アドリブ
イタリアの町を舞台に、音楽を続ける少年の選択を描く青春小説。好きなことと現実の折り合いを問う。
作品情報
才能だけでは進めない音楽の世界で、少年が自分の進む道を選び取る。
あすなろ書房刊。第60回日本児童文学者協会賞受賞作で、少年の成長を音楽を通して描く。
書籍情報
- 出版社
- あすなろ書房
- 発売日
- 2019-10-25
- ページ数
- 240ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.5 x 2 x 19.5 cm
- ISBN-13
- 9784751529423
- ISBN-10
- 4751529420
- 価格
- 1540 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
第60回日本児童文学者協会賞・第6回日本児童ペン賞少年小説賞受賞、厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に認定! 悩みながら成長していく少年を描いた青春音楽小説。 イタリア、トスカーナの小さな町に暮らす少年、ユージ。 フルートとの電撃的な出会いから5年、 ユージは岐路に立たされていた。 本気でめざしても、プロになれるのはひと握り。 クラシック音楽界のきびしさを目の当たりにした、15歳のユージの決断とは……?
レビュー
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児童文学の金字塔
イタリア・トスカーナ地方の美しい自然の中で、日本の少年が、数々の試練を乗り越え、フルート奏者として成長する姿を描く。 美しくて、温かい著者の筆致に感動。中高生をはじめ、多くの方々に読んでもらいたい。
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アドリブとは勘所
物語を読む、観る悦びはいくつもあろうけれど、そのひとつに、見知らぬ景色を垣間見ることのかなうことにあるのではないか。著者のものは『一○五度』もであったし、本著からもまた秀でてけざやかに未踏の景色へと導かれる。かつ、人の変化(成長とも言いかねる箇所をもふくむ)に対する敏感さも見逃せない。もとより芳しくない謂いを含んでの。こういう部分を描ける、着眼できるところが著者の凄み、と私は思う。イタリア、トスカーナの小さな町に暮らす少年、ユージ。 5年前クラシックコンサートで聴いたフルートの音色に魅せられ、フルートを習いはじめる。アドリブとは彼の好きな言葉で、音楽はもとより、生き方、人としての有り様の勘どころでもあるだろう。ユージは引っ込み思案というのか控えめでイライラするくらいだが、本番につよく、実は卓越した才能を持っている。かつ、社交的で明朗闊達であれば、リアリティーに欠けるし、面白みもなかったかもしれない。また、ウジウジしたところもまた、才能といえるのかもしれず。同期の天才サンドロに、闇がないと指摘するが、裏を返せばユージには闇があるということになる。サンドロもなんだかんだ言って良い子なわけだが。ユージはこの後どうなるのだろうか。どかんと挫折を経験しそうで、それを乗り越え、さらに大きくなりそうな気のされる。サンドロから、おまえは運がいい、と逆に指摘され、それはつまる所、人望ということだろうか。故に安心のかなうわけで。
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フルートのコンサートに行きたくなった
深いテーマを、シンプルに美しく伝える作者。 この本もまた、面目躍如というか、素晴らしい力作だった。 『アドリブ』とは、生き方のこと。 子どもたちの成長を願うと、大人は心配のあまり、 あれこれ与えたり、アドバイスしたり、レールにのせようとするかもしれない。 その結果、子どもたちは、自らを追い詰めたり、思考停止したり、 自己評価が低くなって、いびつになってしまうかもしれない。 うまくいく方がきっと珍しいし、自分で考え選んだものでなければ、やがて行き詰まるだろう。 そんな子どもたちに、生き方のひとつを、作者は音楽に重ねて伝える。 音楽の楽しさが、生きる楽しさと重なる。 美しさの追求が、生き方の探求と重なる。 とても素晴らしい説得力というか、伝え方です。 舞台はイタリア。主人公はイタリア育ちの日本人。 重層的な物語が、とても面白い。リアリティ抜群の、最高の読み応えです。
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競争とプレッシャーの世界に身を置きながら、音楽の楽しさに気づき、本気で立ち向かう覚悟を得る少年と、温かく支える周囲の人たちの姿を描いた物語
5年前クラシックコンサートで聴いたフルートの音色に魅せられたユージは、未経験ながらフランキジャーナ音楽院の入学試験に合格し、普通の学校との二重生活をしながら練習に励んでいた。しかし、常に、このままで本当にプロのフルーティストになれるのかという不安、より良い楽器の購入やより良い指導者の合宿参加という経済的な問題、どんどん難しくなる学校の勉強とフルート練習との時間配分に悩まされていた彼は、念願の第一オーケストラに選ばれてもあまり喜べず、音楽学校の課題を「こなす」自分に気づく。なんのために音楽をやっているのかわからなくなってしまった彼は、先輩の厚意から参加できることになった有名奏者の合宿で、音楽の楽しみを再発見する。 競争とプレッシャーの世界に身を置きながら、音楽の楽しさに気づき、本気で立ち向かう覚悟を得る少年と、温かく支える周囲の人たちの姿を描いた物語。 *******ここからはネタバレ******* 最初は大好きなフルートで演奏することがただ喜びだったのに、厳しい世界に長く身を置きすぎて、本当の望みがわからなくなってしまう、芸術の世界「あるある」です。 もっとお金があれば、良い楽器を手に入れることも、良い先生に師事することも、失敗したときの将来の心配なんかせずに音楽の道を追求することもできるのに、と思う気持ちも痛いほど伝わる中、学友たちが、貧富の差や音楽への向かい方の違いがあって、それぞれいい味を出していますね。 こんな胃が痛くなるような世界にあって、良い大人に囲まれているのは救いです。彼の指導者サンティーニ先生は、指導力も人間的にも素晴らしいし、合宿の先生マエストロ・ビーニもとても魅力的。 お母さんも、経済的にはしんどいけれど、人間的には普通の良いお母さんだし、職場の方々もとても温かい。 音楽をやっていて人生で役に立つことは、単にその道で成功することだけじゃない。「自分の限界を知る。そして、それを超える。そのくりかえしだから」というサンティーニ先生の言葉が、この物語の要でしょう。 お店のパーティのために準備するユージは、内輪のパーティだからとおろそかにせず、きちんと準備して感動させていた。これが彼が「超えた」ところなんでしょうね。 文章は平易ですし、刺激的な表現も出てきません。高学年から読めるます。音楽が好きな子なら、更に楽しめると思います。