芸術選奨文部科学大臣新人賞 げいじゅつせんしょうもんぶかがくだいじんしんじんしょう
第68回(2018年)
受賞者
11名詩森ろばが作・演出した舞台作品。生理用品メーカーの開発室を舞台に、新商品開発に携わる女性たちが、身体、働き方、性差、マイノリティーをめぐる問題と向き合う。綿密な取材に基づき、日用品の開発現場から社会の構造を照らす群像劇として構成されている。
生理用品を作る会議室から、女性たちの人生と社会の偏りが見えてくる。
寺山修司の長編小説を原作に、岸善幸監督が現代の新宿へ置き換えて再構築した映画作品。菅田将暉が演じる新次と、ヤン・イクチュンが演じるバリカンが、ボクシングを通じて孤独と暴力、友情と愛に向き合う。
ネオンの荒野で、孤独な二人が拳を通じて自分の空白を埋めようとする。
サントリー芸術財団が主催する公開選考形式の作曲賞演奏会。第27回では候補作品の演奏と公開選考が行われ、杉山洋一が指揮を担当した。現代音楽の新作を聴衆の前で提示し、作品の将来性を審査する場として位置づけられる。
候補作品の演奏と公開選考が一体となった、現代音楽のための審査の場。
新国立劇場バレエ団によるローラン・プティ版『コッペリア』。福岡雄大はフランツ役で出演し、洒脱さと役柄理解を通じて舞台成果を高めたと評価された。古典的な人形譚を、現代的な愛と人生の物語として見せるバレエ公演である。
ローラン・プティの洒落た演出の中で、フランツ役の軽やかさが舞台を牽引した。
阪神・淡路大震災で生き埋めから生還した語り手が、二十年後に旧友との再会を通じて、失われた相手の記憶と現代の認識の揺らぎに向き合う表題作を含む短編集。災害、テロ、インターネット以後の視点の拡張を背景に、人が世界をどう名づけ、どう関係を保つのかを問う。
忘れられない喪失が、二十年後の再会によって別の輪郭を帯びていく。
岩崎貴宏が第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館で発表した個展。日用品や弱い素材を用いた精密な風景模型、床下から覗く視点の反転などを通じて、見慣れた風景や価値観を揺さぶるインスタレーションとして構成された。
床下から見上げる日本館は、風景を見る視点そのものを反転させる。
葛飾北斎の娘・お栄を主人公に、父の圧倒的な才能の影で絵を描き続けた女性絵師の半生を描くテレビドラマ。朝井まかての小説を原作に、光と影、父娘の緊張、絵師としての自立を一回完結のドラマとして凝縮している。
北斎という眩しい光のそばで、お栄は自分の影を絵に変えていく。
桃月庵白酒の噺家生活の節目を記念する落語公演・記念盤に連なる企画。古典落語を現代の客席に届く速度と間で聞かせ、毒を含むまくらと端正な語りの両方を生かした白酒らしい高座を示している。
節目の年に、白酒の古典落語は軽やかな毒と確かな芸で立ち上がる。
久保田翠がクリエイティブサポートレッツの活動として展開した「表現未満、」の実践。知的障害のある人たちの日常のふるまいや熱意を、制度の外へこぼれるものとしてではなく、文化や表現の源として受け止める場をつくった。
表現になる前の身ぶりを、社会とアートの問いへ開いていく実験。
武田泰淳、大江健三郎、小島信夫の戦後文学を、動物表象と他者への倫理という視点から読み直す評論。人間性や主体性の回復という戦後思想の定型を疑い、動物とみなされる存在への暴力を通して、文学がなお抱える倫理的な問いを掘り起こす。
戦後文学に響く動物の声から、人間中心の倫理を問い直す。
和田永を中心に、役割を終えた家電を電子楽器として蘇生させ、参加者とともにオーケストラや祭りを作る参加型アートプロジェクト。ブラウン管テレビ、扇風機、換気扇などを楽器化し、テクノロジーの記憶を音と身体の祝祭へ変換する。
古い家電は廃棄物ではなく、まだ見ぬ電磁楽器として再び鳴り出す。