ヴィンダウス・エンジン (ハヤカワ文庫JA)
第8回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作。動くものしか認識できない病を抱えた青年が、近未来の中国で都市AI計画に巻き込まれていく。
作品情報
見えるものが限られる病を軸にした近未来都市SF。
2020年11月に早川書房のハヤカワ文庫JAとして刊行された。e-honやHMVの書誌情報では319ページ前後の文庫として案内され、ヴィンダウス症と都市AI実験を組み合わせた近未来SFとして紹介されている。
書籍情報
- 出版社
- 早川書房
- 発売日
- 2020-11-19
- ページ数
- 320ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.6 x 1.3 x 15.7 cm
- ISBN-13
- 9784150314583
- ISBN-10
- 4150314586
- 価格
- 1078 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品
近未来、中国・成都。 新たな想像力で描かれる アジアン・サイバーパンク! ヴィンダウス症――動かないもの一切が見えなくなる未知の疾患。韓国の青年、キム・テフンはこの難病から苦心の末に寛解状態へと持ち直したことで、中国・成都の四川生化学総合研究所から協力を要請される。それはヴィンダウス症の寛解者と都市機能AIを接続する未曾有の実験だった。様々な思惑が交錯する近未来の中国で、都市と人間をめぐる巨大な計画が動き出していく――第8回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作。
レビュー
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ユニークなアイディアと迫力ある筆致で楽しめる作品
本作品の最大の特徴は「ヴィンダウス症」という超ユニークなSFガジェット。静止しているものが全く 見えない疾患で、例えば顔は見えないが動いている口や瞼だけが見えるとか・・・。動かない景色は存在 しないのと一緒。 著者はその異様な自覚症状を色々なシチュエーションで披露している。さあ、これからどの様に料理し てくれるんだろうと、読み手は期待感大である。 著者の気負いかそれとも言葉遊びか、多彩な言葉が機関銃の様に飛び出してくる。語彙力の豊富さに驚 くとともに、読んでいて楽しいし又微笑ましくもある。 終盤に至り電脳都市の深奥に存在する人工知能との凄絶な戦闘シーンは、迫力があり読み応え十分。し かも熱した気持ちを静めさせるエンドロールのテクニックも見事だった。
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エンタメ9割SF1割。ひとことで言うと勢いで読ませるエンタメ小説。
面白さで言うと面白い小説ではあるけれど、SF小説かと言われればちょっと首をかしげる内容だった。 SFといえば、新しい概念の発明とその概念がもたらす影響を描くもので、一種の仮想的なシュミレーションであると私は考える。でもただのシュミレーションでは文学として面白くもないので、そこに科学的・論理的ではないもの。例えば感情的な要素を加えるのがキモになる。論理的要素と非論理的要素のバランスがSF小説としては難しいところだと思う。SFだろうが、戦記物だろうが、なろう小説だろうが、どんな小説も結局は登場人物が必要なので人間(もしくはそれに類似するなにか)同士の関係の話に収束せざるを得ないからだ。 それを踏まえて本作を読んでみると、SF的な要素は弱いと言わざるを得ない。話の展開は分かりやすく"ハリウッド的物語"である。ものがたりの舞台装置としてSF的な仕組みが使われるが、使われるだけでそれ自体が面白さを発生させているわけではない。面白さは"ハリウッド的物語"から発生していると感じる。別にこれはSF小説として書かなくても良い。SF的舞台装置をそのまま他の何かに代替しても成り立つだろう。 例えばなろう小説として書けるだろう。ヴィンダウス症を"はずれスキル"に代替できる。主人公は鍛錬によって、はずれスキルを克服し新しいスキルに昇華し、幸せな日常を得る。しかしある日突然美少女錬金術師が訪ねてくる。あなたをぜひ研究させてくれと言うのだ。あれよあれよと言う間にあなたは騒動に巻き込まれて、そのうち魔法界全体を揺るがす大問題に直面しこれを解決する。 別にエンタメ9割SF1割でも面白ければそれで構わないと私は考えるが、エンタメ小説としてもこの本は問題がある。 エンタメに寄せるなら本の題名や表紙、内容にポップさが足りたいのだ。"ヴィンダウス・エンジン"なんて固そうな題名では読むのはSF小説好きに限られるだろうし、SF小説好きからすれば、これ本当にSF?って思われてしまうだろう。内容ももっとポップにすべきだ。ヒロインは一応登場するが絡みが弱い。1回か2回くらい感情的な喧嘩の場面と仲直りして愛を育む場面を挿入すべきだ。"ハリウッド的物語"としてエンタメに寄せるならの話ではあるが。 面白い小説ではあった。勢いがあって、ハリウッド的だから、面白さは保証されていると思う。 作者が次に書く作品がどのような作品になるのか楽しみである。SF要素が面白い作品を書くのか、もっとポップにエンタメ作品を書くのか、単に舞台設定を変更して焼き直すのか。社会風刺を効かせて現実を皮肉るか。はたまた別のなにかか。
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これがいまのSFなのか
動くものしか見えない病気を、とあることで克服した主人公は、なぜか超人となり、大都市を管理するAIに撮りこまれたり、対決したりする、という話なのですが。 SF要素と物語要素のふたつに分けてみます。 まず、SF要素には、正直いって、ついていけませんでした。 といっても、SFの賞を取るくらいですから、これはわたし個人の資質とか、慣れの問題なのでしょう。 つまり、ジャズを聞き慣れない人が、ジャズを聞いても、ただうるさい音としか聞こえない、というのと同じことかな、と思います。 次に、物語要素。 話の流れからいって、もう少しワクワクできる物語だと思うのですが、ワクワクしない。 たとえば、主人公はある美少女に気があるらしいのですが、少しもそういう感情が伝わってこないから、トキメキがない。 またあるいは、仲間がヴィンダウスの症状が重くなって帰らぬ人となる、そのときにすごいショックを受けたらしいのですが、たいしてその衝撃がこちらに伝わってこない。だから、心をゆさぶられない。 全体に、主人公に人間の心があまり感じられない、ということです。 ただ、これさえも、若い読者にとっては、たいした問題ではないのかもしれません。 よく理解できないことから、どうしても評価が低くなってしまいました。 あくまで、個人的な感想だと考えてください。 特に、SFの好きな若い人は、まったく違う評価になるかもしれません。
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