作品情報
脳と心の間に生まれる「仮想」の力を、科学と思想の両側から見つめる。
茂木健一郎が、感覚の質感であるクオリアを入口に、脳が作り出す現実感と仮想の働きを論じた代表的エッセイ。2004年に新潮社から単行本として刊行され、第4回小林秀雄賞を受賞した。文庫版も刊行されているが、受賞時の単行本 ISBN を書誌識別子として採用した。
レビュー要約
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科学的な問いを平易な語りで思想的な問題へ接続する点が評価されている。専門的な用語を扱いながらも、読者を脳と心の不思議へ導く構成になっている。
書籍情報
- 出版社
- 新潮社
- 発売日
- 2004-09-22
- ページ数
- 222ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784104702015
- ISBN-10
- 4104702013
- 価格
- 2380 JPY
- カテゴリ
- 本/人文・思想/哲学・思想
第4回小林秀雄賞(2005年度)受賞
茂木健一郎(もぎけんいちろう)脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京工業大学大学院客員助教授(脳科学、認知科学)、東京芸術大学非常勤講師(美術解剖学)。1962年10月20日東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。主な著書に『脳とクオリア』(日経サイエンス社)、『生きて死ぬ私』(徳間書店)『心を生みだす脳のシステム』(NHK出版)、『意識とはなにか--<私>を生成する脳』(ちくま新書)、『脳内現象』(NHK出版)、『脳と仮想』(新潮社)、『スルメを見てイカがわかるか!』(角川書店、養老孟司氏との共著)、『脳の中の小さな神々』(柏書房、歌田明宏氏との共著)がある。専門は脳科学、認知科学。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。出井伸之氏の提唱するソニーのQUALIAプロジェクト・コンセプターとしての活動も行っている。
レビュー
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小林秀雄のきつい反撃
仮想というのが、 現実的な感覚と同様に同じ脳の機能の産物である というのは、脳科学者らしいまじめな意見だと思います。 面白かったのは、「仮想の切実さ」と何度か言及されて ますが、仮想の世界を探求するのはそれが嘘っぱちだと わかっているからで、現実であってはならないという ようなことが書かれていたことです。 そうした様々な仮想の一致が、僕たちが普通言うところの 「現実感」と指摘されていて、ここら辺が一番 新しいところかなと感じました。 ある意味全然想像外の考え方でした。 何度か小林秀雄の引用が出てくるのですが、 小林秀雄は引用の中で「おばさんの魂はありますよ」とか、 「子供の魂はどこかにいますよ」とか断言しています。 容易に実在するしないの論法には加わらずに そう断言してしまうのはすごいことだと思いました。
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進化論の議論の進め方が統計的真理の典型ではなくて哲学的だと思います
科学的世界観はプラグマティズムによればどこまでいっても仮説にすぎないので動的な関数として捉えて意識を流動的なもの捉えた場合ルーマンの言うような多数の要素からなる動的なシステム均衡が成立するので意識を科学的世界観と整合性のある形で説明するのは不可能だと思います。
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新認識!
現実とは何なのか。仮想とは何なのか。 脳が何を感じて何を認識しているのか。その不思議なメカニズムがとても面白い。 そして最終章の「魂の問題」にて存在を説く。
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切実さが伝わってこない
茂木健一郎の講演会で、「話し言葉は、書き言葉より格が上である。小林秀雄の講演は素晴らしいし、ソクラテスだって書かずに話した」と本人が述べていたが、「まさしくその通り」という内容の一冊だった。文章が腑に落ちない。なるほどと思えない。引用が不適切だと感じる箇所が何箇所もある。古今東西の著名人を引き合いに出して虚勢を張っている印象すら受ける。しかし「小林秀雄の蛍」と「三木成夫の胎児」のエピソードは面白かった。そして素晴らしいのは最終ページに宣伝として紹介されている本のラインナップ。『免疫の意味論』『フェルマーの最終定理』など読むべき本が一覧になっている。
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やさしい小林秀雄入門として読みました。
茂木さんの問題意識は、近代科学が置き去りにしてきた心脳問題へのひとつの解決がクオリアを通してできないかということみたい。(違っていたらごめんなさい) 約40年前に、小林秀雄が「感想」でベルクソンを引用しつつ途中で置き去りになってしまった問題に対しての新たなアプローチとおもわれる。 「こころ」「じかん」「ことば」人間はなんているんなことを考えるのだろう。 心と体の関係は?記憶はどこにあるの?肉体が滅びるとその人の記憶も途切れてしまうのか?など、 小林秀雄の後継者が、40年の時空を超えて新たに切り開くもの。 ただ、小林秀雄と茂木健一郎はあきらかにちがう。小林秀雄は本当に書きたいことが現れるまで書くなといった人、かたや現代の小林秀雄は、BlogやHPで書きまくっている。この辺は、時代の変化か?文章の重みの差になってしまうのは仕方の無いことかもしれません。
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クオリアから仮想
2006 再掲 茂木さんも養老先生も根本的興味は「物質である脳からどのように意識が生まれるか?」である。この本では仮想と現実という文脈でその疑問に少しでも答えを出そうとしている。その為に茂木さんは広範な情報や資料を文学、哲学、宗教、芸術から抽出し、さらには長島茂男まで投入して論じている。養老先生のコンピューターゲーム好き(本人も自著の中で述べている)を仮想と言うコンテクストで説明しようともしている。茂木さんご本人もニュートンやアインシュタイン以上の天才(変人?)が現れない限り「物質である脳からどのように意識が生まれるか?」と言う疑問は解けないのではないかと想像している。どのようなブレークスルーがあれば私たちは脳内現象を理解出来るのか興味がある。 我思う、故に我あり まさに脳内現象である。
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脳と仮想=自分と現象
とても素晴らしいタイトルです!もちろん内容もすばらしいです。創造または、大きな「気づき」への哲学・科学・文学的アプローチがとても興味深い。読み物としてもとても面白かった!おすすめです!
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切ない感覚
続けておもわず読んでしまった茂木先生の本です。この本で、第4回の小林秀雄賞を受賞しています。 「ねえ、サンタさんっていると思う?」という少女の声を、空港で耳にしたことをきっかけに、人間が仮想するということの意味を今一度深く考えて表していこうという気持ちから、この本が生まれたそうです。 冒頭の小林秀雄から始まり、和泉式部や漱石、一葉、ワーグナーなどを取り上げながら、人間の心がどのように生まれてくるのかということを真摯に探求していきます。 この茂木健一郎さんは、最先端の脳科学者で有りながら、凄く文学的、情感的、芸術的な文章を書く方で、私はなんども切ない思いに涙があふれてくると言う素晴らしい体験をしました。 解剖学者の三木茂夫さんのお話なども非常に印象深く、この本で私が経験したことは非常に文学的体験でした。人間の脳の記憶をテーマに物語るとき、必ずと言っていいほど、切なく悲しい感覚に陥るのはいったいなぜなのでしょう。初めて脳の働きについて書かれた本で、涙したのは「感受性について」という本でした。この本は宇野さんという女性の方が書かれた本でした。その後三木茂夫さんの本でも、人間の生命の記憶ということの凄さをはじめて体験し、感動と共に限りなく切なく、悲しい気持ちが湧き上がってきたことを思い出しました。そして養老猛司さんの本でもはからずも涙があふれ、そしてこの脳と仮想という茂木さんの本を読みながら、それらの過去のいくつかの経験のシーンが思い返されるのです。 本来の人間の存在の切なさ、悲しみのもとはきっとこの脳の働きというものにあるのではないかと感じます。遥かかなたの過去を想いながら、その進化の過程で、意識と言うものをもち、物語を作り出す、そのような心をつむぎ続けてきた人間という存在、そして宇宙に思いを馳せる、そういった大切な時をもたらしてくれる茂木さんの本をぜひ読んでみてください。
関連する文学賞
- 小林秀雄賞 第4回(2005年) ・受賞