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ハーモニー (ハヤカワ文庫 JA イ 7-2)

大学読書人大賞

ハーモニー (ハヤカワ文庫 JA イ 7-2)

伊藤計劃

医療と福祉が徹底管理された未来社会を舞台に、人間の身体と意識、自由意志のありかを問うディストピアSF。三人の少女の過去と、成熟した管理社会で起きる異変が交差し、健康と幸福の名のもとに失われるものを描く。

ディストピア生命管理自由意志意識SF

作品情報

健康と幸福が管理される世界で、意識と自由の境界が揺らぎはじめる。

早川書房刊。単行本刊行後、ハヤカワ文庫JAとして刊行され、版元ドットコムと NDL で ISBN・ページ数を確認した。日本SF大賞、星雲賞などでも知られる伊藤計劃の代表作。

レビュー要約

  • 緻密な未来社会の設計と、身体管理をめぐる思想的な問いが高く評価されている。冷たい設定の中に、少女たちの関係と喪失感が強く残る点も読者に印象を与えている。

書籍情報

出版社
早川書房
発売日
2010-12-08
ページ数
384ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784150310196
ISBN-10
415031019X
価格
549 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

ベストセラー『虐殺器官』の著者による“最後”のオリジナル作品<br> 21世紀後半、〈大災禍〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は見せかけの優しさと倫理が支配する“ユートピア”を築いていた。そんな社会に抵抗するため、3人の少女は餓死することを選択した……。 それから13年後。死ねなかった少女・霧慧トァンは、医療社会に襲いかかった未曾有の危機に、ただひとり死んだはずだった友人の影を見る――『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。日本SF大賞受賞作。

いとう・けいかく●1974年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』で作家デビュー。同書は「ベストSF2007」「ゼロ年代ベストSF」第1位に輝いた。 2008年、人気ゲームのノベライズ『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』に続き、オリジナル長篇第2作となる本書を刊行。第30回日本SF大賞のほか、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門を受賞した。2009年没。

レビュー

  • 現代人が考えるべきテーマが含まれる小説

    非常に興味深いストーリーだった。登場人物たちの行動も、そのバックグラウンドから、やはりそうするであろうと納得させられるものだった。 非常に残酷なエピソードも含まれるので、人に推薦するのは躊躇されるものの、現代の人々が考えるべきテーマが含まれるので、一読する価値はある書籍だと思う。

  • 医療管理と〈個〉の尊厳を問う静謐なディストピア

    本書は医療と福祉が高度に制度化された「調和」社会を背景に生体管理と倫理的自治の衝突を冷徹に描いた長篇小説である。表面的には「全体の幸福」を実現する理想社会を描くが、物語はその内部に潜む抑圧と異質性を少しずつ露にしていく。結果として読者は健康と安全の名のもとに差し引かれる自由の代償を問わざるを得なくなる。

  • おすすめされて読む価値はある

    初SF長編だったのですが、読みやすくとても楽しめました。とても。

  • ハーモニーとは

    日本が誇るSF長編です。

  • 重いテーマを扱いながら、エンタメとしても極上

    すごい小説を読んだな、というのが率直な感想。「人間と何か」を考えさせる、重いテーマを扱いながら、エンタテイメントとしても極上。同著者の「虐殺器官」も面白かったが、個人的にはそれ以上に衝撃的だった。日本を代表するSFのひとつだろう。 ホワイト社会を突き詰めたような、息苦しいほどに調和した社会で突然発生した集団自殺をめぐり、その謎と背景を解明していく。ディストピアSFであろうが、SFミステリの要素もあり、物語に引き込まれる。現代はホワイト社会化が進んでいるが、これを予言するような作品だと感じた。

  • 先に虐殺器官を読んだ方が吉

    虐殺器官を含むネタバレ有の評なので、未読の方は注意。 表題の通り世界観としては虐殺器官の後年を描いた作品。 テーマや内容としても虐殺器官で語られていた内容を更に推し進め、 突き詰めた内容になっている為、先に虐殺器官を読んでいた方が判りやすい。 虐殺器官のラストに於いて、あっちの主人公が引き起こした現象が世界を荒廃かつ一変させ、 また人類に生得的に備わった危険な性質が世界中に暴露されてしまった。 その事実への怖れは他者の生き方からメンタルの有り様、考え方まで極端に監視し管理する。 虐殺器官で危惧されていた管理社会への懐疑や嫌悪、それをより突き詰めた代物になっている。 しかもそれはもう社会に根付いて、切除不可能なレベルで浸透しているという世界観。 この本では善意や思いやりで押しつぶすみたいな書き方をしているが、 個人的には此処は少しずれてると思う。そういう人もゼロじゃないけど多数派ではたぶんない。 正しさの名の元に、他者に物申す行為そのものが脳への報酬足りえるので、其処に善意はいらない。 正義マンや不倫炎上など、またはホワイト社会などと形容される流れがそれに相当する。 書かれた時期から、タバコに対する社会の扱いに対してが、 たぶん本書を書く切っ掛けの一つかもなと思ったりもする。 まあ何にせよ、正しい事以外は許容せず排斥し、自由が失われていく社会の果てとして、 心身ともに健康であらねばならない社会が到来し、その究極は思い悩む自我そのものが不要。 我思うゆえに我あり、の我の喪失こそが行きつく先だよなあというのが本書のラスト。 何処までが本当の自分だ? という前作の葛藤は少し古いなとか思っていたが、 やはりここら辺まで判った上で書いてたんだなと本書を読んで納得した。 人間より優れたAIが人間の仕事を根こそぎ奪う時代に於いて、人間はどうすればいいの? という問いに対して、ある人曰く、面白く間違う事が人間の仕事だと言っていた。 人間らしさとは究極間違う部分にこそあり、本書のタイトルのハーモニーに準じて言うなら、ノイズこそ人である。でもそれは正しくないのでこのままだと取り除かれて、無くなっていくんじゃないの? 正しくないものや間違いへの意識を少し変えた方がいいんじゃないの? みたいな作者の皮肉というか呟きが本書なのかなと。

  • 理想に酔える年齢でこそ刺さる作品

    登場人物の葛藤や欲望が理屈の延長で処理され、泥臭い矛盾などは描かれない。若い人への理想と孤独の共鳴?はあるかもしれないが、現実を受け入れた人にはただ、整理された正論にしか思えなかった。 期待していただけに残念。

  • 剥き出しの言葉

    初めてこの本を読んだ時、虐殺器官ほど面白くはないな、と思った。多分高校生くらいの頃だったと思う。 10年以上経ち、改めて読み直すと作者の内面をそのまま抜き出したような言葉に頭をぶん殴られたような衝撃を受けた。 エンタメとしてはやはり虐殺器官の方がずっと面白いとは思うのだけれど、この本に並んでいる言葉は前作よりももっとずっと純度の高い。 今までの人生でそれなりに本を読んできたつもりではあるけれど、これほどまでにシンプルに「作者の気持ち」が書かれた本を読んだ覚えがない。 その言葉は純粋過ぎてある意味で暴力的なほどだ。あまり性能が良くないと自負している私の頭でも、伊藤計劃という一個人の見ていた世界、魂の表面が見えるのだから相当に暴力的に思える。 個人的には高校生くらいの多感な時期か、会社勤めを始めていくらか経って心が錆びつき始めたくらいの人に読んでほしい。 読んで、ぜひ自分の世界を「伊藤計劃」という世界に侵食されてみて欲しい。 唯一この本、というよりこの作者の欠点はもう決して伊藤計劃が書く新しい作品を読むことが出来ないということだろう。

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