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戦時日中映画交渉史

芸術選奨文部科学大臣賞

戦時日中映画交渉史

晏妮

『戦時日中映画交渉史』は、晏妮による研究書。戦時下の日本と中国の映画交流・宣伝・制度を追う研究書。映画を文化政策と国際関係の接点として読み解く。

映画史日中関係戦時文化文化政策

作品情報

戦時日中映画交渉史は、映画史を軸に作品世界を立ち上げる。

戦時下の日本と中国の映画交流・宣伝・制度を追う研究書。映画を文化政策と国際関係の接点として読み解く。

書籍情報

出版社
岩波書店
発売日
2010-06-26
ページ数
320ページ
言語
日本語
サイズ
15 x 3 x 21 cm
ISBN-13
9784000236942
ISBN-10
4000236946
価格
2200 JPY
カテゴリ
本/エンターテイメント/映画/総合

日本占領下の中国で日本映画はいかに受容されたか。一方、川喜多長政ら日本人も関わる中でどのような中国映画が製作され、日本に紹介されていたか。本書は日中映画人の苦闘を跡付け、「国策映画」という評価に収まらない中国映画の多義性を重視しつつ、日中両国における映画の連鎖と相互作用の全体像を解明した意欲作。

晏妮(アンニ) 中国清華大学外国語学部卒業.中国電影家協会勤務を経て来日.早稲田大学大学院文学研究科博士課程前期課程修了.一橋大学大学院博士後期課程修了.博士(社会学).専攻は日中比較映画史,映像学.一橋大学大学院社会学研究科特任講師を経て,現在,明治学院大学言語文化研究所研究員,華東師範大学比較人文研究所研究員.慶應義塾大学他非常勤講師.

レビュー

  • 労作だが・・・・・・

    300頁の大作を母国語でない日本語で執筆した著者にまず、敬意を表する。が、「交渉史」としての焦点の当て方、また全体の構成にはやや首をかしげざるを得ない。 第一章と第二章では、戦前の中国大陸へ渡った日本文化人が、現地で接した中国映画について執筆した、いくつかのマニアックな「中国映画印象記」をピックアップして詳細に紹介しているが、1920年代半ばに日本で大々的に劇場公開された中国映画の受容に触れておらず、同時代の日本映画に対する中国側の眼差しについても全く言及していない。偏った「交渉史」となった感は否めない。 第四章は、戦前の日本で製作された、中国や中国人を描いた「大陸映画」にまつわる論考となるが、これらの日本映画は、当時の中国でまったく上映されていなかった。あくまでも「交渉史」の周辺、または背景にあるものである。どうしても「大陸映画」を論じたいなら、同時代の中国で量産された「反日映画」「抗日映画」をも丹念に扱う必要性も出てくる。しかし本書には双方のプロパガンダの対照性に注目した視座が見当たらない。 第六章「映画進出のジレンマ」は、太平洋戦争以降(1942~45年)の日本映画受容の問題を扱う。日本軍が上海全域を占領したことを受けて、日本映画が初めて中国人を対象に上映され、日本主導の「日華合作映画」も製作されるようになった。戦中日中映画交渉史の本丸は、正にその時期にほかならない。なのに、記述は「大陸映画」の章と比べてやや貧弱であり、精度にも欠けている(特に「華北電影」の一節)。例えば、223頁に文献として「『キネマ旬報』1943年4月21日号」が挙げられているが、戦時統制のため『キネマ旬報』は1940年よりすでに休刊していたので、初歩的なミスである。 第七章では、上海製時代劇『木蘭従軍』(1939年)のために、かなりの頁数を割いている。製作過程に日本人がまったく関与していなかった純粋な中国映画なので、中国映画史の文脈で扱うのが妥当ではないだろうか。確かに同映画は1942年に日本でも公開されたが、大衆レベルでヒットしたというわけではない。日中映画交渉史における特権的な作品とは言い難い。同書145頁には「孤島時代の時代劇の大半は(『木蘭従軍』に代表される)借古諷今の手法を用いて、日本の占領への抵抗を訴えるものだった」と書いてあるが、それが本当なら、根拠となるデータを示していただきたい。「借古諷今」の観点にのめり込んだ著者の分析に「牽強付会」なところがあるように感じる。 日中映画交渉史を扱うのに、日中の映画人や観客を含めて「人」 が相手国の映画にどうかかわったかという意味での「交流」を軸に置くというアプローチが存在する一方で、本書のように「日本側の対中政策」や「作品」を中心にした「広い意味での交流」をとりあげる手法もあり得るだろう。しかし、その際に、より高い「構成力」が求められる。残念ながら、本書を読み、「散漫」という印象を受けざるを得ない。

  • ただただ脱帽

    日中戦争期に大陸を舞台にした映画が数多く作られていた。それが日本だけでなく占領下の上海や華北でどう受容されていったのか。本書は映画を主題にした日中関係史。当時の映画雑誌に丹念に当たって、この大部の論考をまとめた中国人学者にただただ脱帽。

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