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鈴木清順論: 影なき声、声なき影

芸術選奨文部科学大臣賞

鈴木清順論: 影なき声、声なき影

上島春彦

映画化されなかった脚本『夢殿』や『具流八郎』を手がかりに、鈴木清順の全体像を多角的に読み解く評論集。

作品情報

作品ごとの解説やキーワード事典を収めた大著で、鈴木清順映画の読み方を更新する一冊。

書籍情報

出版社
作品社
発売日
2020-09-23
ページ数
696ページ
言語
日本語
サイズ
19.3 x 4.4 x 26.4 cm
ISBN-13
9784861828249
ISBN-10
4861828244
価格
11000 JPY
カテゴリ
本/エンターテイメント

未映画化脚本『夢殿』を中心に据えた三本の論考から、重要キーワードを鏤めて諸作品の横断的な読み解きを試みた「事典」、清順も参加した脚本ユニット「具流八郎」をめぐる初めての批評、そして全監督作品の精緻な解説まで。多角的な視点で、日本映画の異形の巨人の全体像を解き明かす! 圧倒的スケールで打ち建てる、映画評論の金字塔! 鈴木清順と聞いて現在、人は何をイメージするだろう、あるいは彼を「何者」と人は定義するだろう。映画監督に決まっている。それはその通り。本書においてそれ以外の相貌で彼が現れることは原則ない。『けんかえれじい』を撮った、もしくは『ツィゴイネルワイゼン』を撮った、伝説的映画監督。映画ファンならそう答える。(…)しかし本書において清順は誰でも「テレビで知ってる」映画監督というその顔のレベルとは違うレベルで存在している。むしろ知らない清順の顔をそこに存在せしめるためにこの本はある。(…)『けんかえれじい』は誰をも親しませる「昔の名作」であると同時にギャップだらけのヘンな現代映画になっている。このちょっとした発見が本書『鈴木清順論 影なき声、声なき影』において清順映画を捉えるキー・コンセプトである。つまり、本書は清順映画のいくつかを伝説の名画や公認の名作でなくするために書かれたものだ。そのとき、清順もまた伝説の映画監督ではなくなっているだろう。(…)デビュー作『勝利をわが手に 港の乾杯』における「裸足」の重要性というのは私しか書いていないし、書く価値があるともそもそも思われていない。(…)同時代の評価というのはあまりにいい加減なものだが、逆に言えば今こそ発見されるべき清順映画がたくさんあるということでもある。要するに清順映画は最初から最後まで魅力的でいつでも誰でも楽しめる娯楽映画。それを皆さまと一緒に楽しみたい、というのが本書唯一の望みなのだ。 (本書「はじめに」より)

1959年生まれ。映画評論家。国学院大学文学部卒業。著書に、『血の玉座――黒澤明と三船敏郎の映画世界』、『レッドパージ・ハリウッド――赤狩り体制に挑んだブラックリスト映画人列伝』(以上作品社)、『宮崎駿のアニメ世界が動いた――カリオストロの城からハウルの城へ』(清流出版)、『60年代アメリカ映画』(エスクァイアマガジンジャパン、共著)、『モアレ――映画という幻』(世界思想社)などがある。

レビュー

  • 欠点は横になっては読みにくいこと

    本書を通読する過程で、できるかぎり鈴木清順を観たが、なかには初めて観る初期の映画もあった。年代順でいうと、『海の純情』『8時間の恐怖』『暗黒街の美女』『踏みはずした春』『素ッ裸の年令』『くたばれ愚連隊』などである。『すべてが狂ってる』は少し前にレンタルで、『無鉄砲大将』は最近テレビ放映され観る機会があった。 私は以前に(1970年代だろうか)オールナイトで鈴木清順の映画を初期のものも含めていくらか観ており、もしかしたら初めて観たと思っているこれらの映画のうち、そのころに観た映画があるかもしれない。とはいえずっと前のことなので観たかどうかは思い出せない。今回観ることはできなかったが、『峠を渡る若い風』とか『散弾銃の男』等は以前のオールナイト・プログラムの聞き覚えのあるタイトルだ。ともあれ当時、『野獣の青春』以降の映画を中心にしたプログラムで初期の映画も上映されていた。 だが渋谷シネマヴェーラの2006年のプログラムには叶わない。私はこの「鈴木清順48本勝負」のことを当時知らなかったと思うが、日活時代の全作品を中心に、いくつかの珍しいテレビ作品(『木乃伊の恋』や『穴の牙』など)も加えたものすごいラインナップである。2011年にも「鈴木清順再起動!」という特集をしているが、このときは24本、ちょうど半分である。『野獣の青春』より前の映画は9本。 今回テレビ放映を録画したものやレンタルで可能なかぎり見返したが、やはり『野獣の青春』とその直前の『探偵事務所23くたばれ悪党ども』とのあいだに大きな差を感じた。本書においては通説を嫌ってか、『くたばれ悪党ども』以前の映画に対して積極的な評価を導入している。 とはいえ著者は、『野獣の青春』『肉体の門』『東京流れ者』『殺しの烙印』ほか充実期の諸作、そして「浪漫三部作」に図版をふくむ多くのスペースを費やしており、それらへの傾倒は明らかである。いわば著者は『野獣の青春』以降の映画の魅力に捕らえられながらも、清順映画をまるごと味わい尽くそうとする長い旅に赴き、その旅程をここに描いたのであろう。それは清順映画の「ヘンさ」の淵源を探る旅でもあった。 鈴木清順に関わってだが、二つの名、田中陽造と大和屋竺に特別な比重がかけられている書物である。

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