作品情報
『熟れてゆく夏』は、短い題名の奥に人物、時代、土地の気配を重ねる作品です。
文芸春秋刊行の『熟れてゆく夏』に収められた作品です。『熟れてゆく夏』は藤堂志津子による、人物の記憶や関係の揺らぎを通じて、時代や人生の陰影を描く作品です。受賞作として、題名が示す主題を軸に、読後に残る余韻を重んじた一作として位置づけられます。
書籍情報
- 出版社
- 文藝春秋
- 発売日
- 1988-11-01
- ページ数
- 189ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784163106403
- ISBN-10
- 4163106405
- 価格
- 62 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
第100回(昭和63年度下半期) 直木賞受賞
レビュー
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昭和の時代の若者達の生活や思考を描いた逸品
経年劣化が最少限度で蔵書に加える。
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暗く病んだ女性の心理描写が素晴らしい
主人公律子が異性の体に触れることへの生理的嫌悪を抱くようになった問題を 軸に展開する物語、主人公律子がいとこの道子との関わりなど心理描写が細や かで素晴らしくお薦めの一冊です。
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押し潰される寸前で、スイッチを入れ換えられる女性特有の逞しさ
「熟れてゆく夏」は、そのタイトルからドロドロ官能恋愛小説を想像したが、これは勘違い甚だしかった。 有閑マダムともいうべき夫人と近づきになった主人公の女性が、翻弄されながらも飼いならされてしまいそうになる姿が描かれている。 収録されている他の作品も同様だが、押し潰される寸前で、スイッチを入れ換えられる女性特有の逞しさが表現されているのだろう。元カノへ気持ちが戻っていきつつあるカレシとの一時「三月の兎」とともに最後の一行が痛快だ。 札幌出身の作家さんで、詩を書いていた方だけあって表現力が豊か。装飾過多のところがややまどろっこしかったりして。【直木賞】
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めまぐるしく移ろいゆく主人公の心情
純文学の分野で賞をもらうためには、こんなにもごてごてと飾った文章を書かなければならないのかなと思わせてくれる、ため息の出るような作品です。まあ確かに、情景を鮮やかに読者の脳裏によみがえらせることは容易になるようです。そうはいっても、リアルタイムで登場する舞台は真夏の砂浜とリゾートホテルの2つだけです。 ラストシーンをはじめとして、めまぐるしく移ろいゆく主人公の心の動きには、なかなか付いていけません。小学生時の従姉との想い出、直前の中年男性との不倫などもかわるがわる回想されるようですが、その評価さえも刻々変わっていく感じがします。 同性愛の話も出てきますが、あくまで個人の問題として扱われます。たまにはこんな社会性のかけらもない小説を読むのもいいかなと思いました。 あと、どうでもいいことですが、主人公のヘビースモーカーぶりには、少々辟易させられました。
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女性の花芯に響く作品
女性の生理が書かせた短編集。タイトル作は直木賞受賞作なので、男性の選考委員は随分無理をしたと想像できる。一貫して女性が思い描く性愛のイメージを文章に綴っている。 「鳥、とんだ」は不倫の子として産まれたヒロインが、自らも実らぬ不倫の恋を続け、結局は実家へ帰る所から、自分が堕胎した我が子の分身と考えている愛犬の失踪までを描いたもの。女は愛に夢を託し、男は現実を視る。この単純な図式を表現するのに、どうしてこんな執拗な描写が必要なのだろう。理解に苦しむ。また、犬を登場させないと物語が進展しない仕組みになっていて、作者の力量不足を感じる。そして他の作品も含めて気になるのは、作者が漢字と"ひらがな"のバランスを考えていないのではないかという点である。"ひらがな"が多過ぎて読みずらいのである。海外文学の翻訳物でも、こんなに"ひらがな"は多くない。"ひらがな"が多い方が女性らしい柔らかさが出るというような世迷い事は聞きたくない。「熟れてゆく夏」のヒロインも不倫の子で、思春期に特殊な性体験を持つ。一見男嫌いだが、淫乱癖がある。そのヒロインが一夏を海辺のホテルで過ごすという淫夢譚。ヒロインが慕う奇矯な婦人とそのヒモ、登場人物が全て醜悪で、彼女等が織り成す夢想を含めた性愛ゴッコは酸鼻を極める。それにしても作中に出て来る「緻密な熱気」という言葉。こんな表現が日本語にあるだろうか ? 前作と合わせ、作者の日本語の素養には疑問を感じざるを得ない。「三月の兎」は今で言えば"季節性鬱病"の女性患者を扱った小品で、取り立てて言う事もない。 本短編集は、女性が体の芯で感じた熱い熱情をシニカルに描いたもので、女性読者にとっては素直に受け止められるものかもしれない。個人的には、本作が文学的に昇華されているとは、とても思えないけど。改めて、女性と男性は別の"種"だと感じる。女性にとっては心と体に熱く響くかもしれない短編集。
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とても柔らかい文章
第100回直木賞受賞作品。 受賞作品の『熟れてゆく夏』の他2編を収録した中編集。 3編ともどこか暗い部分を持つ女性の恋愛について綴る。元々作者が詩を書いていたからか、どこか詩的でとても柔らかい文章で綴られている。 登場する女性達が持つ暗い部分を形は違えど誰しもが心の中に持っているのではないかと思う。 ソレデハ…
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表現力が素晴らしい
直木賞受賞作品の「熟れてゆく夏」は、賞をとるだけのことあって、大変、雰囲気のある、素晴らしい作品だったと思う。この本の全3作品に共通していることだが、著者の、風景や季節などに関する表現は、とても素晴らしく、それだけでも充分、雰囲気を楽しむことが出来、背景が目に浮かぶようにさえ感じられた。主人公たちは、比較的若い年齢ではあるのだが、実年齢以上に大人っぽい雰囲気を醸し出している、と感じた。
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ドキドキ
その展開にはかなりドキドキ、ハラハラさせられました。 主人公の律子はどこまで行ってしまうのか・・・という気持ちでいっぱいのまま、夢中で読みました。 読後の爽快感は、かなり満足させてくれました。