歩き、その銃に支配され、常軌を逸してゆく。 『遮光』では、死体から指を切り離して持ち帰り、日々指を持ち歩き、その指に支配され、常軌を逸してゆく。 こう書くと、非常に似通っていることがわかるだろう。 しかし、『銃』は徹底的に孤独であり、なぜ主人公が銃に魅せられてしまうのかが不明瞭だったが、 『遮光』は死んだ恋人の小指であり、それを持ち歩くには恋人を失ったことを認めたくないという明確な理由がある。 そういう意味では、ひとつ、人との繋がりというものをテーマとして導入し、進化したとも言える。 だが、迎える結末は同じ殺人である。 なぜ、同じ着地点へと辿り着いてしまうのか? 『銃』ならわかる。銃自体が人を殺す道具であり、既にそれに魅せられた時点で人を殺してしまいたくなるのが人間というものだ。 しかし『遮光』は恋人の死体から持ち去ってきた小指だ。それが人を殺す理由になり得るだろうか? 主人公の私は、ずっと演じ続けていた。そして典型的な幸福に憧れていた。それを恋人と迎えたかった。 それが、あまりにも唐突な「恋人の死」によって、不条理にも奪われてしまう。 その怒りの感情にずっと「私」は気づかない振りをしていたのだが、あるきっかけによってついに爆発ささせてしまう。 それが殺人へと繋がってしまった。 つまり『遮光』は、不条理と決別し、自分の本物の感情を手に入れたかったのだろう。 指を口にくわえて終わるラストが、恋人との一体感を強く求める「私」の着地点だった。 殺人まで行き着かなければ目覚めなかった生の感情。 果たして「私」は初めから狂っていたのだろうか。それとも恋人の死が彼を狂わせたのだろうか。 私はどちらでもないと思う。主人公は決して狂ってはいなかった。ただただ孤独だったのだ。 『銃』を読んだとき、この作者のテーマは「悪」だと思っていたが、私は間違っていたのかもしれない。 作者が描き出すのは、本物の「孤独」なのだ。

  • 人の内側に対して純粋に向き合った小説

    とても共感しました。 なぜわかるんだろうと思いました。 よく言葉にできるなぁと驚きました。 きっと中村さん自身の話だからこれだけ書けるんだろうと思いました。 読んでいると、自分自身について理解して行っているような気がして、昇華している気分になります。 暗い気持ちが消えて明るくなるわけではありませんが、理解した気になって少し安心した気持ちになりました。 あらゆる欲を感じない、人の内側に純粋に迫った小説だと思います。 同じ感覚を持つ人がこの小説に出会えたら救われるだろうと思います。 中村さんありがとう!

  • 混沌あるいは混濁した意識

    負の話。 虚言症と云われる人の心理とはこのようなものかもしれないとおもった。 子供の頃の心理的外傷がトラウマとなり、二重人格といえば、真夜中は別の顔、という名作があった。(初めて英語のままよんだ本だったがわかり易くてぐいぐい読んだ) 人格の統合ができなくなる混沌とした意識。 壮絶な暴力は混沌に潰されそうな自分への防御行為だったのか?

  • 純愛悲劇

    とある場所で順番待ちをしている時読んでいたのですが、自分の番号が呼ばれているのに 気がつかないくらい入り込んでいました。 確かに暗いですが、暗い以上に小説として面白いです。 テンポもいいし、読みやすいし(内容の取っ付きやすさではなく)分かりやすい小説だと 思います。 ドラマで見たような「典型さ」を求めて虚言や演技を続けるこの主人公は病的ですし、 気味が悪いのですが、私には最近の若い人の「キャラを作る」というのと、どこか共通す るものも感じました。 自分の感情を素直に出さず他者から見た自分を演出するだけなら、普通の若者と同じで しょう。しかし彼の場合は自分の感情が分からない、というか、感情はあるのに自分で それを認識できてないように思います。 まるでアンドロイドが テレビドラマで人間の感情を学習して行動しているような不気味 さが際立ち、同時に悲しみを感じます。 その原因らしき彼の生い立ちが語られることによって人間を単純化してしまう気もします が、このくだりはやはり哀れを誘います。 ただ彼はもちろんアンドロイドではなく、本当は誰よりも愛を求めている孤独な若者。 その愛を喪失した時、狂気は芽生え、ようやくその愛を認識したとき暴発する…。 これってやっぱり純愛物語にして悲劇と私は読みました。

  • 多分文学と言うのはこういうもの、二度と読み返したくはないが読んでよかった

    谷崎、三島などの世界観を現代に持ってきたような感じ。現実と向かい合えずに何かに救いを求めたり、急に狂ったようなことを言って自分自身に酔いしれたり、自暴自棄な行動を取ったり、深いところでは共感できてしまうのが怖い。僕は同じようにやりたくはないし、絶対にしないと思うけど、自分の中に渦巻く陰鬱な部分が垣間見えた。

  • 一番好きな小説!と言ったら人格を疑われそうだけど

    中村文則さんにハマって一番好きな小説です。 何故この方はいつも過去に闇を抱えた人ばかりを主人公にするのか? 他のレビューでは「ありきたり」なんて言葉も見えましたが、 毎作ですよ?ありきたりの発想ではない気がします。 著者は作品それぞれの闇の背景をわたしたちの普遍的なありきたりさと 沿わせているんじゃないかと思うのです。(意味わからなかったらすみません) 毎回主人公に感情移入できる部分を見つけてはゾッとする、 でもその怖さって誰もが持ち合わせている一面だと思うのです。 その感覚は中村文則さんならではだと思っています。 世間は分かりやすい謎解きミステリーを激押していますね、 わかりやすさは無くても、考えさせてくれるような内容味のある作品こそ、 永く残して欲しいと思います。

  • 大なり小なり『指』を持ち歩いて生きている

    親の愛に飢え、孤独な少年時代を過ごしてきたが、美紀という恋人に出会い、 幸せな家庭を夢見る。美紀の突然の事故死を受け入れることができず、 遺体の指をホルマリン漬けにして、常に鬱屈した気持ちを抱きながら、持ち歩き、 最後はふとしたことで人を殺してしまう。 未来への明るさはもちろん、主人公の救いも、読書から得る教訓もなにもない。 単なる自己中心的な殺人者の話とも捉えられる。 作者の作品には幼少時代に辛い思いをした人物に焦点が当てらることが多い。 ここまで暗く書き切るのは、意図的というよりも、作者の心の叫びであるのだろうか。 ドフトエフスキーや安部公房の影響を感じるが、あまりに簡単に読み易すぎる。 作者が100年後にも読み継がれる小説を目指しているのであれば、更なる人生の深さを感じさせてほしい。

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