【2016年・第14回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 神の値段
正体を見せない現代芸術家・川田無名をめぐり、画商の死と六億円超の幻の傑作の行方を追うアート・サスペンス。
作品情報
美術市場の光と影を描く、新機軸のアート・サスペンス。
第14回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作。現代アートの世界を舞台に、姿を見せない芸術家と画商の死、そして幻の作品の価値をめぐる謎を描く。
レビュー要約
-
アートの世界を扱う題材の新鮮さと、ミステリーとしての骨格が評価されている。
書籍情報
- 出版社
- 宝島社
- 発売日
- 2016-02-10
- ページ数
- 315ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.8 x 2.5 x 19.5 cm
- ISBN-13
- 9784800250858
- ISBN-10
- 4800250854
- 価格
- 1430 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
メディアはおろか関係者の前にも一切姿を見せない前衛芸術家・川田無名。 彼は、唯一つながりのあるギャラリー経営者の永井唯子経由で、作品を発表し続けている。 ある日唯子は、無名が1959年に描いたという作品を手の内から出してくる。 来歴などは完全に伏せられ、類似作が約六億円で落札されたほどの価値をもつ幻の作品だ。 しかし唯子は突然、何者かに殺されてしまう。 アシスタントの佐和子は、唯子を殺した犯人、無名の居場所、そして今になって作品が運びだされた理由を探るべく、動き出す。 幻の作品に記された番号から無名の意図に気づき、やがて無名が徹底して姿を現さない理由を知る――。
一色 さゆり (いっしき さゆり) プロフィール 1988年、京都府生まれ。東京藝術大学芸術学科卒業。2016年現在、香港中文大学大学院美術学部在学中。
レビュー
-
現代アートの謎
上質なアートミステリー。現代アートはどう鑑賞したら良いかもわからないと思っていたが少し足を踏み出してみたいと思った。
-
映像化を期待したい
美術の世界に特段興味はなく、ましてや現代美術となると全くの門外漢である。 主人公・川田無名のモデルとされる、故・河原温氏が描いた「日付シリーズ」を見ても?である。 しかし、ミステリー色が強いと思われるデビュー作には興味を持った。 「神の値段」と言うタイトルらしく、画家・川田無名は、時折りPCに制作指示=お告げを出すだけで人前に姿を見せることはない。神の如き存在である。ただ、こうした制作システムが成り立つものだろうか? 美術品の取引にも通じる一色氏らしく、門外漢の読者にも多くの情報が提供されている。本作程度の記述であれば、その説明部分はそう気にならなかった。最後のオークションの部分はより緊迫感を高める書き方が求められるかもしれない ミステリーとしては常道の展開で、ヒロイン佐和子が努めるギャラリー経営者・惟子の殺害犯の見当も付いた。 このオークションを通じて惟子も意図した「作品を大事にしたい」との目論見は達成され、無名を取り巻く裏事情は解消するが、美術品売買全体の裏にある闇が全て消えたわけではない。 読後感は、総じて平坦な印象。惟子の殺害以外、特段大きな盛り上がりもない。 文体から、女性作家と知らずに本書を読めば、男性作家の作品と思ったかもしれない。 コンサバターシリーズもそう感じた。後に五木寛之氏と対談(「好書好日 作家の読書道」朝日新聞社 2023.07.21)し、エンタメ小説の見本と感じた五木氏の「海を見ていたジョニー」を全文書き写した、と語っているが、元々一色氏の文体は無駄がなく、ハードボイルドのにおいが漂う。かつて、評論家の故・植草甚一氏が五木氏の作品を『よくスウィングするな~』と評したが、一色氏の作品もそうなることを期待したい。 一色氏の場合、文体とプロットが合致する作品群は面白いが、特に普通の女性が主人公でハートウォーミング風の作品では文体を変える方が、より良くなると思う。 また、五木・一色両氏の作品は、共に活字の先に映像が見える。一色氏の本作もうまく映像化できれば、面白いかもしれない。
-
惹き込まれなかった
仕事小説としては良いが、いかにせん、文章に惹き付けられなかった。中身もぐいぐいと引っ張られる物を期待したが、説明を読まされているような気分。どことなく出来すぎているし、流される主人公もあまり魅力的ではなかった。 途中、読むのが面倒だなと思ったのは、私のせっかちな性格故だと思いましたが、どうやら私だけではなかったようだ。ただ知識とタイトルは素晴らしいと思う。 小説は読者を惹き込んでこそ、小説足りえているのだと分かった。
-
最後の一行に感動があります。
コンテンポラリーアートの世界を存分に見せてくれる作品でした。 敷居が高そうに見えるアート鑑賞の世界。作者さんにとって、この世界をより多くの人に足を踏み入れてもらう小説を、となったときに、ミステリー、という形になったのではないかな、と思います。 そうだとしたら、その試みは大成功かと思える作品です。 本格ミステリー、としては弱いと思いますが、本筋の謎が最後までブレないので、読ませる力が素晴らしいです。 追う謎があるから、読者は最後まで引き込まれるのだと思います。 その間に、外からは分からない美術界の仕組みから闇まで、リアリティを持って描かれ、芸術作品の表現描写も見事の一言です。 (作品の表現描写に関してはは恐らく、学芸員という資格をお持ちであろう作者さんの成せる技と思いますが) アートを愛するが故に、最後の一行に辿り着いたのだろうな、と思い、読了後、とても良いものを読んだ、という気持ちになれた作品です。 敢えて言うなら、弱かったのは捜査関連記述。でもこれは、作者さんの専門外でこれからまだ伸び代があるものと思います。 私にとってはちょっとお高め小説。でもこれだけの値段の価値がありました! 次作に期待します!
-
美術業界の裏側、そしてミステリー
美術業界の裏側、そしてミステリーをうまく繋げていると思いました。私は美術に関しては完全に素人ですが、説明もわかりやすく、難しく感じることはありませんでした。ミステリー部分も悪くないと思い、楽しく読了できました。
-
現代アートを舞台にした素晴らしい作品
導入の部分から、アートの世界の裏側の事情、売り手と作者、コレクターの駆け引きに引き込まれていきました。その世界を知らない人も、芸術の世界で生きている人も、面白く読み進められる。その流れの中でミステリーが展開され、主人公の芸術への想いが、少しずつ成長し、最後のクライマックスでは、作品の表現に涙が止まりませんでした。 二度三度と読み込みたくなる一冊となりました。
-
なかなか楽しめました。
最近流行りの元関係者が業界事情を織り交ぜた殺人モノでしたが、思いの外楽しめた。
-
表現力が優れています。
他の方も書いておられる通り、アート業界の内幕がつまびらかになってゆく話が大変面白く表現されています。冒頭から襟首をぐいっとつかまれて物語世界に引き込まれます。 しかも事件が起きるまでのぴーんと張り詰めた緊張感が漂う空気感の表現力が素晴らしいと思います。このダラダラとした世相の中でこれだけの空気感を文章化する力量は並外れています。 この前半部分を読むためだけでも充分楽しめるはずです。 無理に殺人事件にせずともこの業界話だけでとても魅力的な作品になる進行なので、最も興味深いキャラクターの女性オーナーの死が残念に思います。 願わくはこのギャラリーの話だけでミステリーではない文芸作品が読みたいものです。 とはいうもののこの新人の次回作がとても楽しみになりました。