日本の文学賞

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地べたを旅立つ 掃除機探偵の推理と冒険

アガサ・クリスティー賞

地べたを旅立つ 掃除機探偵の推理と冒険

そえだ信

ロボット掃除機になってしまった刑事が、姪を守るために小樽の街を走り抜ける。ばかばかしさと切実さが同居する発想で、ミステリの骨格に家族愛と冒険譚の勢いを重ねた作品。

ミステリ変身家族愛北海道冒険

作品情報

掃除機の姿になった刑事が、姪を守るために小樽を駆ける。

そえだ信のデビュー作は、ロボット掃除機になった刑事という奇抜な設定を軸に、暴力から姪を守ろうとする切実な動機と、街を突破していく活劇性をあわせ持つ。ユーモアの裏にある危機感が、物語を最後まで引っ張る。

書籍情報

出版社
早川書房
発売日
2020-11-19
ページ数
296ページ
言語
日本語
サイズ
13.1 x 1.9 x 18.8 cm
ISBN-13
9784152099853
ISBN-10
4152099852
価格
1204 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

鈴木勢太、性別男、33歳。未婚だが小学5年生の子持ち。北海道札幌方面西方警察署刑事課勤務……のはずが、暴走車に撥ねられ、次に気づいたときには……「スマートスピーカー機能付きロボット掃除機」になっていた! しかもすぐ隣の部屋には何故か中年男性の死体が。どんなに信じられない状況でも、勢太には諦められない理由があった。亡き姉の忘れ形見として引き取った姪・朱麗のことだ。朱麗の義父だった賀治野は、姉と朱麗に暴力を働き接近禁止命令が出ていたが、勢太がそばを離れたとわかったら朱麗を取り戻しにやってくる。勢太の目覚めた札幌から朱麗のいる小樽まで約30キロ。掃除機の機能を駆使した勢太の大いなる旅が始まる。だが、行く手にたちはだかる壁、ドア、段差! 自転車、子ども、老人! そして見つけた死体と、賀治野と、姉の死の謎! 次々に襲い掛かる難問を解決して小樽に辿り着き、勢太は朱麗を守ることができるのか。 第10回アガサ・クリスティー賞大賞に輝く、選考委員たちがその卓越したアイデアに驚愕した掃除機ミステリ登場!

そえだ 信(そえだ・しん) 2020年に『地べたを旅立つ』で第10回アガサ・クリスティー賞大賞を受賞しデビュー。北海道在住。

レビュー

  • 想像を絶する荒唐無稽さ、ながら人情噺と密室ミステリーもあります

    なんといっても記念すべき「第10回アガサ・クリスティー賞」大賞受賞作です。ご本人がもしお読みになったらさぞ驚かれたことと思われます。 交通事故に巻き込まれた警察官が同居している姪の身の上を案じるあまりに「掃除機ロボ」に意識が憑依してしまいます。この掃除機も有名な会社の製品ではなく、アームが付いていたり、Wi-Fi接続によりネットとメールが可能だったりします。 札幌から小樽まで30kmを時速1.8kmで「急ぐ」のですが、途中で知り合う人々もまたいろいろで、見て見ぬふりができず、ロードムービー風の人情噺も展開されて、はたして姪を救えるのか?という奇想天外な「ミステリー小説」です。 ちなみに我が家の「掃除ロボ」は毎日、威勢よく出発するのですが必ず「転落」「脱輪」「身動き取れず」で電池切れで自力帰還ができません・・・。

  • 稀なロードノヴェルとして"Thumbs-up"

    コルソン・ホワイトヘッドの新作を読むつもりが何故か第十回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作「地べたを旅立つ 掃除機探偵の推理と冒険 ”Depart from The Ground”」(そえだ 信 早川書房)を読むことになりました。表紙がポップでした。 高齢者が起こした交通事故によって意識不明の重体に陥った警察官、鈴木勢太の意識が「AI仕立てのロボット掃除機」に憑依したのも束の間(笑)、ある殺人事件に巻き込まれます。現れる二人の容疑者。一方、自分が手塩にかけて育ててきた小学5年生の姪っ子・シュリを守るために、札幌から小樽までそのロボット掃除機がフルスロットルで爆走?します。時速1.8キロで。なんと馬鹿馬鹿しい(笑) パズラーでありながら、チャーミングな人物たちに彩られたロードノヴェルであり、冒険小説と言ってもいい物語ですから、そのストーリーを詳細に語ることができません。いくつかの感想を記述することにしましょう。 「クリスティー賞」ですからパズラー部分に焦点をあてるべきなのでしょうが、事件は短編小説に使われるようなワン・アイディアで成立しています。成果は、少し悩ましいと思います(笑)。むしろささやかな<Who-Done-It>の反転に至るミス・ディレクションが素敵でした。 作家のデビュー作として注目に値する点は、そのドライで軽妙な語り口にあるのだと思います。それは職業作家として与えられた"ギフト"と言ってもいい。作者はマテリアルさえ整えば、どんな物語でも料理してくれそうですね。 今回の作者は先日読んだばかりのスリラー「ローンガール・ハードボイルド」(コートニー・サマーズ)のテーマと共通する「児童虐待」、DVへと筆を進めています。悪しきものは、米国と言わずこの国にも確かに存在し、蔓延しているのかもしれません。これもまた最良のシンクロニシティとして受け取ることができます。ロボット掃除機・勢太と姪っ子・シュリのドメスティックで微笑ましいやり取り、キレのある会話もとても良かった。そして、どうでもいいようなディティールについ笑ってしまった(笑)

  • ルンバの大冒険!(このロボ名はランルン)

    ディズニーアニメ『美女と野獣』は、「王子、人間に戻らないで!」って感想が多かった。その人たちの気持ちがようやく今わかる。 戻らないでどうする。いろいろと困るだろう。当時はそう冷静に言えたけど。すみません、これって理屈じゃなかったんですね。 本人にはかわいそうでも戻らないでほしい。このままの姿をいつまでも愛でていたい。見た目の愛らしさゆえに(笑)。 刑事でお人好しで姪ラブ!な男が中身になっちゃったお掃除ロボ。 「うちの子を守る!」ために必死で疾走(しても遅い)するルンバ(じゃないランルン)。 勝手に動いてるところを見つかると拾われて持っていかれるか拾得物扱いされて警察預かりになるかも、とコソコソ裏道に隠れたり。 見た目には全くわかりませんが、こまったり、あせったり、しらばっくれたりするお掃除ロボが可愛すぎてもう!読んでるこっちはメロメロですよ(笑)。 ただ、なんでこのお掃除ロボに?の理由が結局わからないままだったのと。物語の最初、ロボ機能の説明が長すぎると思い、それを引いての★4つに。 その後、ビルを出るところから面白くなってきます。さぁ出発だ!って、こっちまでワクワクした♪ このまま、まだまだ勢太inランルンに活躍してほしかったですね。 でもそうなる条件が、勢太が死にかける+朱麗のピンチなので。さすがに無理かー。 クスクス笑いながら楽しく読ませていただきました、そえだ信先生。次のお話も期待して待ってますので♪

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