約束の冬(上)
若い男女の約束と歳月を軸に、人が生きる時間の重なりを描く長編小説。雪の気配、家族、恋愛、人生の節目が宮本輝らしい柔らかな筆致で結ばれる。
作品情報
遠い約束が、冬の光の中で人生をつなぎ直す。
文藝春秋から上・下巻で刊行された長編。人の出会いと別れを冬の季節感の中に置き、静かに深い人生の物語として読ませる。
書籍情報
- 出版社
- 文藝春秋
- 発売日
- 2003-05-31
- ページ数
- 384ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784163218205
- ISBN-10
- 4163218203
- 価格
- 2240 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
「十年後、僕は結婚を申し込みます」見知らぬ少年の手紙にはそうあった。出会いと別れ、運命の転変、人が生きる拠り所とは何なのか?
レビュー
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上巻の方がより面白かった
導入部から思いがけない展開で、ぐいぐい読ませる。留美子やその弟のキャラクターが好ましく、応援したくなるが、だんだんと比重がお向かいの社長に移っていく。こちらはいつもの上流階級で、家政婦・運転手・なじみの美人女将・いきつけの料理屋・隠し子という、やや食傷気味の設定だ。土地の移動もめまぐるしいが、一番好ましかったのは、厚田村の描写だった。下巻の終盤はほぼ社長が主人公となり、少し残念だったが、先が気になって上下巻を2日で読み通すことができた。繰り返し出てくる「飛行蜘蛛」を読みたくなったので古書を購入した。
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約束に拘束されながら生きる 人間。
人と人の間で、コミュニケーションする。 その中で、約束 がある。 人は、生きている間に、どれだけの約束をするのだろう。 親との約束。 恋する人への約束。 愛する人との約束。 子供との約束。 物語の中に巡らされる約束。 留美子は、少年から、10年後に 結婚しようという ラブレターをもらった。 その奇妙な申し出をした少年は 誰なのか そのことが,10年の月日が流れることで 明らかになっていく。 留美子には、妻子あるオトコと 恋愛していた。 そして,そのオトコは 妻子と別れ 留美子と結婚すると言っていた。 そのオトコは言う「ボクは必ず約束を守る」と。 しかし,その約束は 妻の妊娠によって あっけなく破られることとなった。 留美子は、幼友達の芦原小巻とも、約束していた。 小巻は、若いにもかかわらず、肝臓ガンに侵された。 それでも、留美子との約束が希望となって、生き延びた。 その希望とは。 留美子の弟は、アメリカの大学に行って、コンピュータの会社に 就職したが、木工の修行に転身。 それは、死んだ父親との約束だった。 若い時に時計を壊した俊国の父親の約束。 父親は俊国が 2歳の時に 事故で死んだ。 俊国は 上原桂二郎のもとに,連れ後として成長する。 父親の約束を実行しようとするおじいちゃん。 約束が錯綜し、それぞれが 互いに繋がって行く。 守られる約束。破られる約束。 約束に拘束されながら生きる 人間。
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良品です
素晴らしい作品
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物語自体が何か強いものを心に残す訳ではないが、読んでいて気持ちの良い小説
一言で言えば、物語自体が何か強いものを心に残す訳ではないが、読んでいて気持ちの良い小説。 手紙の約束の結末は意外とあっさりしているし、懐中時計にまつわる約束の幕引きも何か中途半端。そんな結び方のせいか終盤の肩透かし感は否めない。あとがきで、本作品が新聞連載ものであったこと、並びに著者自身が「人物だけをばらまいて、あとは彼たち彼女たちが勝手に何等かのドラマを織り成していくであろうという目論見で筆を進めた」と書いてあるのを目にして何となく納得した次第。 しかし、主だった登場人物一人一人の生き様に、信念に、言葉に、「自分もこうありたい」と思わせられるものが散りばめられていたのが良かった。数度引用される徒然草の引用を含め、何度か読み返したくなる場面が多い作品。
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清廉に生きることの尊さ
失敗しても運命のいたずらに翻弄されても前を向いて歩くことが大事なんだと思いました。
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人が生きていくということの難しさを考えさせられますし、一方で、1人の人が生きていくということの尊さも感じさせられます
主人公は30代の女性と50代の男性です。2人は性別も年齢も置かれた立場も違いますが、それぞれの人生を試行錯誤しながら自分なりに生きています。こういう人生を送りたいという希望があっても、その通りにはなかなか行きませんので(それは他人が原因であることも自分が原因であることもあるのですが)、時に落ち込み、時に苦しい思いをしますが、それでも希望を捨てず(自分なりの価値観を大切にして)、あるいは、他者との繋がりを大切にしつつ、それぞれの人生を歩んでいます。ちょっと大げさかもしれませんが、そのような登場人物の人生に対する向き合い方は、私にとっては一つの手本となるようなものだと感じます。決して、登場人物ように生きたいと思うわけでもありませんし(今回の登場人物はこよなく葉巻を愛していましたので、いつか、チャンスがあれば葉巻には挑戦してみたいと思いましたが)、価値観にしても違和感を覚えるところはたくさんあったのですが、価値観の内容ではなく、自分の人生を生きていく中で自らの価値観とどう向き合っていくのかということについて考えさせられました。
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宮本輝の作品は、どれも善良な人々が登場。
なかなか人情味のあふれる小説です。
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十年後の自分
宮本輝は男女間の恋愛を書くけれど、書くのではなく描いている。恋愛はその人の一部分で、恋愛そのものに主眼をおいていない。まず人間ありきのスタンスが良い。 人は何かのきっかけで自分の来たした人生を振り返り、満足と後悔を感じ、これからの自分の対して「かくありたい」と望むものだ。”人生の転機”をこの本は語っているように感じた。人生の転機はいつ訪れるかわからない。20代には20代のその人なりの、60代には60代のその人なりの転機がある。作中に出てくる”飛行蜘蛛”はそんな人間の心の心細さと潔さを表している。 「約束の冬」では徒然草の第百五十段が引用されている。これが人生の転機に何かを示唆しているような気がした。 能をつかんとする人、「よくせざらんほどは、なまじひに人に知られじ。うちうちよく習ひ得て、さし出でたらんこそ、いと心にくからめ」と常に言ふめれど、かく言ふ人、一芸も習ひ得ることなし。 未だ堅固かたほなるより、上手の中に交りて、毀り笑はるるにも恥ぢず、つれなく過ぎて嗜む人、天性、その骨なけれども、道になづまず、濫りにせずして、年を送れば、堪能の嗜まざるよりは、終に上手の位に至り、徳たけ、人に許されて、双なき名を得る事なり。 天下のものの上手といへども、始めは、不堪の聞えもあり、無下の瑕瑾もありき。されども、その人、道の掟正しく、これを重くして、放埒せざれば、世の博士にて、万人の師となる事、諸道変るべからず。 つまり、 これから何か芸事を習おうとする人がよく言うのに 「うまくできないうちは人に見られるとみっともないので、人に知られないようにひそかに練習し、うまくできるようになってから人前で披露するのが良いと思う。」 そんなことを言う人は、ひとつも芸を習得できることはできない。 宮本作品の面白さのひとつに、文中に差し込まれるこうした引用文がある。十年後の自分に思いをはせながら、主人公の気持ちになって読んでみた。