日本の文学賞

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至高聖所

芥川龍之介賞

至高聖所

松村栄子

松村栄子『至高聖所アバトーン』は、新構想大学に入った沙月とルームメイト真穂の関係を描くキャンパス小説。乾いた孤独が、もう一つの孤独へ寄り添おうとする過程を、透明感のある筆致で描く。

キャンパス小説孤独友情芥川賞

作品情報

鉱物質の孤独が、もうひとつの孤独へ静かに近づいていく。

福武書店から刊行された芥川賞受賞作。ギリシア語由来の「アバトーン」を題名に掲げ、大学寮で出会う二人の女性のすれ違いと接近を描く。

レビュー要約

  • 透明感のある文体と、若い女性同士の距離感を繊細に描く点が評価される。静かな作品ながら、孤独の硬さが読後に残る。

書籍情報

出版社
ベネッセコーポレーション
発売日
1992-02-01
ページ数
176ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784828824178
ISBN-10
4828824170
価格
491 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

第106回(平成3年度下半期) 芥川賞受賞

レビュー

  • 不思議な感じの芥川賞受賞作、他1編

    松村栄子は筑波大学卒業だそうだが、芥川賞を受賞した表題作は、その母校をモデルとした大学の新入生青山沙月の一人称形式で描かれる中編小説である。彼女が入るサークルが、鉱物研究会で、学生寮の部屋で石をこつこつ叩いたりしているのがユーモラスだ。寮のルームメイトになる真穂の登場の仕方がまた突拍子もないもので、沙月が困惑する様子が笑える。タイトルの「アバトーン」は至高聖所と訳されているわけだが、真穂が書いた芝居の脚本に出て来る、古代ギリシャのアスクレピオス神殿の一番奥にある聖所だそうで、脚本と現実の生活とが対比される展開になる。文章があっさりしていて、何となく不思議な感じにさせられる作品だ。 もう1編、50ページほどの『星の指定席』は中学校教師を主役にした話で、様々な生徒たちのことや婚約者とのことを取り混ぜて、散漫な印象になりかねないところを、すっきりとまとめている。

  • 心の深層で求めている夢治療

    まったく異なる性格の者どうしが同じ寮の部屋で生活する話です。始めは全く異なる性格の者どうしに思えましたが、次第にどこか共通点の様なものが見えてきます。 真穂は父親との微妙な関係に。沙月は姉を中心とした家族構造の変化に。それぞれ現実の世界ではどこか生きづらさの様なものを少なからず感じています。 真穂は一度眠れば深い眠りに落ち、その夢の中で現実の埋め合わせをし、それでも足りず演劇で自分自身を補うための劇を公演しようとする。すべては自分の満たされない心を治療するためが如く。 沙月は家族の生きる希望だった姉が消えた世界というか家族を上手くやっていけない状態で、姉が結婚すると聞いて、両親はそれに順応し自分は出来ないまま受け入れられないままという状態に陥る。そしたら不眠症になってしまって、安眠を求め彷徨う。それはあたかも真穂の作った演劇の世界のようなのであった。 兎に角二人は安眠を求めているように思えた。現実の世界でどこか上手くいかない自分自身を夢治療したいと深層で思っているように思えた。 なお表題作は 【第106回(1991年下半期)芥川龍之介賞】受賞作

  • ちょっと奇妙な青春

    鉱物研究会に入った主人公と、 少々エキセントリックな同級生が織り成す青春小説。 文章は簡素で、ストレスなく読破できます。 ただ、その分ずば抜けて評価できる部分もなく、 平均的に良質な純文学という感が拭えません。 芥川賞という冠詞は忘れて読んだほうが楽しめるかもしれません。

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