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大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか

大宅壮一ノンフィクション賞

大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか

高木徹

アフガニスタンのバーミアン大仏破壊を、タリバン、ビンラディン、国際政治の動きの中で検証するノンフィクション。文化財破壊を、後の世界的危機へつながる政治過程として描く。

バーミアン遺跡アフガニスタンタリバン文化財破壊国際政治

作品情報

大仏破壊の背後にあった政治と暴力の構図を、世界史的な危機の前奏として読む。

文藝春秋刊。巨大仏破壊の舞台裏を追い、タリバン政権とビンラディンの関係、国際社会の反応、後の事件へつながる流れを描く。

レビュー要約

  • 文化財破壊を単発の暴挙としてではなく、政治的意図と国際情勢の連鎖として描く点が読みどころ。前作から続く調査力の広がりも感じられる。

書籍情報

出版社
文藝春秋
発売日
2005-01-15
ページ数
341ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784163666006
ISBN-10
4163666001
価格
1728 JPY
カテゴリ
本/人文・思想/宗教/イスラム教/イスラム原理主義

第36回(2005年) 大宅壮一ノンフィクション賞受賞

レビュー

  • 何故

    メディアは「タリバン政権がオサマ・ビンラディンとアルカイダを匿っていた」という表現を用いるのだろう?確かに、1996年の時点ではビンラディンは“ゲストとして迎えられていた”側だったが、徐々に主従が逆転し、2000年までにはタリバンはビンラディンとアルカイダの傀儡と化したようである。 タリバンがぶち当たった壁 ① パシュトゥーン人を中心に構成されるタリバンはパシュトゥーン人が主に住む南部地方では同胞として歓迎されて快進撃をすることが出来たが、カブール制圧後はタジク人・ウズベク人・ハザラ人が多く住む北部地方に戦線が移ったために膠着状態となった。(特にアフマド・シャー・マスードの勢力との戦闘で苦戦) ② 女性の就学・就労を禁じる、音楽などの娯楽も禁じる、公開処刑を行うなどの抑圧支配が批判を浴び、国際社会から政権の承認を得られずに孤立。 タリバンはビンラディンから大量の4WD車の提供を受けて山岳地帯での戦闘を有利にした他、自爆攻撃も厭わぬアルカイダの戦闘部隊がタリバン側に立って戦闘に参加するようになったために戦線の膠着を打破し、①の問題を解決。アフガニスタンの国土の90%以上を実効支配するにいたる。 ②の問題に直面したタリバンを救ったのは、やはりビンラディンから提供された現金だった。 このような過程を経てタリバンとアルカイダの主従は逆転し、領土的地盤を得たアルカイダはやがて9.11事件を起こすに至ったようである。バーミヤンの大仏の破壊はそのプレリュードだったようだ。 タリバン政権が自称していたアフガニスタン・イスラム首長国は2000年までにはアフガニスタン・アルカイダ首長国へと変質し、9.11事件という“真珠湾攻撃”を行ったためにテロとの戦いという“太平洋戦争”に突入したため、崩壊したのである。 時々、テロとの戦いを非難して「タリバンと粘り強く交渉をしてビンラディンとアルカイダの引渡しを求めるべきだった」などと言う者達がいるが、的外れも甚だしい。再三に渡るビンラディンの引渡しをタリバン政権は拒否したではないか。そもそもアルカイダの傀儡と化したタリバン政権が応じる筈もない。「満洲国皇帝 溥儀に石原莞爾・板垣征四郎・土肥原賢二らの身柄の拘束と引渡しを求めていれば、満州事変は早期に収拾することができ、日中戦争を防げた」、「満洲国皇帝 溥儀に要請して関東軍参謀長在任時の東條英機を拘束しておけば、太平洋戦争を防げた」、「ヴィシー政府と交渉してフランス国内にいるドイツ軍とナチス党員を追放させておけば、ノルマンディ上陸作戦は不要だった」などと宣うに等しいピンぼけな発想である。

  • 歴史の「ポイント・オブ・ノー・リターン」を見せつけられる

    傑作ノンフィクション『戦争広告代理店』の著者、NHKの高木徹ディレクターの第二作。9.11米国同時多発テロの「前史」である、同年3月のバーミヤン大仏破壊と、そこへと至るタリバンとアルカイダの歴史を克明に取材した労作。大仏破壊に至るタリバンと、その指導者オマルがどこから「ポイント・オブ・ノー・リターン」、すなわち引き返せない道へと足を踏み入れてしまったのか、それが歯がゆいほどによくわかる。本書の主人公はオサマ・ビン・ラディンその人ではないが、タリバンにとっての「外人部隊」にすぎなかったビン・ラディンとアルカイダのメンバーが、素朴で(悪くいえば”マドラサ(イスラム学校)すら出ていない”)オマルとタリバンに取り入っていったのかが、タリバン幹部を含む人々へのインタビューから描き出されている。歴史にもしもはない、というが、国連や各国の外交官が現地で和平の努力を続けていた2000年前後のアフガニスタンにはいくつもの分岐点があった。現在いくつもの分析、研究がなされているように、9.11は十分すぎるほどにその兆候があった出来事だったのだと、おもわされる。

  • アフガニスタン侵攻の背景

    『戦争広告代理店』が素晴らしかったので、読んでみた。本書も素晴らしいルポルタージュであるが、『戦争広告代理店』ほどのインパクトは受けなかった。 バーミアン大仏の破壊に至る、タリバンとアフガニスタンの道程を、現在分かる限り追ったものだ。良く取材しているし、良くかけているけれども、いまだにアフガニスタンの政情の不安や、関係者がアメリカに逮捕されたままであることなどで、十分なインタビューができず隔靴掻痒の感が残る。後々、空白部分を埋める書が出ることを望んでいる。 とは、書いたものの、本書が現段階で世に出た意義は大変大きい。私なども、9.11 の直後にアメリカがアフガニスタンを攻撃したのはなぜか、本書を読むまで、よく分かっていなかった。タリバンとアルカイダの関係、というよりオマルとビン・ラディンの関係や、アルカイダの戦争/テロ遂行能力などなど知ることができて、昨今のテロ関係の報道を見る目が変わった。 もう一つ、印象に残ったのが、タリバンの権力構造における「勧善懲悪省」の役割だ。本書にはオマル師をはじめとするタリバンの指導者は歴史や制度(イスラム法体系についてすら)に対する教育をほとんど受けていなかったとある。それで彼らは「勧善懲悪省」に絶大な権力を与えるというナイーブな選択をして、それが、アルカイダが権力構造全体を乗っ取る糸口となったのだ。 「どれほど悪い結果に終わったことでも、それがはじめられたそもそもの動機は善意によるものであった」という、カエサルの言葉にもあるように、善いこと言うのは大変なくせ者だ。特に政治が善いことを声高に言い始めるのは悪い兆候である。何が善いことで悪いことかを事前に明示して、事実認定を慎重にしましょうというのが、法定主義であり、三審制だ。文明は長い時間と膨大な失敗の末にこの制度に行き着いた。 最近わが国ではメディアが「勧善懲悪省」を気取っているように感じることが多々ある。我々は、自分の善悪の感覚といかに異なろうとも、法定主義という智慧の起源について深く理解しないといけない。

  • これだけ大きな国際問題を至って平易な文章でまとめているのはさすがジャーナリスト

    アフガニスタンのバーミアンにあった大仏二体が破壊されるまでの経緯を、アフガン国内の政治闘争や諸外国の外交努力などを丹念に取材してまとめた一冊。著者はNHKのディレクター。番組には盛り込めなかった情報も含めて大変興味深い読み物に仕上げています。 誤解を恐れずに敢えて言えば、本書は上質なポリティカル・サスペンス小説のような趣を持っています。一気呵成に読みました。 ソ連軍撤退後に実権を握ったタリバン政権。その庇護を受けていたはずのアラブ人ビンラディンは莫大な資金力、類いまれな統率力、そして宗教的カリスマ性を武器に、アフガニスタンをゆっくりと内側から乗っ取っていきます。タリバンはその最高指導者オマルでさえ満足な(宗教)教育を受けることのなかった人々の集まりであり、イスラム教の本家ともいうべきアラビア出身のアルカイダ一派に完全に気圧されていたところがあるのです。 一方タリバン政権内部にも穏健派がおり、諸外国はこの穏健派を通じてタリバンとアルカイダとの間に楔(くさび)を打とうと試みます。 アメリカ合衆国はそうした穏健派要人を自国に招待して文化財保護の実際を見聞させる戦略を取っていた時期があるという箇所を興味深く読みました。著者も書くように、これはアメリカの懐の深さを感じさせる出来事ですが、メトロポリタン美術館を見学した彼ら要人は、帰国後にカブールの美術館を整備していこうとするほどアメリカの感化を受けるのです。 「これは決して軍事行動によって対処できる問題ではない。相手は、人の心なのである」(339頁)。 こう著者が書くようにまさにアメリカの外交戦略は当初、相手の心を巧みにつかみとろうとするものでした。それを放棄したときに一体何が起こるのか。私たちは21世紀初頭にイスラム圏で起こった大きな悲劇からそのことをいやというほど学ぶことになったといえるのかもしれません。

  • タリバンの「おわりのはじまり」を活写

    たしかに本書が書店に並んだときは「なぜ今ごろになってタリバン!?」 との思いを禁じえなかった。 けれど、商業出版とそれに付随する私たちからは「時機を逸した」と感じ られるとしても、ジャーナリストとしては「今だから」の思いがあるの ではないか? その気概を買いたいなぁと思う。 今でも、アメリカではリベラル派を含めて「アフガン攻撃(まで)は正当 だった」とのコンセンサスがある。けれど、本書を読めば、本当にそうだった のかなぁとの思いを禁じえない。淡々と筆を進めるだけに、高木さんの前著の 刺激には欠けるものの、その分情況のリアリティの真髄を味わえる。 最後までバーミヤンの遺跡を守ろうとしたタリバン政権の大臣や次官の奔走、 オマル氏がビン・ラーディンに惚れ、乗っ取られるまでの道程…。読んでて 飽きることはまずないと思う。そして読後、これまで、さして興味のなかった タリバンの内部が見通せるし、一人一人の顔が見えるようになる。 細部だけど、評者にとって面白かったのは、対タリバンの中国の外交交渉の 狡猾さと巧さ。憎らしいくらいだ、そしてどこか羨ましくもある。さすがは 高木さん、細部も読ませる。 なお、松本仁一『カラシニコフ』シリーズと併せて読むと、日本のテレビ/ 新聞業界に属するジャーナリストもまだまだ健在!との思いを強くする。 そして、両者の本とも装幀が抜群にクール。著者たちのクレバーネスをよく 演出してる。

  • まさに“ノベライズ”

    前作『戦争広告代理店』がNスペの焼直しにしては面白かったので期待して買ったのですが、今回は「まさにノベライズ」という感じで、テレビを見ているかのように、たいして印象に残らないまま読了してしまいました。 内容も、タリバーン政権がいかにビンラーディンに乗っ取られたか、という今となっては衆知の話です。たしかに、ネタは2003年6月と9月放送分なので、古臭いのも当然といえば当然でしょう。 でも、だからこそ「新事実が出てきたわけでもないのに、なぜ今頃出版?」という思いは禁じ得ません。読んだ時間を返せと言うほど悪い出来ではないですが、衝動買いしてしまったのをちょっと後悔しています。

  • タリバンとアルカイダについて知る良書

    「大仏破壊」というタイトル通り、確かにバーミアン遺跡破壊に至るまでがストーリーの軸なのですが、この本の本当のテーマは文化財が破壊されたことにはありません。 アフガニスタンのタリバンの誕生と変質、タリバン政権を乗っ取っていくビンラディンの天才的手腕、そして9.11に至るまでアフガニスタンで活動してきた個人個人(タリバンもいればその他の人も、外国人も)の絡み合い。それらが丁寧な取材をもとに、記されています。 ストーリーの組み立て方も上手く、語弊はあるかもしれませんが、エンターテインメントとしても読めます。 テレビのニュースショーや新聞が、タリバンについていかに浅い伝え方しかしていないか、痛感させられました。

  • ナメるな,危険

    正直に言って,読む前はナメていた. NHKの番組「バーミヤン 大仏はなぜ破壊されたのか」の単行本化だと聞いて,どうせ,番組の内容を文字起こしした程度の本だろうと予測していた. NHKの歴史モノの番組の単行本が,たいていはそうなので. ▼ ところが,開いてびっくり. 放送では殆ど語られていなかったことが,詳細に述べられている. というより,番組ではメインだった,「大仏破壊を国際社会が察知してから,実際に破壊が実行されるまでのプロセス」は,本書においては約21%を占めるに過ぎない. 他は,その以前の, 大仏が破壊されかかったのを,ターリバーン指導者オマルがやめさせる(!)事件, アルカーイダがどのようにしてターリバーンを侵蝕し,次第に支配していったかのプロセス, ターリバーン内部の穏健派と強硬派との暗闘, といったものが詳細に描かれている. その幾つかは,アハメド・ラシッド「タリバン」でも推測にとどまっていたもの,噂レベルだったものを裏付け. ▼ 初期ターリバーンが表明していた「平和が戻ったら,権力は他の者に譲り渡す」宣言. 初めは譲歩もできて交渉も可能だったオマル. 勧善懲悪省に与えられた強大権限. 「禁止」だらけにする同省. ボニーノ殴打事件. ▼ アラブ人の加勢で陥落させたターリバーン. ビン・ラーディンのオマル篭絡策. 戦局を変えたビン・ラーディンの援助. 「アフガーンの法学者の意見など関係ない」 として,これを無視し始めるビン・ラーディン. 勧善懲悪省による,カーブル博物館の展示品破壊. オマルによって左遷されるターリバーン内穏健派. ▼ 大仏破壊が決定されてから,それが実行されるまでの詳細なプロセス. 破壊を思いとどまらせるために派遣された,「イスラーム法学界のドリーム・チーム」. 強制連行され,破壊作業をさせられたハザラ人住民達. 交渉の最中の破壊を知り,放心するムタワキル. 「破壊を喜んだのはアルカーイダぐらい」 ▼ シューラに加わるビン・ラーディン. ▼ 最後に,「田中浩一郎ファイル」の出版希望. ▼ 買え. 【関心率54.62%:全ページ中,手元に残したいページが当方にとってどれだけあるかの割合.当方にとっての必要性基準】

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