日本の文学賞

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容疑者の夜行列車

谷崎潤一郎賞

容疑者の夜行列車

多和田葉子

『容疑者の夜行列車』は、多和田葉子による13の列車の旅を連ねた長編小説です。旅人である「あなた」は夜行列車で国境を越え、奇妙な乗客や言葉の障害、残酷な歓待に出会いながら、移動そのものが不穏な物語へ変わっていきます。

夜行列車越境言語不条理

作品情報

夜行列車の密室で、「あなた」は国境と言葉の境目を越えていく。

青土社から2002年7月に刊行。出版社ページで ISBN 4-7917-5973-7 が確認でき、NDL では 163 ページの単行本です。谷崎潤一郎賞と伊藤整文学賞を受け、JLPP の翻訳紹介対象にも選ばれています。

レビュー要約

  • 列車という閉ざされた移動空間の中で、不思議な出来事が連鎖していく構成が高く評価されている。読者を二人称の旅人に巻き込む語りが、国境と身体感覚を同時に揺さぶる。

書籍情報

出版社
青土社
発売日
2002-06-01
ページ数
163ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784791759736
ISBN-10
4791759737
価格
1760 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

第39回(2003年) 谷崎潤一郎賞受賞

レビュー

  • 楽しく読めた。

    「ようぎしゃのよぎしゃ」の言葉遊びのようなタイトル。表紙の写真と呼応するように夜汽車で出会った人々の描写が温かい。狭い社会で暮らしている自分の視野が広がるような気がした。

  • 最初の話は面白い。しかし続くに連れて面白さが薄れて飽きてくる。

    文章を読んで、海外の情景をここまで見事に思わせる巧さは素晴らしい。文章にはキレがあり、読んでいて純粋な面白さを感じる。 けれど、途中から読んでいて疲れてくる。構成がワンパターンに見えてくるところがあるのが残念だった。短編の集まりという「話を鋭く断ち切り、別の話を始める」といった力強さ・仕切り直しをイマイチ活かしきれていないように感じた。 「あなた」という二人称については違和感なくストンと落とし込めるところがあった。意欲的な取り組みだと思うが、筆者はそれを綺麗に自身のものに出来ていて、その手腕に感嘆した。 もう少し話数が少ない方が綺麗だったかも知れないが、それを差し引いてもこの小説は読むに値する面白い小説だと思う。

  • 言葉の力を感じる

    37歳の今、このような小説を読むと、日本語が本当に新鮮に感じられます。 言葉のもつイメージ喚起力のようなものを 一つ一つ噛みしめるような感じで読み進めます。 無駄のない研ぎ澄まされた言葉の組み合わせで文章、物語が出来ているということを 初めて文章を読むような感じで読み進めます。 楽しい読書体験ができました。 ときどき読み返したくなります。

  • 言わずもがなのことだが・・

    この作者の書くものはどれもそうであるように、 日本語の関節を外したような文章には独特の面白味があるし、 個々の断片にもそれなりの才知のきらめきはあるのだが (たとえばバイカル湖を描写した一節)、 決してそれ以上のところには連れて行ってくれないというか、 おそらく作者自身、初めからそんなことを目指してもいない。 他のレビューでも指摘されているように、 タブッキの『インド夜想曲』を参考にして 書かれた作品であることは一目瞭然だが、 あの作品の主人公にはとりあえず 「行方不明の友人を探す」という目的があったし、 結末で一応の種明かしが用意されてもいた。 同じくミステリー仕立てにしてみたということか、 不穏めかした題名がつけられたこの作品、 二人称で呼ばれる主人公が旅をする理由は、 はじめのほうこそ「公演のため」などと書かれてはいるものの、 徐々に学生の頃の回想が入り込むにつれて曖昧となり、 要するに「単なる旅行」でしかないというか、 作者自身の旅日記からの引用であることは明らかで、 フィクションとしての構成が相対的に弱いというよりは そもそもの頭から欠如している。 「互いにバラバラの乗客が同じ車室に乗り合わせた夜行列車」 というメタファーを最後に持ち出すことで、 作者はこの作品に統一を与えようとしている、というより 統一感のなさを言い繕っているのだが、 一見、身辺雑記のようにしか見えない保坂和志の作品群、 例えば『季節の記憶』や『カンバセイション・ピース』にも、 はっきり「ここで終わるのは必然」と思えるような 結末が用意されていたことからすると、 この作品のどうにも尻切れトンボ感の否めない終わり方には、 「またか」という感想を禁じ得なかったし、 もう少し意地悪い言い方をすれば、 海外での生活体験の豊富さと、小手先の文章のうまさに溺れて 今以上のレベルの作品を作ろうとしない作者の 自己満足のようなものを感じてしまったのも確かだ。

  • ICの不思議な空間

    ヨーロッパのインターシティ(IC)は、日本人である私のとって、不思議な空間でした。寝台車の経験はないのですが、区切られたコンパートメントには、物語が生まれそうな雰囲気です。そのコンパートメントを軸にして、その不思議さを伝えています。 ある意味では、ヨーロッパ人にとって、ごくごく当たり前の空間なのですが、その文化的なギャップを見事に突いています。 語り手は「あなた」と云われる日本人ダンサー、ヨーロッパではそこそこだけど、裕福ではない、日常性と非日常性の交替がすばらしい。 沼野先生との対談によると、これらの話は著者の実体験に基づくとか。乗り合わせた人と会話ができたら、そういう体験もあったかも。 難しい理論はtもかくとして、いわゆる「鉄」と云われる人にはたまらないところもあると思います。

  • 多和田葉子は短編の名手、読みやすい短編作品集!

    今から、20年ほど前の作品集である。短篇集なので、気軽に読める。「ユリイカ」に連載された12篇に、1篇追加したものである。なんとなく感じるのであるが、前半は、多忙な中で、与えられた枚数を満たすのに、精一杯な感じを受ける。作品の切り上げ方が、制限枚数のわずかな残りでオチをつけているからである。7つ目からの後半の諸作品は、何か余裕を感じるのは私の気のせいだろうか。切れ味が鋭くなる。 ともかくも少しの時間があれば、1作品を鑑賞できるので、気軽に手に取れる作品集である。

  • 強いコンプレックスと高過ぎる自尊心がキツイ

    私は理系出身なのですが、時々本を読みます。 多和田葉子さんの小説は、この本が初めてだったのですが、どうも肌に馴染みませんでした。 なんだか、お話も、主人公の行動も、感慨も、全部借りてきた感じがして、地に足がついていない感じがしました。 みなさん、日本語の自由な表現が素晴らしいとか書いてますが、私にはなんだか、的を得ていないような表現としか思えませんでした。 例えるなら、文化的バックボーンを理解していないのに、お粗末な共感を示して、外国人と打ち解けているつもりでいる田舎者の旅行記と言った感じ。 しかも、トリッキーな表現ばかりで、伝わってこないので心に響きません。 その上「私は孤高の表現者だから、伝わらない人には伝わらない」という、無駄に高い自尊心が匂ってきて、読んでいて嫌な気分にさせられます。 アナログな感情を、デジタルである活字という表現に落とし込むのは至難の技だと思うのですが、それを素直にチャレンジしない作風には、ズルさを感じてなりませんでした。

  • 旅日記朗読

    「あなた」と主人公を表現された寝台列車での出来事なので、 自分の書いた日記を読んでもらっているような気分になります。 寝台車の感覚、夜の旅の感覚、異国の感覚、ひとり旅行の感覚・・・ イメージが膨らみやすい本だと思いました。 こんな旅人になりたいと思うし、なりたくないとも思います。

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