作品情報
日本はなぜ自由な社会でありえたのかを、歴史と制度から問い直す。
原田泰による日本論。自由と民主主義を、抽象的理念ではなく経済発展や戦争、平和、教育に関わる実践的な原則として扱う。
レビュー要約
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論点が明快で、自由を軸に日本近現代を読み直す姿勢が評価されている。政策論としては賛否が分かれるが、問題提起の広さが特徴。
書籍情報
- 出版社
- 日本経済新聞出版
- 発売日
- 2007-04-01
- ページ数
- 317ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784532352585
- ISBN-10
- 4532352584
- 価格
- 58 JPY
- カテゴリ
- 本/社会・政治/社会学/社会学概論
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レビュー
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自由な経済活動を重視した日本の歴史
著者は日本の歴史において、 庶民の自由を許容したからこそ繁栄したのだと主張する。 まず江戸時代には、庶民にもそれなりの財産の処分が許され、 それによって浮世絵や歌舞伎などの庶民文化が花開いた。 その後、明治の元勲たちは洋行によって、 欧米の強さの秘密は、人々の自由闊達な経済活動にあったと考えた。 初期になされた官営の模範工場は成功しなかったが、 それらが民間に引き渡され、急速に日本は近代化していった。 このペースを壊してしまったのが、30年代の恐慌をみて資本主義の行き詰まり、 あるいは資本家の退廃の結果だと考えた、共産主義的な軍部の政権掌握である。 これによって、言論の自由も経済活動の自由も奪われた日本は全面戦争に突入し、 結果として敗戦した。 その後の傾斜生産方式などの政策は奏功したとはいえないが、 再び自由経済がよみがえったとき、日本はヨーロッパに追い付いたのである。 そしてそれは自由貿易による経済活動の進展によるものだから、 今後もさらに国内産業保護に固執せず、世界に開かれた国としていけば、 今後の人口減少社会でも、一人あたりGDPで見れば、それなりの 成長を維持してゆくことができ、日本の素晴らしい文化はまだまだ発展するだろう。 どいうまとめが、全体の主張だと言っていいだろう。 私が驚いたのは、筆者が非常に詳細に、関東軍の経済運営の非効率や 軍の統制経済のバカバカしさの資料に検討を加えていることである。 こういったことは自由を重視する人間はむしろ自明すぎて論証する価値がない というように考えがちだが、実際の資料をみると、確かに大きな説得力があるものである。 戦前の日本軍は、いまでいうなら武闘派の共産主義者といった感があり、 自分たちの行為が全体経済に与える影響など、素晴らしいに決まっているという輩なのだ。 著者の穏健な自由礼賛論は、その博識とあいまって読んでいてすがすがしい。 今後ともすばらしい作品を期待したい。
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目的としての自由
日本は何故自身の得にはならない戦争に突き進んでいったのか−−本書では、その理由を軍のインセンティブ・システムから読み解く。高橋財政によって日本は昭和恐慌を克服したが、社会には、過剰人口問題など「日本資本主義の行き詰まり論」が蔓延していた。実際には、経済は全体として既に人手不足の状況にあったにも拘わらず、農村出身者の多い軍人の立身出世志向から軍は統制を失い、中国戦線を拡大していく。日本の軍国主義は共産主義との親和性を持っており、戦争の拡大を許した背景には、自由と民主主義の弱さがあったとみる。つまり、(民主主義の好戦性には限度があり)自由と民主主義が一体となることで平和は実現される−− 著者は「多数が少数から奪うことのできないものがあるという考えが民主主義には必要」であるとし、また「自由な民主政体であれば、必ず個人の権利を保障する法が生まれ(中略)、多数の国家が相互に独立を保ちながら交易によって結ばれあうという事態が学問と芸術を発展させる」というヒュームの言葉を引用する。明治政府は、(1)経済活動の自由化、(2)私的所有権制度の確立、(3)開国と貿易の自由化、を行い、そこから日本の大きな発展は始まる。高度経済成長も経済的自由によってもたらされたのであり、官僚主導の規制や計画によってもたらされたわけではない(それらは、むしろ1970年代以降の経済の停滞をもたらしている)。自由という原則が日本においていかに重要であったかが歴史を読み解くことによって描き出される。
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「失われた十数年」においても「失われていないもの」
日本の繁栄を支えてきたものは何だったのだろうか。本書はその問いに対する一つの答えを与えているように思います。射程の広い歴史的視点を交えつつ、また人口減少やグローバリズムについてといった現下進みつつある構造的な潮流といったものについても考察が加えられています。 今後の日本経済および社会を考えるにあたって、自由と民主主義の重要性を認識しつつ、「失われたもの」ではなく「今ある利点」から何を行っていくべきなのか、個人的には日本の良さと今後の繁栄の拠り所が何かを探るヒントが本書にあるのではないかと思います。
関連する文学賞
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