作品情報
敗戦後の家を守ろうとする姉妹の選択を描く、濃密な戦後小説。
戦争で二人きりになった姉妹、有希子と久美子が、生き残るために自宅を進駐軍相手の場所へ変えていく。戦後文学の主題を現代的な過剰さで書き換えた作品。
レビュー要約
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挑発的な設定と戦後社会の暗部を押し出す語りが印象に残る。美しさと醜さを同時に見せる人物造形に読み応えがある。
書籍情報
- 出版社
- 文藝春秋
- 発売日
- 2008-08-05
- ページ数
- 358ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784167462031
- ISBN-10
- 4167462036
- 価格
- 26 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
1945年、東京。女学生の姉妹・有希子と久美子は自らの若い体と知恵で運命に立ち向かう。伊藤整文学賞受賞、会心の大型ロマン
レビュー
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表紙の似顔絵が良かったので購入しました。
全体的にこぎみよいテンポの内容で、時代背景の描写もわかり易くおもしろく読めました。 但し、後半が完結を急ぎすぎている感じがしたので、もう少し長く物語を続けて楽しまして欲しかったと思います。 表紙の似顔絵は、女優になった主人公の妹ですよね?
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けなげでしたたかな女性に支えられていた昭和史の一側面
島田雅彦を意識して読んだことがなかったが、ある意味こむづかしい作家、との印象を持っていた。 朝日新聞日曜版の書評で本作を知って、ちょっと自分の島田印象とは違った内容のようで、興味を持って買ってみた。 おもしろかったですねぇ。 すでにアメリカと戦争をしたことを知らない人が増えてきている状況では。。。知識としては知っても、その教科書のアメリカと、目の前のアメリカと同じで、自分の曾祖父の時代には殺し合いをしたなどとはちょっとわからないかもしれない、 この小説の舞台は、なんだか外国の話しのように思えるかもしれない(多分40代より若いと)。 しかし、日本はアメリカ(そのほかの「自由」社会と)戦ったんだし、負けて、東京は焼け野原になったんだし。でも、そのことを知識以上にわかっているつもりの50代前半の私にも、その時代に生きた女性の生の生活までは想像していなかった。 なかなかきわものめいた表題と、ちょっとどきっとするような表紙画でいささか予断を持って読んでしまうのが欠点だ。しかし、内容的にはある意味すこぶるまじめで、そんな敗戦直後の日本の混乱の中で、したたかに、そして前向きに、でも苦しみ頑張って生きた、若い女性たちの懸命さが伝わってくる。 「性」を興味本位に取り上げたわけではなく、苦しい日本の状況で、何のことはないか弱き女性こそ、まず第一に立ち上がり、前向きに持っている武器を精一杯使って生きたんだと言うことが伝わってくる。 40代までのヒトには、なかなか敗戦直後の日本の様子を想像できないから、表面的に読んでしまうかな。表面的に読めば、単なる落ちぶれた姉妹の売春話し、となってしまい、それにはなんだかまじめな恋愛があったり、戦争の話しがあったり、何これ、となってしまうかもしれません。 でも、おもしろいです。とってもとってもいい小説です。 じっくり読もうにも、結構話しはだだだだだぁっと進んでしまいますが、とにかくいろんな意味で楽しめる、ほんと、いい小説でした。 おすすめします(ただ、表紙画はとってもすてきなんだけど、余りもなまめかしく、普段つけないカバーをつけて読んでましたがね)。
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メロドラマ
ドラマ化できそうな、ある意味とても分かりやすくポップな小説でした。島田雅彦先生も出演して、連続ドラマ化すべき。
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「真珠婦人」みたいな?
母にもらって読みました。こういっては何ですけどお昼のドラマのようなジェット コースター型のメロドラマのようにしか感じられませんでした。 しかし、「これは昼ドラ」と頭を切り替えて「姉妹の父宮本=大和田信也」などと 勝手に配役して楽しむのもひとつの方法かとは思われます。 すっかり読み終わった後で、「これはもしや意図的にチープな描き方をしてテーマを 浮かび上がらせる手法だったのか?カズオイシグロ『わたしたちが孤児だったころ』 的な?」という疑念が浮かんだのですが、もしそうならその効果を読んでいる最中に 感じてみたかった。映画化には期待します。
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あの時代を生き抜いた女性達へのオマージュ
島田雅彦の著作を読んだのは、10年以上前に『サヨクのための嬉遊曲』を読んで以来のことだった。左がかった視角から、政治や社会を皮肉る手法は相変わらずだと思ったが、さすがに本作品は『サヨク』よりも数段進化しているように思えた。最初の方は破天荒でドタバタした展開で、『サヨク』みたいだなあと思っていたが、途中からかなりシリアスになり、有希子が後藤と西に向かってからの展開は非常に重厚。エピローグを読み、本書は戦後日本、そして日本女性のあり方を表現した一つの試みであることが分かった。我々の祖父母が戦時、そして戦後の混乱の中で何をしてきたのか、本当に知っている人は私も含めて案外少ないのかもしれない。本書の主人公達のように、時には人の道を踏み外したこともあるのかもしれない。しかしながら、彼らはとにかく生き抜いたのである。本書は、あの時代を生き抜いた日本人、特に女性達へのオマージュなのである。本書を読むと不思議と元気が出てくる。島田雅彦の本を読んでこのような気持ちになるとは想像もしていなかった。
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相変わらずうまい
たまには小説をと思い。 相変わらず、うまい。しかし、最後にこうなげやりな感じで話をまとめてしまうところも相変わらず。もう少しねっとりを最後のエピローグとかを書くといいと思うのだけど、性格なんだろうね。 舞台は、戦後、焼け野原になった東京。戦前映画監督をしていた父は、戦後、米兵相手の娼婦の斡旋の仕事をして生活を立て直そうとしていた。その矢先、父親は「アメリカ兵の肉を食べた」というとんでもない誤解を受けて当局に連行されてしまう。残された有希子(語り手)・久美子姉妹は、やむなく、自宅を進駐軍の慰安所にして生活費を稼ぎ始める。この姉妹を中心に、街娼のお春、有希子に想いを寄せながら学徒出陣し帰国した後藤、父に「スカウト」された祥子などの人生が交差していく。と、ストーリーを紹介すると、そういうことなのだが、やはり島田のかっこいいところは、怜悧な文体だと思う。例えば空襲の東京を描いたこういうところ。 <燃えさかる商店街で、呉服屋の女主人は入れ歯を落とした。丁稚の少年は重い荷物を背負わされ、火の粉をよけながら、道端にはいつくばって、主人の入れ歯を探していたという。入れ歯がなければ、物を食べるには困るだろう。でも、よりによって空襲のさなかに落とすことはない。あとで聞いたら、入れ歯はめでたく女主人の口に戻ったという。でも、あの少年は逃げ遅れて、大やけどを負い、翌日に死んでしまった。かちかち山の狸みたいに燃える荷物を背負ったまま走ったそうだ。誰も背中の火を消してやれなかったのか? どうして少年は荷物を捨てなかったのか? 入れ歯と引き換えられるほど少年の命は安かったのだろうか? ケチな女主人にあとからがみがみいわれるのがいやで、つい一生懸命になって、入れ歯を探してしまったのだろう。少年の夢は飛行兵になることだったという。燃える荷物を背負ったまま這いつくばって死んでゆく姿を想像しても、涙なんて出なかった。ただ悔しいだけ。しょせんは他人事だけど、少年が死ぬまで奴隷根性を捨てられなかったのが悔しい。 入れ歯には少年の恨みがこもっているから、さぞ噛み合わせが悪いことだろう。> (p. 38) 一文一文は短いようで、鋭い。「奴隷根性」とか言って、少年を冷たく表現しているが、最後の一文で、なぜか少年が少しは救われるような気もする。
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通俗的なロマンチズムが苦手
悲惨なことも書いているんだけど、それらが浮ついた通俗的なロマンチズムに落とし込まれているようで、素直に感動できなかった。ああ、こういうのが好きな人きっと多いんだろうなあ、と。好みの問題と言われればそうなんだけど。
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強きもの、汝の名は女なり
戦後まもなく、占領下の日本。 美しい姉妹は家を守るため、そして自分らしく生きるため一人は愛する人にすべてをささげ、もう一人は自宅を宿として外人相手の売春婦として生きていく。 そこに、売春婦の斡旋を行っていた父が送り込んだ娘や、売春婦の女性などが絡みたくましく戦後を生きていく。 姉妹の生き方や時代背景に、当時の混乱や価値観がどんどん失われよりどころを失った男が呆然とし、女が毅然とするさまがよく現れているように感じた。 そしてきわめてひどい状況に生きていても、姉妹を含め女性たちは絶望もしなければ、動揺もさほどしていない、その芯の強い女性に対して男性のなんとい軟弱なことか・・・ この姉妹の生き方を否定できないし、この時代をこの状況で生きていたら私だったら姉と妹どっちの行き方をするだろう、と考えてみた。 妹かな???
関連する文学賞
- 伊藤整文学賞 第17回(2006年) ・受賞