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黒牛と妖怪 (新人物文庫 か 1-1)

歴史文学賞

黒牛と妖怪 (新人物文庫 か 1-1)

風野真知雄

明治初期を背景に、妖怪と恐れられた鳥居耀蔵ら歴史上の人物を題材にした時代小説集。時代の転換点に取り残された者たちの意地と滑稽さを、軽快な語りで描く。

時代小説明治短編集

作品情報

『黒牛と妖怪』は、作者の視線と文体が凝縮された一作である。

明治初期を背景に、妖怪と恐れられた鳥居耀蔵ら歴史上の人物を題材にした時代小説集。時代の転換点に取り残された者たちの意地と滑稽さを、軽快な語りで描く。 受賞歴により、作者の代表的な仕事として読み継がれる作品である。

レビュー要約

  • 題材への向き合い方と抑制の利いた構成が評価される一方、静かな展開をじっくり読む作品として受け止められている。

書籍情報

出版社
新人物往来社
発売日
2009-05-11
ページ数
287ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784404037022
ISBN-10
4404037023
価格
7 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

江戸が東京と改まった明治の世。幕府の崩壊で二十三年間の幽囚の身を解かれ、文明開化のすすむ東京に舞いもどった男がいた。かつて幕府の要人として江戸市民から「妖怪」と恐れられた洋風嫌いのその老人が、密かにたくらんだ奇想天外な一件とは……。 歴史文学賞受賞のデビュー作「黒牛と妖怪」、黒船撃退に破天荒な戦法でのりだした長屋住人の騒ぎを描く「新兵衛の攘夷」ほか、「檻の中」「秘伝 阿呆剣」「爺」の五篇を収録。 待望の文庫で初登場!

レビュー

  • "まったり"とした時代小説

    戦国時代から明治初期に掛けての激動の時代を、史実を踏まえた上で、"まったり"と描いた異色の時代短編集。「黒牛と妖怪」と言うタイトルから想像される邪悪と怨念に満ちたイメージとは真逆なユーモラスな作品で、その落差感が心地良い。 「黒牛と妖怪」では、「黒牛=岡蒸気」、「妖怪=鳥居耀蔵」で、要は旧世代(元幕臣)の新時代に対する剥き出しの敵愾心を扱ったものだが、これを耀蔵の孫の嫁"お延"の現代的視点でドライに描いている点が巧み。名探偵コナンを思わせる賢い少年が登場して、"起こり得た"かもしれない大事件を、機知で未然に防ぐ辺りも面白い。「新兵衛の攘夷」は黒船来航を扱ったもの。浪人の新兵衛が住む長屋の住人達の屋形船がドンチャン騒ぎに紛れて黒船に突っ込む寸前、前作と同様、"起こり得た"かもしれない大事件が未遂に終る顛末が楽しい。「檻の中」は座敷牢に閉じ込められた勝子吉が、富クジに係る謎を安楽椅子探偵として解くと言う楽しい趣向。「安吾捕物帖」に言及しているのも微笑ましい。「秘伝 阿呆剣」は、剣技に纏わる話を通して、人生の真の幸せをユーモアたっぷりに描いた佳作。「爺」は信長の堅物の守役、平手政秀の苦渋と色恋沙汰を扱ったものだが、本作の中ではややインパクトが弱いか。 現代的視点で時代小説を描くと言う試みは成功していると思う。特に、作者がユーモアに拘っている点が特徴で、これからも楽しい小説を期待したい。

  • デビュー

    1995年に出た単行本の文庫化。 風野氏のデビュー作。長らく単行本のままであったが、新人物往来社から「新人物文庫」が創刊されたことで、本書も文庫本として読めるようになったのである。 「黒牛と妖怪」、「新兵衛の攘夷」、「檻の中」、「秘伝 阿呆剣」、「爺」の5篇が収められている。いずれも最初期の作品であるが、すでにのちの作風が見え隠れしているところが面白い。 「黒牛と妖怪」は明治初期の鉄道開通にまつわる物語。アイデアが突飛で、また結末が皮肉なところが風野氏らしい。 そのほか、「爺」が面白かった。織田信長の世話役であった平手政秀を描いたものなのだが、ユーモアがあって楽しい。

  • 明るくて開放的な作風

    時代小説の主人公は、 その作者によって造形に特徴が異なります。 耐えて義に生きるのは山本周五郎。 乾いてニヒルな池波正太郎。 さて風野 真知雄です。 この人の描く人間は、 既成概念に囚われず、 明るく開放的。 そこが本作を一貫する魅力になっています。 「黒牛と妖怪」のお延、 「新兵衛の攘夷」の新兵衛、 「檻の中」の勝小吉。 どの主人公もくすっと笑わせます。 文体が大変平易で読みやすいのも、 作者の力量です。 お勧めの文庫本です。

  • 感動...というより、面白い!

    スマートで抑制のきいた文体だと感じた。売れっ子作家となった現在とはチト違う。 今は『愛想のいい文体』て感じかな?←凝った比喩表現とか。無論、悪いことじゃないですけどね。 戯作者を自称する風野氏の原点を知ってほしいと思うのだ。 表題作の他に『勝小吉事件帖』の雛形になった作品と、信長の守役の家老・平手政秀を描いた『爺』、藤沢周平氏の隠し剣シリーズを思わせる『秘伝 阿呆剣』などがある。

  • いい!

    明るく自由奔放な主人公が時代のしがらみにとらわれずに動く様は心地よい。

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