作品情報
ソング・オブ・サンデーは、題名が呼び込む世界を手がかりに、人や時代の輪郭を静かに浮かび上がらせる。
『ソング・オブ・サンデー』は、藤堂 志津子による恋愛小説。日曜日の歌のような余韻をまとわせながら、人と人の距離と愛情の揺れを描く。 受賞作としての読みどころは、題材の珍しさだけでなく、人物や出来事を通じて時代の空気を伝える点にある。読者は、物語や論述の進行に沿って、背景にある社会や価値観の変化までたどることができる。
書籍情報
- 出版社
- 文藝春秋
- 発売日
- 2000-11-01
- ページ数
- 212ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784163196503
- ISBN-10
- 4163196501
- 価格
- 1466 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
絵描きの利里子と大工の鉄治+互いの愛犬。風変わりなドライブに一日をすごす独身男女の微妙な心情を爽やかに綴る新感覚の恋物語
レビュー
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二人の人物の対話が楽しめる1冊
大きな出来事が起こるわけでもない、たった1日のドライブの光景なのですが、 そこここに過去が織り込まれていて、主人公の心境を楽しめました。 大工のテツジも魅力的な人物として描かれていて、好感が持てました。
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「人は何があっても、当分生き続けなければならない」
42才の独身イラストレータ利里子をヒロインとした恋愛考察小説。「熟れてゆく夏」で見られた女性生理の爛熟した発露、と言った趣きは無い。「中年独身女性がペットを飼い始めたら終り」と世間で良く言われる通り、利里子も愛犬"ダダ"を飼っている。物語は、利里子が知人の大工鉄治とドライブする一日を中心に描かれる。陽光の一日の中での小さな波紋の積み重ねで物語が構成される。 自分が思っている程、他人は自分や自分が大切にしている物を重要に思っていない。恋愛においても然り。重要と考える時は臆病を捨て去る時だ。これが主題の様だが、作者は自身を利里子に重ね合わせながらも、観察者の立場に居る。利里子は上記の境地に達している様で達していない。自分で思っているより幼く脆いのだ。これが、本作が少女小説じみて見える要因になっていると思う。だが、作者自身もこの境地に達していない事が窺える。その模索の試みが、本作の執筆動機とも思える。読者が受ける印象も熱気ではなく、薫風あるいは潮風であろう。 もう一つの重要なファクターは、鉄治の愛犬"ジロ"である。ジロは老衰死寸前。鉄治はこう言う。「ジロは死ぬ。だが、俺は当分生き続けなければならない」。こちらが主題かもしれない。作者は確実にジロに将来の自分を観ている。男の私にとって、登場人物の中で"新さん"は最も卑劣な男の様に映ったが、女性にとっては真面目に映るのだろうか ? 最後に蛇足を。"ダダ"と言う名前は偶然だろうか。この名前は、私の世代にとっては「ウルトラマン」に出て来る「三面怪獣ダダ」以外の何者でもない。ペットと男と子供の三面性を兼ね備えたダダ。穿ち過ぎだろうなぁ。
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正しい人との距離感がここにはあります。
あれもこれもいっぺんにはかかえこめない性分だった。 生活を支えるイラストレータの仕事に気力と体力のほとんどを割かれ、後に残るエネルギーで、自分の食事をこしらえたり、スーパーマーケットに買い物にいったり、ダダの世話をする。それだけで手いっぱいになる。毎日があっという間にすぎていってしまう。 うんうん、わかるわかる!と思った作中の文章であります。 やる前からつまらないと思うことが多くなったわね、ここ二、三年は。こうやって、つまらないことがどんどんふえてくることが、年をとるってことなのかなって。 鉄さんのような、そういう気持ちって大事じゃないかって。貪欲に何かを欲しいという気持ちがね。その気持ちがバネになって、働いたり、がんばったりするんじゃないかと。 なるほどなあ〜〜と思う作中の文章であります。
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恋かぁ
まだ二十代前半なのに モウ恋からも人生からも半分リタイアしている私には ちょっと落ちついた雰囲気が心地良い作品だった。 少し人並みの人生から外れた感のある二人が 天気のよい日曜に愛犬を連れてドライヴに出かける。 ただのドライヴじゃなくて 自分の人生を色々省みるモノになるんだけど。 人並みから外れていても 人は皆それぞれの人生をそれなりに生きているんだなあ、 としみじみ感じてしまう作品だった。 せっかく生きているんだから 私ももう少し自分の人生を大切に生きてみようかな。恋もしてみよっかな なんちって
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こういう男女の関係もあって良いかな
「こういう男女の関係もあって良いかな」と思うさわやかな作風の作品。 ちょっと前までは自分がこれからどんどん年をとっていくのが怖かったけど、30歳でも、40歳でもいろんな愛の形はあって良いのかなと思いました。
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42歳の男女の恋愛を描く、爽やかな作品
物語は独身男女の風変わりな一日と、微妙に心情を描いた作品。42歳の利里子は母方の祖母が残した家に一人で移り住むこととなり、その修繕をした同じ歳の鉄治と知り合った。修繕をした大工仲間4人とは家の改築と補修のための2ヶ月を家族のように過ごし、その後も2週間ぐらいの割合で鉄治は仕事帰りに利里子のところへ立ち寄り、玄関先だけの訪問を続けていた。その鉄治からドライブの誘いを受けた利里子だったが、ドライブの目的は以前利里子が仕事が一段落した日に棚を作ってもらうために立ち寄った鉄治の同僚と魔が差して寝てしまったことを問いただすためだった。そのことを問い詰められる利里子、そして離婚した妻との子供が結婚するという鉄治が、ドライブの中で互いの悩みや過去を見つめあい、お互いの気持ちを確認する物語。僅か1日の出来事を長編小説にしていますが、その1日の間に利里子はかつて愛し合った男と再会し、鉄治は連れて行く予定でなかった利里子を実家へ連れて行き、子供の結婚問題にまで巻き込んで……と、それぞれの問題が一気に押し寄せてくる。ラストにはそれまで気が付かなかった互いの想いを知ることとなるのですが、42歳の男女の過去と恋愛を愛犬を交えながら、清々しく描いた爽やかな作品となっています。
関連する文学賞
- 島清恋愛文学賞 第8回(2001年) ・受賞