日本の文学賞

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動物の声、他者の声ー日本戦後文学の倫理

芸術選奨文部科学大臣新人賞

動物の声、他者の声ー日本戦後文学の倫理

村上 克尚(著)

武田泰淳、大江健三郎、小島信夫の戦後文学を、動物表象と他者への倫理という視点から読み直す評論。人間性や主体性の回復という戦後思想の定型を疑い、動物とみなされる存在への暴力を通して、文学がなお抱える倫理的な問いを掘り起こす。

戦後文学動物表象他者倫理主体性批判暴力の記憶

作品情報

戦後文学に響く動物の声から、人間中心の倫理を問い直す。

新曜社刊。戦後文学における「動物」の表象を手がかりに、武田泰淳、大江健三郎、小島信夫の作品を読み解く。出版社公式ページと東京大学BiblioPlazaで、ISBN、四六判、394ページ、2017年9月25日刊行、電子版の存在を確認した。

レビュー要約

  • 戦後文学の定説を、動物という切り口から組み替える視野の広さが評価されている。対象作品を丁寧に読み込みつつ、暴力や共同体の問題を現在の読者に届く問いとして立ち上げる点が強い。

書籍情報

出版社
新曜社
発売日
2017-09-25
ページ数
392ページ
言語
日本語
サイズ
13 x 2.9 x 19 cm
ISBN-13
9784788515376
ISBN-10
4788515377
価格
4070 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

人間性=主体性の回復をめざした日本戦後文学だが,そこに今次大戦の根本原因があるのだとしたら? 武田泰淳・大江健三郎・小島信夫などの作品に現われた「動物」の表象を手がかりに,戦後文学の陥穽を衝き,文学・共同体の再生を企図する,気鋭の力作。

レビュー

  • 説得力無し

    説得力が無く、途中で読むのをやめてしまいました。残念な本でした。

  • 動物論の先駆にして並々ならぬ労作

    (追記 3/10/2017) 平成29年度・芸術選奨新人賞受賞作。 文化庁のホームページには贈賞理由として、「その発想の斬新さと分析の鋭さが高く評価された。主権=主体の論理の暴力性を深く認識するのみならず,他者への倫理的応答を探るその手法は,従来の近代的主体を巡る議論の地平を大きく超え,日本文学研究の未来に光を当てるものと言ってよいだろう」とある。「圧倒的な支持を集めて選考された」そうである。哲学的な思索をとりいれ、時代性をわきににらみながら小説の細部に亘る分析をしている本書は、一見難解で「一般書」にはなりがたいのかもしれないが、じつはそれほど難しいことは言っていない。どこまでも小説の細部を読もうという人には本当にお薦めの本。 ---- エコクリティシズムから派生した動物論(アニマル・スタディーズ)は近年日本でも批評の一つのトレンドとなってきた。ただし、そうした動物論はどちらかといえば、動物の抑圧性に注目した分析や議論が圧倒的に多い気がする。本著もその例外ではない。しかしながら、本著はそうした動物の抑圧性の表象にとどまらず、後半にいたると、動物が拓く〈生〉の可能性の表象へと議論を展開している。ここで扱われる武田泰淳、大江健三郎、小島信夫は、筆者が述べているように従来の戦後文学史では異なるカテゴリーに収められてきた作家たちだが、彼らに共通する〈戦後〉なるものへの意識と動物という存在への注目を抽出していく手際は見事と言わざるを得ない。とくに分析の方法において、一つの視点から大ナタを振るい、強引に論を展開するアバウトなやり方ではなく、小説表現を微に入り細を穿ち分析している点は、一般向けの評論とは言い難い部分も否めぬが、しかし日本の批評界や文学研究における動物論という方法論の今後を提示するうえで意義あることは、強調してもし過ぎるということはないだろう。本著が扱う作品には『別れる理由』など、読むだけでも大変な大長篇も含まれるけれども、この機会にそうした作品も読んでみたくなった。 【目次】 はじめに 序 章 なぜ動物なのか? 第一部 武田泰淳――国家の戦争と動物 第一章 「審判」――「自覚」の特権性を問う 1 『司馬遷』と『世界史の哲学』 2 複数の声のフォーラム 3 記録者の特権性と動物の主題 4 「罪の自覚」というレトリック 結論 第二章 『風媒花』――抵抗の複数性を求めて 1 竹内好の国民文学論 2 外部への架橋 3 「混血」としての主体 4 全知の語りへの抵抗 結論 第三章 「ひかりごけ」――「限界状況」の仮構性 1 人間としての倨傲 2 人肉食をめぐって 3 「ひかりごけ」の構造 4 国家と法-外なもの 結論 第二部 大江健三郎――動物を殺害する人間 第四章 「奇妙な仕事」――動物とファシズム 1 先行批評の整理 2 同時代状況から 3 犬殺しの強制収容所 4 アレゴリーから変身へ 結論 第五章 「飼育」――言葉を奪われた動物 1 動物小説としての「飼育」 2 江藤淳の近代主義批評 3 三島由紀夫の反近代主義批評 4 「飼育」の新たな読みへ 結論 第六章 「セヴンティーン」――ファシズムに抵抗する語り 1 「セヴンティーン」の位置 2 自意識の語りとねじれ 3 人間・動物・獣 4 《人間》の問い直しへ 結論 第三部 小島信夫――家庭を攪乱する動物 第七章 「馬」――戦後家庭の失調 1 初期小島作品の方法 2 戦後の家庭機械 3 馬と家庭の失調 4 「馬」の政治性 結論 第八章 『墓碑銘』――軍事化の道程 1 日本人になること 2 軍隊と動物 3 軍隊と家庭 4 軍事化を攪乱する 結論 第九章 『抱擁家族』――クィア・ファミリーの誘惑 1 『成熟と喪失』の背景 2 クィア・ファミリーの誘惑 3 軍事化とその亀裂 4 歓待と動物的他者 結論 第四部 動物との共生へ 第十章 『富士』――狂気と動物 1 動物と精神障害者 2 「治療」というイデオロギー 3 精神障害者のアイデンティティ闘争 4 治療から分有へ 結論 第十一章 『万延元年のフットボール』――傍らに寄り添う動物 1 主体の解体の先で出会うもの 2 鷹とネズミの構造的対立 3 傷つきやすさと赦し 4 沈黙の叫びを翻訳する 結論 第十二章 『別れる理由』――馬になる小説 1 代償行為としての姦通 2 トロヤ戦争を解体する 3 「馬」の再演 結論 終 章 非対称的な倫理 1 戦後文学と動物 2 動物への暴力を乗り越えるために 3 今後の展望

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