書籍情報
- 出版社
- 文藝春秋
- 発売日
- 2009-08-07
- ページ数
- 160ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784163284101
- ISBN-10
- 4163284109
- 価格
- 2200 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
イラン・イラク戦争下の恋を描き文學界新人賞を非漢字語圏から初めて受賞した作者。留学生文学賞を受賞した「サラム」も注目作。
レビュー
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哀しい話
シリン・ネザマフィ作。 著者略歴によると。イラン・テヘラン出身とのこと。日本語で小説を書いている。 本の帯に”留学生文学賞”と出ていたのと、綺麗な女性の写真に惹かれ、さっっそく読んでみた。 「白い紙」はイラン・イラク戦争下の、少女(主人公:語り手)と少年(ハサン)の淡い恋愛を描いている。若者たちは、”神のため、国のため”に前線へと送られる。ハサンは、成績も良く、テヘランの大学で医学を学びたいと考えているのだが、クラスの誰もが兵士になっていく環境のなかで、葛藤に苦しんでいる。父親は、戦争に行っていて、母親は病気の治療中である。彼らが住んでいる街にも、イラク軍が迫ってきて・・・。 男女が公では、会話を許されない世界。モスクへ礼拝に行くときには、出入り口が男女で異なっている。女性はチャドルで顔を隠さなくてはならない。イスラム世界の様々な制約(←僕らからみた場合だが・・)でも、男女の交流が行われている。 「サラム」は、アフガン内戦で、来日した少女(レイラ)と、難民申請を行う弁護士(田中先生)と、通訳(主人公:語り手)の交流を描いた作品。物語の進行中に、ちょうどアメリカ同時多発テロが発生してしまい、アフガニスタン難民の認定に悪影響を起こしてしまう。 我々日本人からすれば、難民の認定にあたっては、当然の事情があるのだが・・・。 難民として認定されたとしても、少女の喪失した心は、決して埋めら事はできないだろう。 少女の母親の言葉。 「人生でどんなことがあっても『サラム』というべきだ。」 哀しい物語。
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内容が深い
内容が面白いです
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異文化教育の良い教材
三省堂の高校生向け教科書『CROWN English Communication 1』に載っている。 授業の予習ついでに読んでみたが、まず著者の日本語能力の高さに驚く。 イスラム文化をティーンエイジャーの視点で描いてあるため、 日本の高校生が感情移入しやすいように思った。 一つだけ惜しいのは、「白い紙」と「サラム」のストーリー構成が似ている点。 独立した話としては二つとも面白いし、長さも程良い。 電車の中でさらっと読みたい人におすすめ。
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絶望の中の崇高さに打たれる・・・
最初の一編「白い紙」はどうやらイ・イ戦争時のお話らしい。イスラムの戒律で女性が肌を晒すことも、男女が言葉を交わすことも許されない国。男達は戦場にかり出され、残された者は空襲に怯える日々・・・。出征した父親の運命を知った息子は、母親を護るために重大な選択を迫られる・・・。 「君たちは望み通りの未来を書ける白い紙の様なものだ」と言って息子を励ましていた教師、 密やかな交際を重ねていた息子の恋人、そして残される母親・・・最後の場面でそれぞれが見せる涙、非情なまでの別れの光景は泣けます。 二編めは「サラム」。「サラム」とは元々は「降伏」「救い」「平和」等の意味があったが、今では単なる日常の挨拶として使われる言葉らしい。 日 本に留学している「私」は、難民認定の裁判に関わる弁護士にアルバイトの通訳として雇われ、入管の「収容所」でアフガニスタン 人の少女レイラと出会う。弁護士と行動を共にし、何度も言葉を交わすことで少しずつ心を開いて いったレイラだったが、様々な出来事の末に、「サラム」と言いながら敵に殺された母親を思い出し・・・・。 最後の場面、過酷な運命を受け入れ、暗い瞳に戻った少女の言葉が鮮烈・・・打ちのめされる「私」と弁護士の姿にも泣けます・・・。 所々で不思議な言葉使いも散見されますがご愛敬。どうやらこの二編は完全な「小説」のようですが、多くの場面には現実の姿が反映されていると思えます。そして、単なる「小説」というよりイスラム世界と日本という国に対する「告発」という面も感じます。厳しい現実だけがもつリアリティーにたじろぎながら、結末の場面で感じる不思議な程の静謐さにも惹かれます。 そして読了して思います。楽に、楽しく、豊かに・・・日本人のその様な価値観と、あえて過酷な運命を選ぶ人々の価値観。同じ人間なのに、何故これほど違うのか? そして・・・どちらが幸福なのだろうか・・・と。 あえて言えば、もちろん日本人の方が幸福に決まっているが・・・彼らの見せる、絶望の中の「崇高さ」に打たれるのも事実ですね・・・。
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情景が目に浮かぶ
イラン・イラク戦争中の、イランの田舎町の男子生徒と女子生徒の交流が描かれていて、 少しせつないのですが、 戦争中の町の様子とか、普段の生活の様子とか、目にうかんでくるようで、 雰囲気のある作品でした。 後半の話は、 アフガニスタンから来た少女の、弁護士の通訳のアルバイトをする 留学生の話なのですが、 この感覚は、日本人にも、すごくわかる人がいるんではないのかなあ、と思います。 あと、アフガニスタンの基本的なことか、 移民申請のこととか、 全く知らなかったので、 ちょっと驚きでした。
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異文化理解の一助
白い紙はイスラム色の濃いイランの田舎の思春期の男女の雰囲気が良く出ている。 日本の戦前、戦中の田舎の雰囲気に似ている。 難民問題のサラムは心の痛む話ではあるが、内戦、部族対立、宗派対立に起因した殺し合いで、 見方を変えれば、レイラの父親のグループも同様の仕打ちを相手方にしているはずで、一方的に善悪が論じられる物でないところが悩ましい。 下手な異文化論よりは参考になる内容であった。
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発展途上だが好感は持てる
在日イラン人エンジニア美女が著者ということで少し前に話題(とくにNHK的に)だったので読んでみた.本書には文学界新人賞受賞作で芥川賞候補作の「白い紙」と留学生文学賞受賞作の「サラム」が掲載されている.「白い紙」の方は芥川賞選考委員の酷評に納得できる.もちろん普通の日本人よりは文章が上手だし,外人としては驚異的に上手いけど,その程度.「白い紙」よりも早い時期に書かれた「サラム」の方が文章の質は高い. なお,両作品とも決して駄作なんてことはない.小手先の技術でごまかしたり小説の形をかりた主張であったりといったことはなく,他のプロに書けと言っても書くのは難しいであろう作品ではある.人間や風景がちゃんと描写されていることには強い好感が持てる.とくに「サラム」の方は普通に面白く良質な作品だった.同著者の次の作品を読んでみたい.
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越境性を超えて
リービ英雄の小説は、ただ読んでいるだけでも 自分自身のイメージの地平線が拡大していく心地良さを感じた。 それは、この人の越境性が持つ位置エネルギーの大きさによるものだと思っていた。 シリン・ネザマフィの越境性のポテンシャルの高さはそれ以上であろう。 ところがイランでもすでに歴史的過去に属するイラン・イラク戦争を背景にした 小説はなんとわが国の太平洋戦争での特攻隊を想起させるし、戦乱の国から逃れてきた少女の話では 現代日本の平和で豊かな大学生生活にベタベタに適応しているペルシャ人の女子大生が少女の過酷な現実をうまくイメージできずに困惑するしで、つまりこの人は日本文化と異なるイラン文化という背景をほとんど感じさせないのである。 非常に優秀で適応力に優れたネザマフィは越境性という概念自体を超えたところから書き始めているのだろうか。 ちなみに私は「サラム」の女子大生のユーモラスな独白を読むのが楽しかったです。
関連する文学賞
- 文學界新人賞 第108回(2009年) ・受賞