日本の文学賞

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僕って何

芥川龍之介賞

僕って何

三田誠広

『僕って何』は、学生運動の余波の中で揺れる若者の自立を描いた青春小説です。内ゲバ、同棲、母との関係を通して、自分が何者なのかを問う切実さが浮かび上がります。

青春学生運動自立同棲

作品情報

時代に流されながらも、自分の輪郭を探す若者の痛みが描かれます。

『僕って何』は、学生運動の余波の中で揺れる若者の自立を描いた青春小説です。内ゲバ、同棲、母との関係を通して、自分が何者なのかを問う切実さが浮かび上がります。 受賞歴からも、同時代の読者に新しい声や視点を示した作品として読めます。

レビュー要約

  • 青春の不安と時代の空気を率直に描く点が評価されている。一方で、主人公の頼りなさを重く感じる読者もいる。

書籍情報

出版社
河出書房新社
発売日
1977-07-01
ページ数
176ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784309002729
ISBN-10
4309002722
価格
150 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

第77回(昭和52年度上半期) 芥川賞受賞

レビュー

  • 1977年の芥川賞を受賞した作品です

    「僕って何」は 1977年上半期の芥川賞を受賞しました。 リアルタイムで読んだのを覚えています。 このレビューを書いている段階で 芥川賞は159回を数えます。 受賞作がない回もあれば 2作が受賞する回もあります。 これまでの受賞作の合計は ざっと自分で数えましたところ 167作前後となりました。 数え間違いもあるでしょうから おおむね170作くらいが 受賞していると言えるでしょう。 久しぶりに本書を読んだのを機会に そのうち何作を読んだか 指折り数えてみました。 1)松本清張「ある『小倉日記』伝」(1952) 2)開高健「裸の王様」(1957) 3)北杜夫「夜と霧の隅で」(1960) 4)柴田翔「されどわれらが日々」(1964) 5)庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」(1969上) 6)清岡卓行「アカシアの大連」(1969下) 7)村上龍「限りなく透明に近いブルー」(1976) 8)池田満寿夫「エーゲ海に捧ぐ」(1977) 9)宮本輝「蛍川」(1977) 10)高橋揆一郎「伸予」(1978) 11)高橋三千綱「九月の空」(1978) 12)辺見庸「自動起床装置」(1991) (敬称はすべて省略しました。悪しからず ご海容いただけると幸いです) 上記の通り 内容を覚えているのは本書を含め 13作品になりますので 受賞作のおおむね8%くらいは 読んでいることが分かります。 これら以外にも 井上靖「闘牛」(1949) 安部公房「壁」(1951) 遠藤周作「白い人」(1955) 菊村到「硫黄島」(1957) 森敦「月山」(1973) など読んだはずなのですが よく内容を思い出せないので リストから削りました。 私にとって読書は趣味であり (ほとんど唯一の)道楽ですが ○○賞をもらったから という読み方をする時間的余裕はないです。 (生きていくために本業の方が忙しいので) 好きな作家の作品をコツコツと読んでいくうちに 結果として各賞受賞作品を含めて 読むことがあるというのが現実です。 さて 「僕って何」の初出は 『文藝』1977年5月号(河出書房新社) なので それから逆算すると、本書は推定で 1960年代(後半)ないし 1970年代(前半)を舞台にした 青春小説と申せましょう。 そのナイーブな感じをくどくど説明するのは 野暮というものですから 是非、ご自分でお読みになっていただけると幸いです。 ひとつだけ補足いたしますならば 本文でアルファベットで記載されている 5つのグループ名について そのモデルを推定することは 比較的容易と思われます。 推定の根拠となる表現はたとえば次の通りです。 ・平和と民主主義を主張するA派 ・A派の批判から出発したB派 ・B派はC派やD派の活動を 「一揆主義」「サンディカリズム」と非難 ・赤ヘルメットをかぶったD派 ・B派の白ヘルメット ・E派の青ヘルメット ・C派の白ヘルメット ・C派とB派は書いてある文字が違うだけ ・B派とは最も仲のわるいC派 ・これまでほとんど姿を見せなかったC派 ・B派との闘いより内部の 三つのセクトの抗争の方が大変だろう(主人公の感慨) (たとえば本書 P.79・105・135 参照) (各派の正式名称や歴史については 関連の白書などでご確認いただけると幸いです) 最後に 主人公の故郷は「F町」となっていますが これには特定のモデルはないように思います。

  • いつの若者が読んでも胸に響く不変的なテーマが描かれている

    東京に進学して空虚な思いを抱いていた僕は成り行きで学生運動に入り不思議な熱を感じる。さらにそこで知り合った年上の女性レイ子と同棲することに。。。 自分が生まれる前の世界なのに、奇妙なシンパシーを感じ、一気に読み進めてしまった。 偶然から始めた学生運動の一体感に突き動かされる。そして恋。しっかり自分の意見を持って議論している人達がまぶしく見える。しかしそれはとても脆いただの青春だ。見えたかのような”僕”は錯覚だった。 自分自身、偶然の出会いによって空虚な今からどこかに移ることができたらと人生の中で何度も夢想した。しかしそれだけでは自分を見つけることはできないのだと改めて思った。 30年以上前に書かれた小説だが、いつの若者が読んでも胸に響く不変的なテーマが描かれている。

  • 浪人生の時に読みました

    50年近く前、浪人生の時にリアルタイムで読みました。そろそろ学生運動も終わった頃でした。 大学ってこんな感じなのかなとボンヤリ思っていましたね。 セクトの先輩の女性の所に転がり込み、彼女に避妊具を買いに行かされるシーンが印象的でした。 翌年、大学に合格しましたが、6年間(医学部なので)柔道と勉強しかした覚えがありません。この小説みたいな事は一切なかったです。 卒業して田舎の大学の医局に帰る事になりました。六本木で街行く若い女性を眺めながら、オレは何も良い事が無かったなぁと、ちょっと涙がでました。 この本は誰かに貸したきり戻って来ませんでした。 もう一度買い直す事は無いでしょう。でも印象的な小説でした。

  • あの時代の、標準的な出来か

    ユーモアを心掛けたらしいが、全く笑えない 自然描写の部分が、ストーリーを語る部分から浮き上がっている感じで、作品としての渾然とした完成度を損ねている。芥川賞らしい力の入り方になったのだろうな しかし最近の受賞作よりはだいぶまし

  • 何でもない日常にスリルがある

    とても面白く読ませていただきました. 次から次へとできごとが起こるのですが,それらの「事件」がいちいちわざとらしくなく,自然にキャラクターが動いて事件に巻き込まれていくのでついつい話に惹きこまれてしまいます. 結局,何でもない日常にスリルがたくさん隠されていることを痛感します. 文体も,これこそプロの作家しか書けない文章だ,というような自然に流れるような軽いタッチの読みやすい文体で,好感が持てます. 芥川賞を受賞したのも納得できます. この作者の作品はとても読みやすいので好きです.

  • 胸を打つ

    若者なら未熟な迷いの中にもしっかりした主体性が見えて、男子学生ならつまるところは男らしくて爽やか、できればそんな主人公を誰でも書きたいのだろうと思う。 だが現実の中でそれはお伽噺か演じられた虚像にすぎない。いくらでもあるテレビドラマか漫画か古典的青春文学に任せておけばいい。 それとはほど遠くて誰にももっと身近の、ごくごく身近の真実、腹立たしいまで醜く情けない本音の姿を気取りなく書き切っていて胸を打つ。

  • いいなあ

    タイトルにひかれて購入。 有名なひとらしいが、知らないから新鮮だった。 もうちょっと読んでみたいです。

  • 「三四郎」というよりも

    作者が意識したのは、「聖書」ではないでしょうか。 もっとはっきり言えば、作者が書こうとしたものは、学生運動を題材にした「和製・ヨブ記」です。 少なくとも、私はそう思いました。 あとがきで、作者が、文脈上たいして必要もないのに、さりげな〜く宗教について触れているあたり、これをからめて解釈してくれ、というメッセージに思えて仕方ありません。 もし、この作品が、ヨブ記をベースにしたものなら、神義論(ぶっちゃけ、「神様って何」という論議です)について自分なりに考えてみたことがある読者でないと、「絶対」と言っていい程、この小説は理解できないでしょう。 万人向けではない、という意味で星は2つにしました。 なお、作者には、受賞後に書かれた「僕のうちあけ話」というエッセーがあります。 これは、あとがきをさらに濃くしたような内容で、作者の10代・20代の回想や読書遍歴が記述されているので、本作品誕生の背景を探る意味で、入手できるなら併読をお勧めします。 主人公の「僕って何?」というツイートは、10代の作者の「私は存在するのか!」という叫びだったのかもしれません。

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