日本の文学賞

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満洲国グランドホテル

司馬遼太郎賞

満洲国グランドホテル

平山周吉

満洲国の安定期に関わった軍人、官僚、財界人、文化人たちを36の人物像でたどり、植民地国家の実像を群像的に描き出す歴史ノンフィクション。建国と崩壊を直接語るのではなく、その中間にいた人々の姿から満洲を浮かび上がらせる。

満洲国昭和史ノンフィクション植民地史群像

作品情報

満洲国を生きた人々の姿から、植民地国家の輪郭を立ち上げる。

芸術新聞社から刊行された平山周吉の大部の歴史ノンフィクション。満洲国の建国と崩壊そのものではなく、そのあいだにいた36人の人物を通して、満洲をめぐる政治・文化・生活の層を掘り下げている。

レビュー要約

  • 旧満州国関連書を総動員し、人造国家に人生を懸けた人々の思いと挫折を具体的に浮かび上がらせる点が評価されている。人物論を通して傀儡国家の実態を考えさせる一冊だと整理されている。

書籍情報

出版社
芸術新聞社
発売日
2022-04-22
ページ数
568ページ
言語
日本語
サイズ
14 x 3.7 x 19.5 cm
ISBN-13
9784875866398
ISBN-10
4875866399
価格
3850 JPY
カテゴリ
本/ノンフィクション/歴史・地理・旅行記/歴史/東洋史

「二キ三スケ」(東条英機、星野直樹、松岡洋右、岸信介、鮎川義介)だけで満州は語れない。 「一ヒコ一サク」(甘粕正彦、河本大作)が隠然たる影響力を行使する、 再チャレンジ、前歴ロンダリングも許される自由の天地。「五族協和」の理想を信じた人たちの生と死。 既存の満州国のイメージをくつがえす、満州へ渡った日本人の奇妙にして、真剣なる「昭和史」物語。 装幀画は安彦良和氏が担当した。 【主なる登場人物】 「新しき土」原節子/「殉職警官」笠智衆/「新京不倫」小暮実千代/「越境将軍」林銑十郎/ 「童貞将軍」植田謙吉/「満蒙放棄論者」石橋湛山/「朝日新聞の関東軍司令官」武内文彬/ 「満洲の印象」小林秀雄/「満洲紀行」島木健作/「満洲事変の謀略者」板垣征四郎/「満洲経営の事務総長」小磯国昭/ 「植民地の大番頭」駒井徳三/「関東軍と喧嘩した官史」大達茂雄/「少年大陸浪人」内村剛介/ 「小澤征爾の母」小澤さくら/「焦土外交」内田康哉/「阿片専売」難波経一/「獄中十八年」古海忠之

平山周吉(ひらやま・しゅうきち) 1952年東京都生まれ。雑文家。慶応大学文学部卒。雑誌、書籍の編集に携わってきた。 昭和史に関する資料、回想、雑本の類を収集して雑読、積ん読している。 著書に『昭和天皇「よもの海」の謎』(新潮選書)、『戦争画リターンズ 藤田嗣治とアッツ島の花々』(芸術新聞社)、 『淳は甦える』(新潮社)。『戦争画リターンズ 藤田嗣治とアッツ島の花々』で第34回雑学大賞出版社賞、 『江藤淳は甦える』で第18回小林秀雄賞受賞。

レビュー

  • 大日本的なものと極小日本の狭間で

    満州人脈の得体の知れなさが分かるものと思います。 南洋政策では分かり得ぬ五族協和の理想国家を掲げていることが分かります。 改めて革新官僚系の書籍も読んでみたいと思った。

  • 満洲国の実像を一人一人の人生から浮かび上がらせる

    満洲国に関わったニキサンスケ、官吏から民間人、満鉄社員まで、それぞれの日記や記録を辿り、満洲国とは日本人にとって何だったのかを浮かび上がらせてくる。今ほど通信や交通が発達してなかった時代、たった80年ちょっと前に、日本の実質的な海外領土としてたくさんの日本人が渡り、実験国家を作っていた事は、もっと多くの人が自分ごととして知っておくべき事だと思う。

  • 人工国家満州を彩った人々を活写

    日本が作った人工国家満州。そこで活躍した人々を、さながらホテルに集った人々のように描く。彼らは内地では見せなかった顔をしていた。植民地で活躍する人々。その中には戦後の日本で活躍した人も多い。

  • 近代日本の徒花「満洲国」の実像に多角的に迫る

    「グランド」という名を冠するホテルは国内にずいぶんある。検索すれば、リスティング広告がずらっと並ぶほど。評者も旅で「グランドホテル」と呼ばれる宿にお世話になったこともある(だいたいは値段が高めなので、敬遠していたが)。 そんな次第で、タイトルに初めて接したとき、「満洲国にもグランドホテルがあったのか……」と誤解し、ページを開いて恥じた次第。 本書は、かつてあった「満洲国」という国家・地をグランドホテルに見立て、いわゆるグランドホテル形式でそこに出入りした人々に光を当てた物語である。 「満洲国」が歴史上存在したのは、わずか13年半にすぎない。現代人には、よくわからぬ得体の知れぬ「国」でしかないだろう。評者も同じだ。 ただ、記憶を探るだけでも、「満洲生まれ」の著名人がけっこういる。歌手の加藤登紀子、作詞家のなかにし礼、指揮者の小澤征爾、漫画家の赤塚不二夫、俳優の梅宮辰夫、学者の藤原正彦……。 「外地」(大陸)に誕生し、わずかの歳月ではあれ存在した「満洲国」とは、いったい何であり、人々は何を求めそこへ向かったのか。そこで何が行われ、国はなぜ崩壊し、それをどう迎え、対処したのか。 本書は36回のWeb連載がまとめられたものなので、主たる客は36人だが、関係者も含めると多数のホテル訪問者が登場する。 官僚、軍人、政治家、実業家だけではない。作家、俳優、映画人、学者、音楽家、ジャーナリスト、浪人にいたるまで、このホテルに出入りしたさまざまな人物を通じて、「満洲国」の謎めいた実像に多角的に迫っている。 ちなみに主客36人の中で評者がとりわけ興味をもったのは、小津安二郎映画のヒロイン原節子や、艶っぽさが子ども心をも揺さぶった小暮実千代、晩年「男はつらいよ」シリーズでも欠かせぬ役者だった笠智衆、ソ連獄中11年を生き延びた批評家内村剛介、指揮者小澤征爾の母小澤さくら、哲学者木田元、作家島木健作あたりだ。 埋もれた膨大な文献資料を掘り起こし、読みこむのだから、ずいぶんな手間を要するはずだが、著者はそのあたりの作業を得意とするのだろう。ときには、居酒屋談義風の感想もぽろっと漏らすので、読者もにやっとさせられる。 では、著者は満洲について、どんな視点をもつのか。 「民族協和」(五族協和)、「王道楽土」といった建国理念に肩入れするのではむろんないが、逆に、侵略政策の一環として断罪し、全面否定してすませるのでもない。 声高な主張は控えているが、しっかりした評価軸をもっているようだ。当時誰よりも深く「近代」と向きあった小林秀雄のエッセイや発言、ふるまいを通じて、それは示される。ただし、壮年小林が満洲の大学を訪問した際に、彼に接した一学生が書き残した厳しいインテリ批評も、著者は拾いあげている。本書に信を置ける所以でもある。 満洲国とは、近代日本が生みだしてしまった徒花なのだろう。 このホテルに出入りした人々の姿を追うと、戦前・戦中と戦後の間で、切断されたものと続いているもの(つまり非連続と連続)が見えてくる。 「近代」をもう一度問い直す――その格好の材料を与えられた。

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