日本の文学賞

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彼岸花が咲く島

芥川龍之介賞

彼岸花が咲く島

李琴峰

記憶を失った少女がたどり着いた島で、異なる言葉と秩序に出会い、自分の立ち位置を探っていく。言語、共同体、身体感覚をめぐる想像力が強い長編。

言語記憶アイデンティティ

作品情報

記憶を失った少女がたどり着いた島で、異なる言葉と秩序に出会い、自分の立ち位置を探っていく。

異なる言葉と秩序を持つ島を舞台に、記憶とアイデンティティを問う長編としてまとめた。

書籍情報

出版社
文藝春秋
発売日
2021-06-25
ページ数
192ページ
言語
日本語
サイズ
13.7 x 1.8 x 19.4 cm
ISBN-13
9784163913902
ISBN-10
4163913904
価格
1170 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

【第165回 芥川賞受賞作!】 記憶を失くした少女が流れ着いたのは、ノロが統治し、男女が違う言葉を学ぶ島だった――。不思議な世界、読む愉楽に満ちた中編小説。

レビュー

  • やっぱり名著!

    私は熱心な読書家というわけではありませんが、本書が2021年上半期の芥川賞受賞作品とあり、今更ながら何となく読んでみました。 彼岸花が咲き乱れる架空の日本南方の島の砂浜に、ある日若い女性がうちあげられる、という設定から本書は始まります。 本の中盤までは、様々な架空の言語や難解な漢字や読み方がでてきるため、真面目に文字を追ってゆくと結構時間がかかりますが、女性たちが支配する島の謎解きが始まる後半からは、一気に読みすすめることができます。 ジェンダーや戦争、家族や日本国内に未だ蔓延る家父長制を再考してみるきっかけとしても非常に興味深い作品でした。

  • 近未来の出来事?

    こういう世界観もあるのか、と思い興味深く読みました。 <島>の暮らしは昔の南西諸島を思わせるけど、実はこれは近未来の出来事として書いたんだろうか。 後半部分を読むとそう感じます。

  • 文章はイメージ豊かだが、他方で物語と人物造形は単調な作品。

    李琴峰氏の『彼岸花の咲く島』読了。前々から小説家や文学周りのアベガ―現象を興味深く観察していたが、この作品はまさに「アベガ―」的作品ともいえる。その点を社会批判あるいは社会風刺的なニュアンスとして理解するかしないかも論点になるが、前者(社会批判・風刺としての側面で理解する)だとしたらやはり薄っぺらい。他方で、作品を読んでみると、李氏がなぜアベガ―的発言をtwitterから削除しているのか少し不思議でもある。文章は上手くイメージ豊かだ。他方で人物描写や物語は単調。彼岸花が重要な貿易財ではないか、ということはその効能の説明を読んだ瞬間に、僕にはネタバレした。そうなると物語最終部の「歴史」や「現在の島の在り方」に関する物語の流れが容易に想像ができてしまった。最近の芥川受賞作は読んだ範囲はみんなこの「文章は上手く、そして人物描写や物語は単調」なので、その意味で受賞は「適切」なんだろうな、と思った。まずは一読をおススメする。

  • 歴史の紡ぎ方について考えさせられる作品

    歴史を紡ぐということは、「後世に教訓を遺し、同じ轍を踏まさせないという大義のもとに為される行い」であると考えています。 その際に重要なのは、形式だけでなく、如何にその形式であるのかという本質部分も後世に伝えていくということです。形式だけが伝播すると無意味な分断が生じ、それが争いの種になる可能性もあります。 そういった可能性も考慮しつつ、過去の歴史に縛られすぎないように自分たちの在り方を模索し続け、それをまた後世に伝えていくことが今を生きる私たちに課せられた使命であると、この作品から考えさせられました。

  • ノロはなぜ女性だけなのか

    その島では、男は祭司、神官にはなれない。歴史の語り部にもならない。いや、歴史そのものを知ることはできない。なぜか。それになろうとする少女と、それになろうとするが許されない少年。その理由は、巻末で一挙に明かされる。 東アジアのある国は、ある人びとを追い出しつづける。追い出されたら、たいていは死ぬ。しかし、まれに、ある島に漂着し、苦しみののち、受け入れられる人もいる。 その島では、恋愛は自由だが、結婚や家制度がない。子どもたちは、血縁関係によらないオヤの元で育ち、島で生きていくために自分が選択する技術をゆっくり学ぶことができる。 島の自然や主人公たちの心が深い音楽のように奏でられている。それに比べて、思想の叙述はやや厚みにかけるかもしれない。しかし、思想自体はとても魅力的なものである。自然や心の中に、もっと織り込むことができたのではないか。 かつて、男性以外はキリスト教会の牧師になれなかった。いまでも男性以外の牧師は少ない。3割にも届かないだろう。なぜか。 最初に少年と記した人物はそうすべきだったのか。そこも明かされるかも知れないという予感があったのだが。 しかし、そのような展開を思い描ける自由な小説だ。読んでよかった。書いてくださり、ありがとうございます。

  • 発表当時読んだけど。

    文庫になったので再読しました。 ちゃんと熱量がある作品だと思います。

  • 推薦図書

    芥川賞は子どもも読んで楽しめるものが多いので推薦図書、のようなイメージで読むと良いと思います。個人的には南方の島々や台湾とのつながり、八重山諸島の風土に惹かれているので楽しめましたがそういったことに特に興味がない方が期待されて読む本ではないです

  • 今、私たちの番。

    直木賞受賞作品、気になって手に取った。記憶をなくし島に漂流した少女が同年代の少女に助けられ、島の文化に戸惑いながら生活に馴染んでいく物語。 初めは暗号のような文章が続くが、読むうちに不思議とどんどんハマり、島の季節や風俗、細かい表情の描写に、景色が色と体温を帯びていく。登場人物や生活習慣の情報が少しずつ増えていき、自分も主人公と一緒に島に迷い込んだ気分になれる。 はじめは傍観者だった主人公も、親友の真っ直ぐな情熱と明るさに助けられ、島の一員となっていく。島の伝統である"ノロ"を継ぐのか、"ノロ"を継ぐとは一体どんなことを意味するのか。そもそも自分はなぜここにいて、どこからきたのか。 異国の青春物語のようで、彼女たちの奮闘は、どの国の誰にでも共通する気がした。これから自分たちがどう生きていくかが、ゆくゆくはこの島の未来を決めている。今は自分たちの番。その責任と覚悟が、少女たちに備わったとき、海を見つめているラストは共感できた。 群青色の装丁と朱色のしおりがぴったり。最初の地図もファンタジーで良い。アジアフェチ、島フェチ、文化人類学フェチの皆さんは結構ハマると思われます。

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