日本の文学賞

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甘い蜜の部屋 (ちくま文庫 も 9-4)

泉鏡花文学賞

甘い蜜の部屋 (ちくま文庫 も 9-4)

森茉莉

『甘い蜜の部屋』は、森茉莉の美意識と幻想性が濃く結晶した長編である。濃密な感覚描写と父性への執着、閉ざされた室内の甘美さが、現実から少し離れた独自の文学空間を作っている。

幻想父性美意識室内

作品情報

甘美で閉ざされた室内に、愛と孤独の幻想が満ちていく。

泉鏡花文学賞の対象作として、現実描写よりも感覚と幻想の密度で読ませる森茉莉文学の到達点に位置づけられる。文庫版で入手でき、作品の退廃的な甘さと孤独の強さが現在も読み継がれている。

書籍情報

出版社
筑摩書房
発売日
1996-12-01
ページ数
544ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784480032034
ISBN-10
4480032037
価格
1430 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

第3回(1975年) 泉鏡花文学賞受賞

レビュー

  • 濃密で妖艶、そして官能的な文章に、むせかえるような気持ちになりました

    濃密で妖艶、官能的な文章でやはり、森茉莉のこの言語感覚は、 すごいなぁと思ってしまいました 夥しい薔薇の芳香に、むせ返ってしまったような気持ちになりました。 それから、モイラが、この種の小説に多い、痩せ型の少女ではないのも、 逆に新鮮でした。 ただ、ストーリーらしき、ストーリーはありません。 簡単にあらすじを説明すると、こんな感じです。 既に幼い頃から、フランス人のピアノ教師を その独特ので強い、芳香のような魅力で惑わせ、 そして己の快・不快の感覚のみで生きている美少女モイラが、 常安(ドミィトリィ)、ピータァ、天上守安ら男性達は、 次々と虜になっていくが、 結局、誰一人として真の意味で彼女の心を手に入れる事はできず、 その中の一人、夫の天上守安は、破滅していく。 そして、モイラは自分に限りなく深い愛を注いでくれる最愛の男性、 父林作の許へと戻る。 まさにモイラが漂わせる、美の世界、そしてどの男性も入り込むことができなかった、 父と娘のあくまで強く揺るぎのない、限りなく恋人のようで、そして絶対的な愛を描いたものです。 やはり、美少年同士の恋愛が絡まない、耽美小説といった感じでしょうか。

  • 父と娘の「愛」

    主人公藻羅(モイラ)の成長に合わせて三部から成り立っています。 幼児期、少女期、青春期の各時代に一貫して書かれているのは、父と娘の「愛」です。でも、この「愛」は、一般的な概念からするとかけ離れたものでしょう。父と娘の「愛」なのですが、それはあたかも「夫婦愛」いやそれ以上かもしれません。 そうした関係に至るまでには、幼児期の教育からして違います。父親の元に娘の信頼感のすべてがあります。大人になっても、その父の胸の中に飛び込む時、モイラは可愛い少女に戻ります。 でも、このモイラは、男を引き付ける能力を天性なものとして持っています。その男たちの屍が彼女の周りに積み重なります。そのあたりの表現は、第二部、第三部で頂点を極め、それは「死」を見るに至ります。 耽美主義と言う言葉がありますが、その言葉さえ超越してしまうような素晴らしい作品です。

  • モイラとパァパの秘密の部屋

    絶対的美少女モイラとモイラを溺愛する父・モイラの魅力に虜になる男達、の物語。 モイラは完璧な美少女なので出会った男達は皆モイラの容貌に惹かれていくありえ ない展開が延々と続く。少女マンガ的世界。現在ではコミュニケーション障害の類 と診断されてしまうようなモイラの異常な性格。人間的内容の全くない、容貌だけ でこんなに人々が惹かれる様は読み進めるうちにその表現の繰り返しとともにいさ さか辟易してしまう。また、この作者のモイラ以外の女性に対す厳しい見方はなん なのだろうか。それにくらべ登場する男達の魅力的なことといったら。このあたり にこの作家の秘密があるのだろう。 〜牟礼家の花壇の、馬丁部屋の向い側にある梅の木が、六月の雨と陽とに暖められ、 青い実は忽ちぎっしりと実って、葉の蔭に二つ、三つと固まったのなぞは、円く実 が入って、護謨風船が二つ擦れ合う時の、軋るような音がしそうに見え、雨曇りの 空の中に、雫をつけたように、綿毛に煙って、輝いていた〜 美しい日本語の文章で綴られるこの作品、もうすこし短ければ輝きも凝縮されように。

  • 耽美の極み

    モイラの幼少期の頃の描写がたまらない。花開く前の危うい美しさ、色気の描写がすごい。ストーリーはそこまで大きな盛り上がりがあるわけではないけど、文章の耽美っぷりが凄まじくて最後まで読み進めることができた。 特に林作のモイラへの愛情の描写が秀逸。極めてプラトニックなのに、こんなに背徳的な表現ができるものなのかと驚いた。

  • 最強のロリータ

    この作品を読んで、それまで耽美小説に持っていた先入観が見事に崩壊してしまった。 この作品の主人公モイラは耽美小説にありがちな、美貌の持ち主あるいは美貌の人を焦がれる、か弱い人物ではない。 異常なほどかわいらしく華奢な容姿でありながら、モイラの内面はおそろしいまでに頑丈である。自分の美貌が、言動が、行動が相手を破滅に追いやったとしても、モイラはまったく動じないし、面白そうにその様子を眺めていることすらある。 義務、道徳、罪悪感から完全に自由の身であるモイラは、自分の好ましいと思うことだけを気の向く時にだけやって過ごすという、現代を生きる私たちにとっては「ありえない」事を日常として生きている。 「21世紀の日本の(平等な)社会」に慣れた人が実際にモイラを見ればかなりの嫌悪感を抱くだろうことは確実である。しかし不思議なことに、この本を読む限りでは間違いなく私たちはモイラの虜になってしまう。モイラを知って破滅していった男たちと同じに。 モイラをはじめとする描写の端々にうつくしさがみなぎっている作者の力は見事というほかはない。 「あとがき」では3人の森茉莉に関する文章が収められており、小説からはうかがい知ることのできない作者の一面を知ることができてこちらも興味深い。

  • ワン・アンド・オンリーの大傑作

    森茉莉が美少女モイラのモデルにしたのは・・・何と「アラビアのロレンス」のピーター・オトゥール! おっさんやん。でも、あの瞳に「魔」を見出した森茉莉の感性はさすがとしかいいようがない。 もちろん、モイラと父の関係の原型は、茉莉自身と父・鴎外でしょう。 ベッドシーンの無い官能小説、という感じでしょうか。(実はちょっとだけあるけど。) この美意識は生半可なものではない。魂をこめて書いたということがひしひしと伝わってきます。 全体的に繊細だが脆弱ではなく、むしろ骨太な心意気が感じられ、そこが好きです。

  • 曇りガラスの向こう側の世界

    閉じた濃厚な世界。肉食の花のような主人公モイラは、その蜜を結局他の誰でもなく父親にしか与えなかった。それは無論作者とその父・鴎外との関係なのでしょう。 他の誰にも描けない、極上の小説。

  • モイラという肉食獣

    父親に溺愛される美少女モイラが次々と男性を不幸に陥れるという筋の物語ですが、愛情を食らうモイラの獣としての自己本位性にただただ驚くばかりの作品でした。 モイラのモダンな暮らしを読むだけでも十分な作品です。

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