日本の文学賞

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隅田川暮色 (中公文庫 し 7-6)

日本文学大賞

隅田川暮色 (中公文庫 し 7-6)

芝木好子

組紐の復元に打ち込む女性を中心に、伝統工芸と隅田川沿いの暮らしを描く長編。工芸に向かう執念と、大川端の人々の哀歓が静かに重なる。

伝統工芸隅田川女性東京暮らし

作品情報

組紐の色と川辺の暮らしが、失われゆく東京の陰影を映す。

芝木好子が得意とした職人や芸の世界を、隅田川の風景とともに描いた作品。厳島組紐の復元に心を注ぐ冴子を通じて、技と生活、過去と現在が結ばれていく。

書籍情報

出版社
中央公論新社
発売日
2024-08-20
ページ数
320ページ
言語
日本語
サイズ
2 x 10.5 x 15.1 cm
ISBN-13
9784122075474
ISBN-10
4122075475
価格
990 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

呉服問屋生まれの冴子は、内縁の夫の実家が営む組紐づくりに魅せられ手伝う日々。職人として技量は認められるが、肩身は狭い。そんなある日、八百年前の厳島組紐復元計画に誘われる。手仕事の歓び、前妻の影、幼なじみとの再会……。隅田川端に暮らす人びとの心の襞を哀歓込めて描く、日本文学大賞受賞作。〈解説〉堀川理万子

芝木好子 一九一四年東京生まれ。東京府立第一高女を卒業し同人誌「文芸首都」に加わる。四一年「青果の市」で芥川賞を受賞。主な作品に「湯葉」(女流文学賞)『青磁砧』(女流文学賞)『雪舞い』(毎日芸術賞)など。下町への追憶、仕事や芸術に打ち込む女性を濃やかに描いた。八六年勲三等瑞宝章(没後勲二等瑞宝章)受章。八九年文化功労者。九一年没。

レビュー

  • 満足です

    満足しています。地元の県立市立ともに図書館の蔵書に無かったので購入できて良かったです。

  • 男女の愛憎も伝統の美も隅田川に流れてゆく。

    主人公の冴子は内縁の夫である悠の実家で組紐に魅せられます。呉服問屋を営んだ亡き父への思いを胸に、幼馴染みである紺屋の俊男との再会にも心踊らせながら組紐作りに打ち込んでゆきます。時に古代の紐の変幻自在さに苦闘するのですが、読み手としては組紐というもはや一般になじみのない世界を知る楽しみがありますね。著者の精緻な描写によって、伝統工芸としての魅力が読み手に染み入ってきます。 とともに、登場人物の関係や消息が少しずつですが明らかにされます。戦中戦後にわたる夫の実家の内情、妻子ある男と内縁関係となった経緯、そして自らの父母の最期。そんな中で、夫の甥が次第にまとわりついてくるようになる。甥は父母の愛を知らず、母性への憧憬と執着から冴子への傾斜を強めてゆく。冴子は用心しますが、この若者との何気ない会話から古代紐の謎を解くヒントを得ます。 後半、展開が。夫が別れた妻や娘と密かに会っていることを知り、冴子は家を出る。隅田川の畔に立ち亡き父を思い、幼馴染の俊男を情を交わし、組紐もあきらめようと思うが、俊男の父で今は死の床にある元吉に続けるよう強く言い聞かされる。ラストはどうなるか。 筋らしい筋のない芝木文学の特長ですが、文章がしっかりしていて、時に深く感じ入る言葉があります。渡仏する夫と心を通わせたのか、幼馴染みの俊男と別れるのか。いずれも判然としませんが、これも芝木文学の「芸」でしょうか。組紐の如く織り成す男女の綾を堪能しました。 単行本で読んだのは二十年以上前。ちなみにその時の装丁は江見絹子(荻野アンナの母)、今回は絵本作家の堀川理万子です。

  • 良い小説でした

    隅田川流れる東京下町を舞台にそこに生きる人々の人間模様を描いた作品。著者の長編は初めてですが美文で読みやすく筆致や描写の冴えは昭和の女流作家の凄さを感じ取ることができました。 物語は夫の家業である組紐作りを手伝う主人公冴子を中心に展開していきますが、夫の愛情を長年受けずに生きてきた冴子の悲しみに終始感情移入させられました。冴子が家出をする終盤からは物語の面白さが佳境に。悔いのある人生を送ってきたという冴子ですがそれでも力強く生きていこうとする姿に心が動かされました。川が燃えたという空襲描写も印象に残りましたが、そんな空襲で亡くした父への思いが冴子にとって深いものであることも伝わってきました。 画家堀川理万子さんの手がけた綺麗な表紙画と秀逸な解説も見所です。

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