日本の文学賞

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カブールの園

三島由紀夫賞

カブールの園

宮内悠介

アメリカで暮らす日本人女性が、アフガニスタン出身の夫と幼い娘との生活のなかで、故郷、宗教、言語、家族の距離を見つめ直していく中編。表題作に加え「半地下」を収め、移民や越境の問題を静かな緊張感で描く。

移民家族宗教越境アイデンティティ

作品情報

国境を越えた家族の生活から、帰属と孤独の輪郭が浮かび上がる。

『カブールの園』は文藝春秋から刊行された作品集。NDL Searchで単行本のISBN-13とページ数を確認し、ISBN-10を換算した。表題作は三島由紀夫賞受賞作として、個人の生活に差し込む世界情勢と、家族の内側にある異文化の距離を描いている。

レビュー要約

  • 異文化の接触を大きな事件としてではなく、日常の違和感と沈黙の積み重ねとして描く点が評価されている。抑制された筆致が、登場人物の孤立とつながりの両方を際立たせる。

書籍情報

出版社
文藝春秋
発売日
2017-01-11
ページ数
206ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784163905938
ISBN-10
4163905936
価格
700 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

サンフランシスコで暮らす移民三世のレイは、旅の途中にかつて日系人収容所であった博物館を訪れる。日本と世界のリアルがここに! 「カブールの園」は、友人とITベンチャー企業を立ち上げた日系アメリカ人女性の物語。ヨセミテ国立公園にひとりで訪れるはずが、青いフォードを運転するうちに、かつて祖父母が収容されていた日系人強制収容キャンプの跡地に向かって……。「日系女性三代の確執の物語、あるいは、マイノリティとしての私たちのこと」と宮内さんも語るように、日本人とアメリカのセンシティヴな状況をクールな文体で描きます。 「半地下」は、宮内さんが22歳の頃の処女作に手を入れたもので、ニューヨークの少年少女たちを描いています。「打算なしに、ただ裸で皆様の目の前に立つような作品」と宮内さんは言いますが、80年代という過ぎ去った時間への愛惜がこめられています。その瑞々しさには胸を打たれるのではないでしょうか。 2017年、三島由紀夫賞受賞作。

レビュー

  • 日系三世の玲。帰国子女のユウヤ。それぞれの物語は、それぞれに精一杯、その場で生きていて、とても切なかった。

    中編が2編。 英語と日本語の狭間で生きる主人公や、その周りにいる人々が淡々と描かれている。 日系三世の玲。 帰国子女のユウヤ。 それぞれの物語は、それぞれに精一杯、その場で生きていて、とても切なかった。 対象に対しての深い愛を感ずる。

  • 異なる文化で生活することの大変さが実感できます

    本を読み終えての感想ですが、何だか切ないです。最近の人種間や宗教感での軋轢を見る限り、最近のインターネットの発展に伴う、グローバル化が、本当に人類にとって幸せなのかと考えさせられる一冊です。 本書は表題の「カブールの園」と「半地下」という2つの物語が収載されています。カブールの園では、日系3世である女性が、複雑な親子関係、幼少期のいじめによるトラウマに、大人になっても苦しめられているのですが、職場から言い渡された休暇を消化すべく、戦時中の日系人の収容所を訪問したり、母親との再対面を果たす様子が描かれています。日系3世とも言えども、米国の社会から疎外され、なりたい自分になるために立ちはばかる障害があることには、悲しくなります。 半地下では、幼少期に突然、ニューヨークに不法移住した少年が成長する様が描かれています。プロレス団体で商品として扱われる姉の存在、日本人であることと、米国人であることのアイデンティティーの葛藤が描かれていますが、東京に戻ってからの展開が少なく、少し物足りないです。

  • 絡み合う関係

    「カブールの園」 母と子、人種、精神と肉体。さまざまなものが絡み合い、一つの物語を形成している。 この作家の作品はエンターテイメント系のものしか読んだことがなかったので、ひどく驚いた。 多面性を持った作家。

  • 「現代の檻」を"言葉"として残そうとの意図が感じられ、好感が持てる作品

    表題作(「カブールの園」)と「半地下」という2つの中編を収録した作品。双方の表題は共に人種差別、人間(特に親子)間の誤解(無理解)、子供の頃のトラウマ、社会を覆う閉塞感といった「現代の檻」の象徴であり、その「檻」の中で生きて行く事の難しさを綴っている。双方の主人公は日系アメリカ人(あるいはアメリカに住んでいた日本人)であって、現代なら、これをイスラム教徒と置き換えても差支えない、というか、むしろ苛烈な物語になっていたと思う。 作者が示唆する「檻」の中の生き方はかなり"救いのない"もの(良く言えば諦観)だが、作者は<怒り>を1つの対抗策と考えている様に窺えた。また、作家という職業柄もあるが、この「現代の檻」を"言葉"として残そうとの意図も感じられ、好感が持てた。VR(Virtual Reality)治療法など作者得意のSF風味も感じられるが、それを極力抑えて(同様に得意のゲームと神秘感も抑えている)、全体を乾いた雰囲気に仕立て上げているのは新境地を目指したものか。 初めから中編を意図しているので無理な注文だが、登場人物や物語展開を更に膨らませた長編を読んでみたいと思った。余談だが、両編にジョンという同一名の人物が登場するのだが、その関係や意図が汲み取れなかったのは少し残念。

  • アメリカ明暗

    思いのほか良かった。 二つある物語のうち最初の方が良かった。著者の今後の作品に期待したい。

  • 切ない。日本人のアイデンティティって何だろう

    ほぼ米国を舞台にした日本人の物語2篇。アメリカンドリームを掴める国というイメージがまだ残っている米国。ただし、そこに住む日本人は果たして夢を追えたのだろうか。米国での日本人が差別を受け、虐げられ、それでも日本人であることから逃げられなくて、どうにかなってしまう。「カブールの園」を読んだ時点では日系人の過酷さが伝わってきた。そして「半地下」を読んで、“過酷”という言葉で表現するのが失礼に思うくらい何とも言えない悲しさに襲われた。

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