作品情報
行け広野へとを手がかりに、作者の視線と物語の核へ近づいていく一作です。
服部真里子の「行け広野へと」について、NDL Searchなどの書誌情報を確認し、単行本または書籍として確認できる識別子を優先して整理しました。作品紹介は、賞の受賞作として読まれる際の入口になるよう、タイトルから伝わる主題性と読後の余韻を中心にまとめています。
書籍情報
- 出版社
- 本阿弥書店
- 発売日
- 2014-10-01
- ページ数
- 171ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784776811138
- ISBN-10
- 4776811138
- 価格
- 2200 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
Amazon.co.jp: 行け広野へと: 歌集 (ホンアミレーベル 11) : 服部 真里子: 本
レビュー
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ぬきがき
#服部真里子 #短歌 冬の終わりの君のきれいな無表情屋外プールを見下ろしている p8 雨の昼わたしを訪ねる人のいてうつむきがちなハンカチ落とし コンドルがどうして好きだったんだろうテトラポッドを湿らせる雨 p9 はつなつの光よ蝶の飲む水にあふれかえって苦しんでいる p16 湖の近くに家があると言うなるべく嘘に聞こえるように p17 諍いをそれとなく避け出かければ貴和製作所に降る天気雨 p19 広野(こうや)へと降りて私もまた広野滑走路には風が止まない p56
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湖からの歌集
【レビュア選5首】 湖の近くに家があると言うなるべく嘘に聞こえるように 雪は花に喩えられつつ降るものを花とは花のくずれる速度 どの町にも海抜がありわたくしが選ばずに来たすべてのものよ ひとごろしの道具のように立っている冬の噴水 冬の恋人 感情を問えばわずかにうつむいてこの湖の深さなど言う 第55回短歌研究新人賞 次席 「行け広野へと」 第24回歌壇賞 受賞 「湖と引力」 これらからの作品も収録された 歌人の第一歌集 湖のような蒼く冷たいストイシズム 父へ、そして父とともに眼差す温かい橙 暴力への感受性の高い歌人は 希望を感情の深みへと届ける言葉に生きる
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選歌が厳しすぎる
目当てにしていた歌壇賞受賞作「湖と引力」30首が、たった19首しか載っていない。作者が削った歌をここに書くのはフェアじゃないかもしれないが、 その人の耳ばかり見ていた季節つがいの獣のような両耳 待ち合わせのごくありふれた光景をぼくたちもまた 晩夏の光 淡水にかかる引力僕たちはなつかしい名で呼ばれているね (「歌壇2013年2月号」より) などの佳作がカットされたことを悲しく思った。うつくしい物語性のある一連だったのが、ぶつ切り感が否めない。それから気になったのは、 春に眠れば春に別れてそれきりの友達みんな手を振っている 蔦の葉は重なりあって夏という夏が塀からなだれていたり 冬晴れのひと日をほしいままにするトランペットは冬の権力 などの「春」「夏」「秋」「冬」を読みこんだ作品がことのほか多かったこと。彼女の歌には季節感がある。それは美点だ。ただ、あまりに頻繁に直接的に「秋のもっともさびしき箇所に」「冬の噴水 冬の恋人」「出かけてゆくのか春へ」とやるのは、いささか表現手段として安易に思えた。それでも実力のある作者なので、今後も質の高い作品を安定して送りだしてくれることを期待している。最後に歌集中の好きな歌を挙げてレビューを終わりたい。 前髪へ縦にはさみを入れるときはるかな針葉樹林の翳り 音もなく道に降る雪眼窩とは神の親指の痕だというね 行くあてはないよあなたの手をとって夜更けの浄水場を思えり 光にも質量があり一輪車ゆっくりあなたのほうへ倒れる 印字のうすい手紙とどいて中国の映画の予告編のような日 イヌタデの花かぜまかせ僕たちは寄るとさわると笑ってばかり 地方都市ひとつを焼きつくすほどのカンナを買って帰り来る姉 どこをほっつき歩いているのかあのばかは虹のかたちのあいつの歯形 泳ぐには少し早いね真っ白な切手を売って暮らしていたい 初雪は薄荷の匂いをさせていてわたしの髪にふれるのは誰
関連する文学賞
- 現代歌人協会賞 第59回(2015年) ・受賞
- 日本歌人クラブ新人賞 第21回(2015年) ・受賞