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【第18回中央公論文芸賞受賞】パシヨン

中央公論文芸賞

【第18回中央公論文芸賞受賞】パシヨン

川越宗一

川越宗一の『パシヨン』。PHP研究所から刊行された単独書籍として確認でき、ISBN13 9784569854861 を得た。

歴史小説キリシタン単行本

作品情報

受難の時代を描く歴史小説。

PHP研究所の刊行物として書誌情報と ISBN を確認できた。

書籍情報

出版社
PHP研究所
発売日
2023-06-24
ページ数
448ページ
言語
日本語
サイズ
19.4 x 13.4 x 3.2 cm
ISBN-13
9784569854861
ISBN-10
4569854869
価格
1600 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

第18回中央公論文芸賞受賞! 受難(パシヨン)を越えて、求めよ、自由を――。 『熱源』で直木賞を受賞した著者による、新たな到達点! 禁教下における“最後の日本人司祭”となった小西マンショの人生を軸に、異文化同士の出会いと摩擦、争いの中での“希望”を描いた圧巻の歴史小説。 キリシタン大名・小西行長の孫で、対馬藩主・宗義智の子として生まれた彦七(のちの小西マンショ)の運命は、関ヶ原の戦さによって大きく変わった。離縁された母・マリヤとともに彦七は長崎へ。キリシタンへの迫害から逃れてきた、小西家の遺臣らの世話になりながら成長していく彦七だったが、彼には小西家再興の重圧がのしかかっていく。キリスト教が禁じられ、信徒たちの不安が高まるなか、彦七はある重大な決断を下すのだが……。 “受難の時代”を生きる者たちの魂の叫びが刻まれた、著者渾身の長編小説。 ◎目次 序章 主の孫 第一章 天国の門 第二章 出日本 第三章 求めよ 第四章 走る群雲 第五章 受難(パシヨン) 終章 世の終わりまで

1978年、鹿児島県生まれ、大阪府出身。龍谷大学文学部史学科中退。2018年、『天地に燦たり』で第25回松本清張賞を受賞しデビュー。19年刊行の『熱源』で第9回本屋が選ぶ時代小説大賞、第162回直木賞を受賞。その他の著書に、『海神の子』『見果てぬ王道』(以上、文藝春秋)がある。

レビュー

  • 司牧に生きる神父と、公儀に身を捧げる井上筑後守

    ペドロ岐部と同世代で、やはりローマで学んで司祭になって迫害下の日本に戻るマンショ小西。 キリシタン大名・小西行長が関ヶ原で敗れ六条河原で石田三成らとともに斬られた頃、領地の肥後宇土城は隣領加藤清正の攻撃に抵抗中。 小西行長の娘マリアは、対馬領主宗義智に離縁され、赤子を連れて教会の多い長崎へ移り住みます。 そして。。。 幕府の迫害下で生きる信仰者、主君を失った家臣たちの行く末、さまざまな人々が現れます。 遠藤周作『沈黙』とほぼ同じ時代、状況になりますが、神の沈黙はデフォとして司牧と祈りに生きる司祭と、公儀の沈黙に無意識に傷ついて行く井上筑後守様の人生。 「こんちりさんのりやく(利益)」(本来は司祭に赦しの秘蹟を受けるものだが、非常時には本人単独でも真の痛悔の祈りを捧げれば神に赦される、と、迫害初期に印刷物配布された教え。これを得た地域のキリシタンは表面上転んでもあとで祈れば赦されるという信仰があったので、幕末まで信仰を繋ぎ得たといいます)が作中、効果的に使われています。

  • 真の主人公は?

    これまで「キリシタンもの」は少なからず読んできました。 遠藤周作の数点の他、 加賀乙彦『高山右近』『殉教者』(ペトロ岐部)、 村木嵐『マルガリータ』 など。 これらは信仰者の立場から描いたもの。 安部龍太郎『レオン氏郷』(蒲生氏郷)『宗麟の海』、 帚木蓬生『守教』、 飯嶋和一『出星前夜』、 海老沢泰久『青い空』 などは、そうではない立場から書かれたもの。 いずれもおもしろいものでした。 ノンフィクションながら、星野博美『みんな彗星を見ていた』も秀逸でした。 本作との関連では、谷真介『江戸のキリシタン屋敷』を思い出しました。 本書は信仰者ではない立場から書かれています。 一方の軸は小西行長の孫、彦七マンショ。小西家再興ではなく、神父の道を歩みます。 他方の軸は井上政重。キリシタン奉行となります。 やがてこの二人が相対する終盤が山場です。 そして、この小説の主人公は、実は井上政重なのだな、と感じました。 全体的にキリシタンの信仰心についての記述が希薄で、 それはキリシタンものとしては大きな欠陥でしょう。 たとえば島原の乱は、苛政に耐えかねて立ち上がったという説明になっていますが、 マンショが巡回して励ました、迫害に屈しないキリシタンの存在理由が曖昧のままです。 一方、キリシタンを取り締まり、撲滅に心血を注ぐ井上政重の心中は詳述されます。 自らの正義に邁進し、出世街道を上りながらも、底なしの虚しさを抱えている井上。 その姿は、映画『レ・ミゼラブル』のジャベール警部に重なる魅力を放ちます。 キリシタン信仰の記述の希薄さを補って余りあるほどです。 そして拷問されながらマンショが井上に放つ宣言も圧巻で、 冷静に考えればリアリティに欠けるものの 「そう来たか!」 興奮を覚えました。 このあたりは、著者の『熱源』に通じる「熱」に痺れました。 と、キリシタンものとして、圧政者をここまで魅力的に描いた作品は初めてに思えます。 惜しむらくは、余分に思える部分が多いこと。 もっと上記の二人に絞って描いた方が、締まったストーリーになったのではないか、と感じました。

  • 世界的な視点を持った初の歴史小説

    キリシタンをテーマにした歴史小説は少ない。遠藤周作による「沈黙」はその筆頭かもしれないが、宗教的なテーマがあるため、エンターテインメントとしては重たい。また戦国時代末期から江戸時代初期にかけて、日本にも多くのキリシタンがいたことは周知のとおりだが、一般読者が読めるものは少ないように思う。 迫害を受けた教会には受難を伝える使命があるが、やはり護教的な視点であることは避けられない。 一方、史実のみをとらえようとする書物もいくつかあるが、面白みに欠ける。 その点、パションには読んでいて引き込まれる娯楽性と悲惨な迫害が同居している。普通の読者が読んでも飽きることはないだろう。また、鎖国へと突き進んでいく江戸幕府が最後にヨーロッパやキリスト教と熱い関係があったことを小説の舞台としたことは、この作品の世界的な歴史の中を漂流している思いを抱かせ感動する。映画になっても面白いと思う。 史実を丹念に追っている著書として「島原の乱」(神田氏里著)がある。平行して読むと、それはそれで面白いだろう。

  • 小西マンショと井上政重

    小西行長の孫、小西マンショを主役にキリシタン取り締まりの井上筑後の守政重がサブキャラクターで話は進行するが、ペトロ岐部渇水や島原の乱の益田父子なども登場し盛りだくさん。特に井上政重について貧乏旗本時代から家光側近となり、戦のない安定政権を樹立しようとする過程が詳しく描かれ興味深かった。

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