日本の文学賞

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棕櫚を燃やす (単行本)

太宰治賞

棕櫚を燃やす (単行本)

野々井透

父の体に何かが棲みついた家族を軸に、姉妹と父の一年を静かに追う。喪失とケアを、温度のある筆致で描く太宰治賞受賞作。

家族喪失ケア静かな恐怖

作品情報

父のからだに、なにかが棲んでいる。

父の体に生じた異変をきっかけに、姉妹と父の暮らしが静かに揺らいでいく。喪失とケアの手触りを丁寧に掬い上げた太宰治賞受賞作。

書籍情報

出版社
筑摩書房
発売日
2023-03-20
ページ数
160ページ
言語
日本語
サイズ
18.8 x 12.8 x 1.3 cm
ISBN-13
9784480805119
ISBN-10
4480805117
価格
1540 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

第38回太宰治賞受賞&第36回三島由紀夫賞候補作 「聖なる家族と呼ぶべき一家の物語」――荒川洋治(現代詩作家) 父のからだに、なにかが棲んでいる――。 三十四歳の春野と、五歳年下の妹・澄香と父は、東京の庭付き一軒家に三人で暮らしている。姉妹は家を出たいとも思わず、職を転々としながら、三人で心地よい世界を築いてきた。そんな折、父に残された時間が一年だと知る……。玄関に脱ぎ捨てられた父の靴下、明け方のドライブ、三人で囲むすき焼き鍋。残された家族の日々は、静かで温かく、そして危うい。 喪失へと向かう家族を描く第38回太宰治賞受賞作と、書き下ろし「らくだの掌」を収録。 「築いても築いても、壊してばかりの私がそうやって壊すことができるのは、戻る場所があったからで、それは父だった。湖のような目をした、さもありなんの父がいつも在る。だのに、父は湖の目をどこかに失くし、冷たい音を発している。面倒だから、悲しいだけにさせてよ、そう思う。」(本文より)

野々井透(ののい・とう):1979年、東京都生まれ。

レビュー

  • ひとは、生きているものより生きていないものに助けられていることもあるのだ

    人の命は、息をしている人には物理学的、医学的、生命体としての 修正や継続は人為によってはできない。ことになっている。その通りである。 日々、衰えていくであろう物的証拠としての肉体としてのみが在るだけ。 「生と死」という、逃れられない表象を、父娘が対話することで具現化している。 彼岸らしき諸処の在ることは誰も感じられるけれども、見ることも着くこともできない。 彼女は彼と在るであろうそこに至るまでの数年間を一緒に過ごしている。 芸術というものがあり、数多の輩が浮世を彷徨いながら それを自然に寄り添いながら、言語を超える表現するのだろうけれども、 そこに踏み入ることのできる対としての男女があるとすれば、 なお、素晴らしいことだと、一筆箋が教えてくれる。 ことさら、両者間の結晶ともいうべき、娘や息子を置き去りにして 目の前から消失したとしたら、 その途中で、残された片方は、 もう一方に守られているということを、 強く実感せざるをえないことなのか? この物語はそこを克明に、悲しみを語らずに淡々と書き綴っていく。 記憶が物語の中心となるのは、私小説では当然のこととしてあるだろう。 フィクションになる起点が、ここにある。 そのことが、ノンフィクションの伝達よりも、真実かもしれない時空を綴り語る。 何気ない日常が、何気のある日常として視覚、聴覚を内包しながら昇華されている。 フィクションを読了後に、野々井透が、物音を起こさず静かに教えてくれる。 真実も変わりはないのだ、同じなのだと!」 「2023夏、夫を亡くした同級生に拙作のメールアート作品への参加をお願いした。 「輸送可能な、みなさまの思い出、言葉、品々、何でも、gallrey まで、お届けくださいませ!」と・・・。 そうすると、この物語の1節が書かれた一筆箋が瓶型透明封筒に2つ折りにして入れられて送られてきた。 「ひとは、生きているものより生きていないものに助けられていることもあるのだ」と。 あまりに近しい出来事の書かれているこの本に何処で遭遇したの?と、問うと、 新聞記事が私を呼んだから、と。 世の中に偶然などなくて、全ての事象が必然である!

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