作品情報
蝦夷征伐の戦場で、呪禁道士は復讐と疑念のはざまに立つ。
富士見ファンタジア文庫から刊行された第三回ファンタジア長編小説大賞準入選作。陰陽道に連なる呪禁道と東北古代史を組み合わせ、敵味方を単純に割り切れない戦の構図を描く。
書籍情報
- 出版社
- KADOKAWA
- 発売日
- 1993-04-01
- ページ数
- 305ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784829124963
- ISBN-10
- 4829124962
- 価格
- 300 JPY
- カテゴリ
- 本/コミック・ラノベ・BL/ライトノベル
Amazon.co.jp: 東北呪禁道士 (富士見ファンタジア文庫 46-1) : 大林 憲司, こばやし ひよこ: 本
レビュー
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フィクションで歴史を描くとはどういうことかというお手本そのもの
およそ十数年ぶりの再読。 時は七九三年、大和朝廷の蝦夷進出という史実を呪術戦を通して描く、直球も直球、骨太の歴史ファンタジーであります。 とってつけたようなコメディ描写は一切なし。二十人近い(!)主要キャラクターを縦横に動かしつつ、大和vs蝦夷の戦いとはどのようなものだったかを丁寧に描くことで単純な勧善懲悪に陥ることを避けたストーリーは、フィクションで歴史を描くとはどういうことかというお手本そのものです。蝦夷の習俗、信仰がアイヌそのままだったりするんですが、それはまあ読者に分かりやすくということで。 初めて従軍することになった少年道士の紅明が、敵のはずの蝦夷や神との交流を重ねることで変わっていく話運びも実に自然で、成長物語としても秀逸。300ページの分量でよくもこれだけ起伏に富んだ物語を描き切ったものと感心してしまいます。 坂上田村麻呂(生まれながらのチート)、アテルイ(蝦夷アイテムのおかげでチート)に意外な悪玉の正体等々、実在の人物や史実のからませ方も巧い。こうした歴史ファンタジーの良作が多く刊行されるなら、歴史ファンのすそ野を広げ、史実に関心を持つ新規読者を増やすことに繋がるのでしょうが、当時の反響はいま一つだったのか、がっつり歴史上の事件をあつかった著者の作品は他に『火雷天神大戦』一作があるきりのようです。歴史モノというだけで敬遠してしまうのは本当にもったいない。 残念なのが二つ。一つは悪玉の呪術師2人との最後の戦いでして、ほとんど『怪獣総進撃』のキングギドラvs地球怪獣のノリで展開する暴走カムイ相手の総力戦の後では、あっけないといおうか、せこいといおうか、ここの順序は逆だった方がよろしかったのでは。 もう一つは誤字・脱字の多いことで、ライトノベルにおける誤植の多さは仕様といっていいものですが、本書の場合はここぞという大事な場面での校正ミスが目立ちます。とりわけ100ページのものはよく見落としにされたなとびっくりするレベル。 ところでこの作品、高橋克彦先生の作品群、とりわけ『総門谷R・阿黒編』の影響が濃いなという印象だったのですが、『総門谷R・阿黒編』の単行本刊行は平成三年三月。本作の執筆はあとがきによると平成二年の夏。まったく偶然のニアミスなのか、それとも共通の元ネタとなるような出来事があったのか、なかなか興味深いところです。高橋先生の『火怨』『風の陣』とは登場人物もかぶっており、古代東北史小説の最初の窓口としてもオススメの一冊。
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和風『ゲルマニア』
安倍晴明がブームとなり、陰陽ものの作品も多数出回るようになった昨今です。 本作品『東北呪禁道士』は、坂上田村麿のいた時代、東北地方が舞台です。 主人公は徳紅明という、陰陽師の流れをくむ呪禁道士の少年。 蝦夷征伐という歴史的事実と、呪禁道の戦いというフィクションの部分をうまく融合させてあります。まぁ、当時は呪術の類は実在すると信じられていたのでしょうから、フィクションという表現は正確さを欠くやもしれませんが。 父の仇討ちをするため戦ったり、蝦夷の女の子と知り合ったり、遠征の中で紅明は様々な人生経験をして成長します。そう、古代日本の東北地方という、馴染みの薄い舞台背景の作品ではありますが、オーソドックスな少年成長物語という背骨が通った小説なのです。 和風歴史ファンタジーを得意とする大林憲司のデビュー作です。得意分野だけあって、デビュー作ではあっても高い完成度を持っているのではないでしょうか。
関連する文学賞
- ファンタジア大賞 第3回(1991年) ・準入選