作品情報
『源氏物語』幻の巻をめぐる消失事件に、紫式部が挑む。
第13回鮎川哲也賞受賞作。東京創元社から『千年の黙 異本源氏物語』として単行本刊行され、のちに創元推理文庫化された。紫式部を探偵役に据え、宮中で起きる二つの消失事件と『源氏物語』の幻の巻をめぐる謎を重ねる。
書籍情報
- 出版社
- 東京創元社
- 発売日
- 2003-10-01
- ページ数
- 317ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784488023782
- ISBN-10
- 4488023789
- 価格
- 2710 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
【第十三回鮎川哲也賞受賞作】 帝ご寵愛の猫、『源氏物語』幻の巻「かかやく日の宮」――二つの消失事件に紫式部が挑む。平安の世に生きる女性たち、そして彼女たちを取り巻く謎とその解決を鮮やかに描き上げた、大型新人による傑作王朝推理絵巻!
レビュー
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今は昔、昔はいま
ルンルン気分で猫と戯れているうちに、ぽつぽつと黒いシミのようなものが浮かんできて、あれあれと思っているうちに灼熱の泥沼に引きずり込まれていきます。この仕掛けがたまりません。 舞台は平安時代ですが、人のあり様は現代の日本の女性の置かれている現実そのものと言っていいのでは。
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式部と道長
源氏物語。コミカライズではかなり有名な「あさきゆめみし」を読んだことがあります。 が、歴史の授業では 内容などにはふれていなかったので コミカライズを読んだだけの自分でも こちらの内容には ついていけたました。 源氏物語の内容を全く知らない方には やはり 退屈というか、、どうかな?とは思います。あと藤原道長や その時代を 少しでも知っていないと 面白いとは思えないかと、そもそもこちらを読む気にはなれないかな。 しかし、式部の道長への「仕返し」というか。 道長は「嫌がらせ」と言ってましたが いつその時がくるかと読み進めていたので、 そのやり口は ちょっと恐ろしいほどでした。 物を書く人間の性質を 垣間見た気がしました。 しかし道長はラストでも まだ生きてました。 少女だった 「あてき」が「岩丸」との恋を成就できたことが この物語で とても輝いてます。 上流の姫君たちは 何かを選ぶということさえできない時代。その時代でも姫君たちの生き様や 強かさが素敵でした。
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おもしろい
この本も、長いことお気に入りに登録しっぱなしの本でした。気楽に読めそうな本だと思い購入しました。正解でした。ネコ好きな可愛い女の子が、助けてくれた男の子を好きになる。どこが源氏物語なの?聡明な女主人が、使用人あてき といっしょに事件を解決するお話です。1冊の本の中に、童女のあてき・結婚したあてき・夫に死別し出家したあてき がでてきます。私にとっては、感慨深いです。
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平安京で起こる珍事件&怪事件にからめて語られる『源氏物語』成立の経緯
鮎川哲也賞受賞の平安京ミステリ。 紫式部を主人公に据えて、平安京で起こる珍事件&怪事件にからめて語られる『源氏物語』成立の経緯。 第一部は猫の消失、第二部の前半は人間消失。平安京で「日常の謎」をやろうという試みは、読者に馴染みの薄い時代背景を描くには必要だったのかもしれませんが、長いわ、冗漫だわ、ボリュームを支えるにはどうしても事件が迫力不足。ところがどっこい、俄然面白くなってくるのは第二部の後半に入り、『源氏物語』の中の第二巻「かかやく日の宮」の消失が明らかになってから。紫式部とワトソン役の女房による「消えた一帖」の追及が凄い迫力で描かれており、歴史ミステリとしても一級品であります。 中宮彰子、藤原実資、承香殿女御(元子)といった脇役のチョイスも素晴らしい。時代考証はおおむね正確なのですが、ただ紫式部の夫の藤原宣孝だけはイメージを優先させたのか、実説よりもだいぶ若くなっているのが御愛嬌。 前半星三つ、後半星五つで、平均して星四つといったところ。
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千年のむかしの「物語る女」の覚悟・物語を愛することの意味
『源氏物語』を執筆中の紫式部が、宮中の謎をとく連作です。 第一部「上にさぶらふ御猫」は定子中宮さまの猫が行方不明になった背景を探るもので、当時の風習や政治権力のバランスなどを縫いながらの謎解きで、あてきという女童の視線が、物語を生き生きさせています。童子岩丸とのほのかな初恋も含めて、この部分は文体も、荻原規子さんの古代ファンタジーの風合いを感じます。 けれど小説として凄いと思ったのは、つづく「かかやく日の宮」の部分です。源氏物語中のこのタイトルの巻が行方不明になった(実際に現存していない)、という事件ですが、彰子中宮の入内にまつわる世の中の政治のからくりの非情さとともに、それに押しつぶされまいと、作家の自覚を固める式部の人間像が心を打ちます。物語が宮中で人気を博し、手写本がつぎつぎと出回ってゆく、現代とは全くちがった文学事情の中で、式部は「物語が愛される、そして伝わってゆく(あるいは改変される)とはどういうことか」を思い、慄然とするとともに、物語に寄せる人々の思いをあだやおろそかにうけとめてはいけない、と考えます。 さらに、物語とは耳障りよく愛されるべきか、それともそれに(政治的な思惑ふくめ)逆らってまで真実を書き留めたいのか、とも。 そうして最後の第三部「雲隠」では、式部のこの覚悟が、「かかやく日の宮」の巻を紛失せしめた犯人にみごとなしっぺ返しを・・・ しかも、これで終わりかと思うと、最後にさらにどんでん返しがあり、式部の幼い娘が知らずにはたした役割など伏線が鮮やかに回収されます。 これはあくまでミステリなのですが、千年ののちまで伝わってきた『源氏物語』への大きな大きなオマージュと思い入れで幕を閉じます。深い余韻が残りました。 『源氏物語』の異本と銘打つだけあって、『源氏』を好きな人には、当時の宮中の読者の熱い反応などこたえられない楽しみがありますし、式部によりそって、物語について深く考えてゆく、そうした物語論としての楽しみも大きいです。 (解説にも『源氏物語』はいまでこそアカデミックな作品になっているが、当時の宮中の女たちにもてはやされた作り物語で、同人誌のようなものでもあった、という言葉がありますが、その側面にも切り込んでくれたミステリとして、興趣は尽きません。)
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仕立て誤りだと思います。
期待していたほどの出来ではなかった。とくに第一部の猫騒動は冗漫で読むだけ損だった。第二部の消失した巻の行方を探す話をもっと膨らませて、長編に仕立てたほうが面白く仕上がったと思われる。デビュー作ということなので、その分おまけしてこの評価です。
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面白い!
最近の時代物は舞台こそ時代がかっていても 中身が薄いものが多いが、本作は謎解きとしても 人の心の深い動きを描いても、一流。 ゼヒ他の作品も読みたいと思った。
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大きな謎
これが処女作ですか。見事な出来栄えですね。というのはこの3篇を通して一つの大きな謎が呈示され、あるひとつのストーリーがさまざまな登場人物の描写と時代の経過を伴って見事に完結しているからです。 小さなエピソードはすべて原作(紫式部日記や枕草子)から持ってきたものです。猫のエピソードもそうです。一瞬、これはいわゆる猫本かなとの印象も与えますが、猫は残念なことにすぐに背景に退いていきます。そして前面に出てくるのが、式部の創作活動を取り囲む次代の風景です。式部とあてぎというホームズ・ワトソンのパターンは平凡なものです。そして「上にさぶらう御猫」の謎とき自体も必ずしも目新しいものではありません。むしろこの舞台と雰囲気の描写が見事なのです。 作品は、時系列的に3つに分かれます。時代は15年以上にわたって流れていきます。この3篇の中でも2番目の「かがやく日の光」が見事な出来栄えです。ここで呈示される謎はスケールの大きなものです。そしてそこにかかわってくる人物たちの意外な素顔も見事な解釈です。最後の3篇目では、2編目の犯人に対する意趣返しが中心となります。最後は式部が亡くなってしまった後の時代が舞台となります。でもこれじゃ、続編が書けないぜ。
関連する文学賞
- 鮎川哲也賞 第13回(2003年) ・受賞