日本の文学賞

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約束の地

大藪春彦賞

約束の地

樋口明雄

八ヶ岳に赴任した環境省技官が、野生動物、地域社会、家族の問題に向き合う山岳サスペンス。巨大な獣の影が迫るなか、自然保護と人間の生活が衝突する現場で、父と娘の再生も描かれる。

山岳サスペンス野生動物環境保護父娘地域社会

作品情報

人を襲う獣の気配と、傷を抱えた父娘の再出発が同じ山に重なる。

妻を失った七倉航は、小学生の娘とともに八ヶ岳の野生鳥獣保全管理センターへ赴任する。急進的な保護運動、昔気質の猟師、地域の不安が絡み合うなか、山では説明のつかない襲撃が続く。自然と共に生きるとは何かを、冒険小説の推進力で描いた長編。

レビュー要約

  • 自然と人間の対立、猟師や行政側の人物造形、父としての主人公の成長を一体で読ませる力が評価されている。サスペンスの緊張感と山の空気の濃さが両立しているという反応が目立つ。

書籍情報

出版社
光文社
発売日
2008-11-21
ページ数
516ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784334926427
ISBN-10
4334926428
価格
1687 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

第12回大藪春彦賞 第27回日本冒険小説協会大賞 エンタテインメント文学賞をダブル受賞。 そして、 朝日新聞・週刊現代など書評でも大反響。 大長編の徹夜本。価値ある一冊! 相容れぬ者たちが共に生きるため、男は静かに立ち上がる。 農作物を荒らす、人に危害を加える──など、野生動物被害を調査し対応する公的機関「野生鳥獣保全管理センター」。 その八ヶ岳支所に出向した環境省エリート役人、七倉。 自然に満ちあふれ、のどかに見えるこの地で彼を待っていたのは──。 腰掛け人事、と冷ややかに彼を見る部下たち。 猟を法で規制され爆発寸前のハンター。 密猟でもいい。作物を荒らす「害獣」を殺して欲しいと願う農家。 ヒステリックな動物愛護団体。 親の利害関係が生み出す子供のいじめ。 さらに。 ヒトを「エサ」だと認知し、襲い始めた巨大野生動物。 人間の心の闇が生み出した死亡事件。 四面楚歌のこの地に、孤独癖のある娘と二人でやってきた七倉がなすべきこととは? 山積する難問題に真摯に向き合う男の静かなる決意。日常生活の愛おしさ。家族愛。そして息を呑むアクションシーン。 興奮と感動の書下ろし一大巨編! 実力派作家の才、ここに開花。

1960年山口県生まれ。 本書で大藪春彦賞、日本冒険小説協会賞ダブル受賞する。

レビュー

  • 傑作

    フライフィッシャーの作者ということで購入しましたが、構成も文章も秀逸。 楽しめました。 連作のK9シリーズも購入して読み始めました。

  • 所有したい

    図書館で借りて一度読んだ本ですが所有したいと思い購入しました。 舞台となった所に住んでいるし、作者が取材した人に知人も。 犬は大好きです。 テンポがあるし展開も早い。おもしろいです。

  • 今の時代だから、多くの人に読んでもらいたい作品です。

    ルールを守らないハンターや 動物愛護団体とハンターの団体との軋轢など 耳にする事が多く、、 人間と野生動物との共存できる事を望みますが、現実は 増える一方の鹿などの農家の被害も見て、、 最近では 民家近くで 昼間でも鹿を見かけ、心の中で 山に お帰り!と、、願う日々です。 この作品は、包み隠さず 書かれている作品です。 この作品で 国産の農産物を食べられるのは、見えない人達の努力のお陰だと 知って欲しいです。

  • すごすぎる

    他のレビュワーのみなさんが書かれているとおり、大ボリュームながら一気に読みきってしまった。序章から衝撃的な始まりで、そのまま一気に進んでいく。すでに成人している主人公が成長する姿が清々しく、特にクライマックスの山小屋のシーンは手に汗握るという表現がぴったり。そして終章の静けさとのコントラストが素晴らしい作品です。寝不足覚悟で買ってください。

  • どうしようもない世界で

    読みごたえのあるボリュームなのに、あっと言う間に読み終わったしまいました。ここ数年で読んだ本の中で、最も共感出来て感動した本です。 山を壊す人間、山を追われる動物、里に下りた動物は畑を荒らし、ヒトを襲い始める。 これは警告では無いでしょうか?人間の消えることの無い、果てしない欲望の末に起きるであろう近未来を描いているようにも思えました。 作者が書いた南アルプスの地に、私も同様に十年以上暮らしています。 山が何か変わってきた。川が何か変わってきた。何よりも動物達に落ち着きが無く、妙な苛立ちを持って里に下り始めています。農作物の被害のみならず、人に遭遇して怯えたクマが攻撃する事件も増えてきました。 深く、考えさせられた作品です。

  • 消えゆく里山文化への挽歌

    30冊ぶりの5つ★。文学賞をダブル受賞しているのにも拘わらず、何故売れないのだろう? 表のテーマは人間と野生動物の共生。害獣捕殺、棲み分け、無条件保護の三者三様の立場が描かれる。 一方、裏テーマは消えゆく里山文化への挽歌。山の神になりそびれた稲妻、三本足と老猟師との共通項は『老人と海』にも通底する“滅び”。 そして老人の方割れとも言える老紀州犬 吹雪の存在!作中で老人が「犬と人の歴史は長い。」と呟く。 思わず、遥か昔の人類と犬との出会いと、共に歩んで来た、その長い道程に想いを馳せる。犬は我々にとって初めての友人。 ネタばれになりはしないかと迷ったがミステリではないので少し補足しておく。 “三本足”が山の神になりそびれたと書いたが、実は最後に荒ぶる神となる。 一神教的な全知全能の神ではなく、善悪を超越した荒れ狂う自然の化身としての神。 著者の略歴を見ると私と同年生まれである。まさか”三本足”のモデルは大魔神ではあるまいか?そんな訳ないよね。^^; 最初は北林一光の『ファントム・ピークス』と同じネタかと思い、“三本足”の正体が明らかになった時は「そんなアホな!」と呆れたけど、 いやいやどうして知らぬ間に引き込まれました。大傑作!

  • 都会暮らしの人間こそ読むべし!

    「力作」というのが一番ふさわしい感想でしょうか。 環境省のキャリア官僚として南アルプス山麓の関連施設に赴任してきた主人公がその地で出会う人々と自然、そして動物たち。 一見、悠久の時の中で不変とも見える自然の裏で音もなく浮上する破滅の予感。 地元猟師たちに語り継がれる巨グマ”稲妻”を追う主人公たちの前に更なる「荒ぶる神」が襲いかかる。 人が山を狂わせ、そのしっぺ返しを喰らう状況の中で人と野生動物、そして自然との共生を模索する主人公たちが直面したものとは? 主人公をキャリア官僚候補とすることで、まず問題点とそれを取り巻く状況を客観的に描くことに成功しており、読み手にも事の複雑さが伝わってきます。 絶滅が危惧される動物がいる一方で動物たちによる農作物被害も深刻化し「駆除」名目での狩猟すら自由にできなくなった狩猟者たちの不満も高まってゆきます。 その根底には温暖化による気候変動の影響、植林政策の失敗による山林の荒廃、無計画な開発や廃棄物による土壌汚染の影響が見え隠れします。 これだけで十分な内容だと思うのだが過去に起きた惨劇に起因する殺人事件を巡るミステリーや主人公のひとり娘が学校で受ける苛めの問題も絡んできます。 普通に考えれば詰め込み過ぎで消化不良になりそうなものなのだがきちんと着地させている辺りはお見事。 あとがきでも書かれているように長期にわたる綿密な取材と語るべき内容をしっかりと見定めてぶれていないからでしょうね。 ですからボリュームはありますが読みにくくはありませんし、かといって薄っぺらな物語では終わっておらず、実際読んでいる内にいろいろと考えさせられます。 最大の読みどころは荒ぶる神として「人食い」となった巨大なケモノとの対決なのだが、ここはやはり「もののけ姫」を連想させますね。 巨大な山の主を病に罹らせて正気を狂わせて人里へと向かわせたのもやはり人間が原因なのだ。 失われた仲間の命や人間の業を背負った上で愛犬と二人、この獣に対峙する覚悟を決めた主人公が森の奥深くで迫りくる巨大な獣に銃口を向けるクライマックスは鬼気迫るものがあります。 決して派手な作品ではありませんが良質なエンターティメントとしては正に「鉄板」。 おススメです。

  • 自然の驚異と人間の狂気に触れながら力強く生きていく男の物語

    妻を事故で亡くし、10歳の娘と二人になった男が南アルプスの野生鳥獣保存管理センターに赴任され、自然の驚異と人間の狂気に触れながら力強く生きていく物語で読み応えがあった。山が荒れて野生動物が里に下りて農業被害が増える。お腹をすかせた野生動物は田畑の食料を食べるだけでなく人間を襲い人的被害も増えていく。人間はその原因も考えず、野生動物を駆除することを望む。もとを正せば、山が荒れたのは人間の不法投棄や焼却施設建設が原因で、その結果、水質汚染や土壌汚染が広がり野生動物たちを追い詰めていたのだから自業自得であるのだが、それを理解できない人間の様子が本当にリアルに描かれていて考えさせられることが多かった。それ以外にも、野生動物たちとの死闘や、人の死に対する考え方など、本当に読み応えが多く、最後まで飽きずに読めた。

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