作品情報
理想の死を売るという異様な設定が、軽妙な会話の奥に黒い切実さをのぞかせる。
第3回GA文庫大賞優秀賞作。楽天ブックスとラノベの杜でISBN、発売月、ページ数を確認した。
レビュー要約
-
難しい題材を勢いのある会話で押し切る点が印象的で、人物の個性と不穏な設定の組み合わせが強く受け止められている。
書籍情報
- 出版社
- SBクリエイティブ
- 発売日
- 2011-09-14
- ページ数
- 208ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.8 x 1 x 15.2 cm
- ISBN-13
- 9784797367317
- ISBN-10
- 4797367318
- 価格
- 50 JPY
- カテゴリ
- 本/コミック・ラノベ・BL/ライトノベル
第3回GA文庫大賞優秀賞受賞作! 死にたがりの俺が出会った、最高に楽しくて最悪に頼もしい奴ら。 人生にとどめを刺す自殺系青春エンタテインメント、ブロウアップ!! 俺の名は紫藤。シドと呼んでくれ。 ただ今十九歳。借金もなく、失恋したり、イジメにあっているわけでもなく、まあ楽しく生きている。 でも俺は死ぬ。俺はもう完成しているからだ。じゃあ、どう死のう? なんて考えていた俺は、最高に愉快で最悪に頼もしい奴らに出会った。 『自殺屋ヨミジ』と『殺人鬼ドリアン』。 十万円と引き換えに理想的な死を用意してくれるという。 ただし一週間後に。 その間に気持ちが変わるだろって? 安心してくれ、俺は必ず死ぬから。 すがすがしいほど真っ直ぐに、人生にとどめを刺しにいく自殺系青春エンタメ、そんな物語が始まる。
レビュー
-
自殺する物語
大学生の紫藤は死にたい。別に嫌なことがあったわけでも、世を儚む理由があるわけでもない。ただもう、自分はこれ以上何も足したり引いたりする必要がないほど完成したと感じたからだ。生きていれば必然的に変化をしてしまう。だから死にたい。 そんな彼が自殺の手伝いを依頼したのが、ヨミジと名乗る自殺屋だ。彼は10万円払えば、1週間後に望み通りの死に方をさせてくれるという。彼に自殺の手伝いを依頼したシドだったが、その依頼が果たされる前に、いま世間を騒がせる快楽殺人鬼の女子高生、椋鳥アンと出会ってしまう。 「僕はやっぱり気づかない」の作者の処女作らしい。世界を救う異能少女たちと、そのあからさまなおかしさを目の当たりにしながらも何も気づかず平凡な日常を送る少年のラブコメであるあちらの作品とは、一見すると全く異なる作品であるように見えるが、実は似通っている部分もあるのではないだろうか? こちらの作品にも、快楽殺人鬼や、謎の自殺屋、大評判の占い師、超能力者など、普通とは言えないキャラクターたちが多く登場する。つまり、どちらの作品にも、いわゆる世界の秘密に直結するキャラたちが主人公の側にいるというのが共通点だ。 そして、先の作品では主人公はその秘密に全く気付かないことで、周囲の人々に日常の幸せを与える。一方こちらの作品では、自分の世界の調和を乱さないために、それらを知っても徹底的に無視する。つまり、どちらも十分な情報に接しながらも、それを自らシャットアウトし、知らないことによって、自らの世界を守ろうとしているのだ。 言葉を選ばずに言えば、これは小さな幸せで満足しようという思想とも言える。それなのに、世界は彼らの手が及ばないほど大きいと感じているのだ。このことに、何となく日本という国の斜陽と、それを反映した人の心を感じずにはいられない。
-
劣化西尾維新
いい加減そこには二匹目のドジョウはいないと伝えたい。 世界に満足して、自分が大好きで、戯れ言を言う主人公と、その主人公を自殺させてあげるヨミジ。 大きな事件もなく、主人公の言葉遊びやら、殺人好きな少女が現れたり、占いで儲けている兄が現れたり……。 その個性的(キャラクターとして深みはない)なキャラとの会話劇が繰り広げられたり。 淡々と物語が進む。 ほとんど会話なので、スラスラと読めるが、中身が全くない。 西尾維新の小説の悪い部分だけを残したような小説。 こんな小説もどきに賞を与えて出版させた編集部には首を傾げます。
-
かなりコメディータッチ
『Happy Death Day 自殺屋ヨミジと殺人鬼ドリアン』です。第3回GA文庫大賞優秀賞受賞作。著者はHJでも受賞して既にデビューしているので、複数受賞ということになりますが、本作が処女作だそうです。 あらすじには「自殺系青春エンタメ」という謎っぽい言葉があります。が、大体その通りの内容でした。 主人公シドが死にたがりで、イラストもダークっぽいかということでダークな内容だと思いこんでいたのですが、よく言えばスラスラ読みやすかったです。普通にいえば妙にあっけらかんとした明るさがありました。どちらかというとコメディーに近いくらいの、主人公と登場キャラたちのかけあいは軽快でした。 作中で描かれている主人公の死生観については、第一歩目を踏み込みました、という程度の深さです。なので、分かりやすいし部分的になら誰でも共感し得るだろうし、ラノベ読者のメインターゲット層が中二病中高生ということを考えれば、この程度がベストなのだと思います。 親友とか兄とか同窓生とか色々なキャラも出てきますが、それによってストーリーが進むというより、会話芸のバリエーションを楽しむのがメインという感じでした。 最後にきちんとオチをつけるところまでの構成は上手いと思いました。が、あとがきの後に次へのヒキが用意されているのには驚きました。シリーズとしての主役はヨミジとドリアンらしい。 全体としては、技術的には上手いと思いました。では面白いかといいますと、まあつまらなくはないし面白さもあるのですが、こういうタイプの面白さはもう食傷気味かなという、満腹感ではない飽満感が強かったです。よりによってダークであるべき本作品でそういう面白さを打ち出さなくてもよかったのに。 評価は★3.5。処女作ということで甘めに切り上げて★4です。
-
あまりにも幼稚
「自殺系青春エンタメ」という、言わば「ちょっと尖った作風」を売りにした作品のようですが、完成度が極端に低いように思えました。 まず「自分の人生が完成されたと思い至り、自殺しようとする主人公」の、死生観と哲学が幼稚すぎる。作中では人生を達観した者のように描かれる主人公の価値観には悲しいかな何の裏打ちもなく、「人生経験が浅く、自意識に対して知性の発達が追いつかない故に、頭の中で組み上げた自意識”だけ”を肥大化させてしまった中学生」が考えるようなものであり、とてもじゃないが「鋭いもの」として読めませんでした。 一人称でダラダラと語られる、「道徳論」や「命の重み」に対する斜に構えた見方などは、どれもどこかで聞いたような、あるいは十代のとき一度は考えるような浅薄なものであり、およそ哲学的というには程遠く、なんら新しい発見を伴わない長い長いモノローグは「退屈」の一語に尽きます。 話とキャラもひどい。「ばったり出くわした連続殺人鬼が自殺屋の知り合いでした」だの「再会した同級生が超能力者でした」だのの展開は、ただのギャグだろうと思っていましたが、そいつらが山場で主人公の危機を救ってしまうあたり、ただ単に作劇法が未熟でご都合主義に走ったとしか思えません。 キャラクターとストーリー展開が求心力を欠く中、目立つものはといえば「死」という、どぎつくなるためにはお手軽便利なモチーフを、類型的キャラが過剰に振り回すあざとさと、主人公にシンクロする作者のナルシズムだけであり、失敗した自主製作映画でも眺めている気分でした。 長所と言えば、内容が希薄であるが故に、時間を損したような読後感も五分くらいで忘れられる事くらいですが、それだけなので最初から読まない方が良いでしょう。
関連する文学賞
- GA文庫大賞 第3回(2011年) ・優秀賞