日本の文学賞

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風葬の教室

平林たい子文学賞

風葬の教室

山田詠美

学校という閉じた空間の中で、少女が周囲の視線や暴力にさらされながら自分の感覚を保とうとする小説。鋭い言葉と息苦しい場面の積み重ねが、孤立の痛みを浮かび上がらせる。

学校孤立暴力

作品情報

教室の空気が、ひとりの少女の尊厳を試していく。

山田詠美の初期作品で、教室内の力関係と少女の内面を緊張感のある文体で描く。社会の小さな縮図としての学校を通し、傷つけられながらも自分を手放さない感覚を刻んでいる。

レビュー要約

  • 閉じた教室で起こる心理的な圧迫を、若い語り手の感覚に即して描く点が強く読まれている。

書籍情報

出版社
河出書房新社
発売日
1988-03-01
ページ数
167ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784309005027
ISBN-10
4309005020
価格
102 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

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レビュー

  • 風葬はある意味、恐ろしい

    何度も読み返している作品ですが、都度感想は違い、一見、自然に生きる動物たちへの思いやる風葬が、結末で、人間の保身に繋がることを知り、背筋が凍りました。

  • 成熟のかたち

    転校生である小学生の女の子が主人公の話しです。女の子の主観で展開されていきますが、とにかく考えていることが男の子とは大違い(無論考えている男の子も少数にはいるのでしょうけれど)です。転校を繰り返す主人公は両親と高校生の姉の4人暮らしです。基本的には両親および姉からも放っておかれることを好む、孤独を愛する子供です。できれば小学生にとっての教室という世界は1日の半分を占める世界ですから、平穏無事に過ごせることを望んでいるのですが、体育教師である生徒の人気ある先生のちょっとした贔屓から平穏な世界が変質してゆく姿を克明に描いています。 いわゆる『いじめ』問題を扱っているように見えて、私には1人の人間の完成されてゆく様を扱った作品に思えました。成熟の早い人であるなら、たとえ20歳前であろうとも、精神的には成熟することがある、というように感じました。もちろん成長には試練が伴い(傷であり、負荷である)、だからこその成長なのでしょうけれど。 私はこの物語に、とても男女の差を感じてしまいました、おそらく男の子でも感受性の強い、そして成熟した小学生はいるのでしょうけれど、私には分かりませんでしたが、女の子はいたな、と感じられます。その差はもちろん個人差も大きいのですが、やはりある程度男の子ということで下駄を履かせて貰っている感を認識します、あくまで私の個人的主観では、ということですが。 転校を経験したことがある方に、成熟の仕方に興味がある方に、オススメ致します。

  • 丁寧に描かれた青春。

    山田詠美さんの初期の作品。 転校生の本宮杏は自立した少女として無難な生活を送っていたが、担任教師が可愛がってくるために徐々にいじめを受けるようになり……。 友人に薦められて久しぶりに山田詠美さんの本を読みました。 いま読むとちょっと背伸びしている感じも受けますが、細かくて言葉にしづらい感情を丁寧に描いていると思います。 こうだ、というのではないけれど、確かにある感情。 そういうものがジーンときました。 いじめがどんなふうに起こるのか、とか、 アッコという男の子の存在が与えてくれる意味、とか、 大人の見当外れの気遣い、とか、 それ以外の部分の描き方もとても上手ですっと入ってくるいい作品です。 一つだけ難を言えば、短すぎるところでしょうか。 「こぎつねこん」という短編も収録されていますが、それでもこれを一冊の本として売るのはちょっと反則のような気がします。

  • 私がいじめから立ち直るきっかけになった一冊。

    中学生の頃、父の仕事の都合で田舎の中学校に転校することになりました。初日に登校した時、はいている靴下がそこの校則と違うという理由だけで、因縁をつけられていじめられるようになりました。 家族にも相談できず苦しんでいる中、出会ったのがこの本です。 この主人公と似たような心のプロセスを辿り、[いじめをするような人間は、見下されてしかるべき]という態度が身に付きました。 私の人生を支えてくれた本です。

  • 小学生がここまで達観してしまうのか・・・。

    『風葬の教室』の主人公は小学5年の女子転校生の‘私’。父親の仕事の都合で転校を繰り返す‘私’は、いつも“退屈な平和”を転校先の学校に対して望んでいた。しかし今度の学校では、いろんな要素が重なってイジメにあう。自殺まで考えた‘私’が立ち直るためにとった解決方法は、イジメの相手を“軽蔑”という二文字で(想像上)殺して野ざらしにしておく(風葬)ことだった。 小学生がここまで達観してしまうのか・・・。たとえ小学校とはいえ、「学校」とはこれほど息苦しいものだったのか・・・。などと、つい引き込まれるように読んでしまった。 併録の『こぎつねこん』は、若い母親の子守唄に恐怖と孤独を覚える5才の時の自分を、男の胸の中で目覚めた20年後の今の‘私’が回想するお話。こちらも味読に値する作品だった。

  • いじめの構図

    父の転勤で、転校を繰り返す杏(あん)は、小学校5年生にして、「好かれないよう、嫌われないよう」眠る時間より長い学校生活をうまく過ごすためのすべを身につけていた。しかし、女子に人気の体育教師に好かれたことから、彼を慕う恵美子の反感を買い、ついにはクラスの中で孤立していくようになり…。 「いじめ」がテーマの本と聞いていたけれど、もっと奥深いような気もします。小学校5年生の目を通して見る「学校社会」の異様さ、滑稽さが描かれていて、いじめの構図、その愚かしさなどについて考えさせられました。年齢に関係がなく、「大人」と「子ども」がいること、あるいは「いじめ」を「痒さ」に例えたところなどは、思わず納得。読後感は決していいとは言いがたいけど、「教室」という世界に息苦しさを感じている人には勇気をくれる1冊になるのでは?

  • 印象に残る作品。

    はじめて読んだのは確か4、5年位前だと思うのですが、未だに内容を細かく覚えているので、よほど印象に残ったんだと思います。(いつもすぐに内容を忘れてしまうので、汗) 中学のときに読んで、主人公の考え方に軽く衝撃を受けました… 山田詠美さんの書く人物は飄々としてるような感じが魅力ですね

  • ノスタルジア

    きっと筆者の幼少時代がモデルになっているのだろう。 何も悪いことなどしていないのに、ただ少し周りの子供と違うという だけなのにいじめられ、孤立していく主人公がとても切ない。 それでも彼女の感受性の強さ、小学生に似合わない女らしさが彼女自身を成長させ魅力的にさせていく。 それがさらに彼女を孤立させていくが、成熟した少女は同級生のイジメが届かないほどに達観してしまう。 一種の悟りである。 成人した主人公の物語を読んでみたい。

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