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犬身

読売文学賞

犬身

松浦理英子

犬になりたいという強い願望を抱く女性を中心に、人間と動物、欲望と自己像の境界を揺さぶる長編です。異形の設定を通して、愛されること、従うこと、変わることの意味を問いかけます。

変身願望身体愛と支配

作品情報

犬身は、松浦理英子が長編小説として形にした受賞作です。

犬になりたいという強い願望を抱く女性を中心に、人間と動物、欲望と自己像の境界を揺さぶる長編です。異形の設定を通して、愛されること、従うこと、変わることの意味を問いかけます。 受賞作として、作者の関心と表現の特徴が読み取れる一作です。

レビュー要約

  • 読者や選考上の反応は、題材への切り込み方と文章の手触りに注目している。作品の形式に応じて受け止め方は分かれるが、受賞歴が示す通り強い印象を残した。

書籍情報

出版社
朝日新聞社
発売日
2007-10-05
ページ数
512ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784022503350
ISBN-10
4022503351
価格
2318 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

あの人の犬になりたい。そして、人間では辿り着くことのできない、心の深みに飛び込んで行きたい。「自分は犬である」と夢想してきた房恵が、思いをよせる女性の飼い犬となるため、謎のバーテンダーと魂の契約を交わす。ところが、飼い主の家族たちは決定的に崩壊していた。オスの仔犬となった「フサ」は、彼女を守ることができるのか? 『親指Pの修業時代』から14年。今、新たに切り開かれる魂とセクシュアリティ。

レビュー

  • 松浦理英子ならではの作品

    犬になりたいという欲望を持つ主人公の変転を描く。 ヒトと犬との関係、登場人物の近親関係などを交えつつヒトとヒトとの関係性を描く。性が重要なファクターの一つになっているのは筆者ならでは。

  • また犬を飼いたくなった・

    私には犬の本当の気持ちなんて分からない。 でも自分の為に何かしようとする姿に救われ心温められる経験を何度もした。 私はもともと犬が好きだったし松浦理英子のファンだったから読み終える頃にはこの本が好きになってた。 犬を・・・犬でなくても動物を飼った事のある人なら人間同士では感じられない信頼や安心を得た事があるのではないか? この本を読み昔飼っていた犬とその犬生を思った。 下記にあるレビューで 飼い主の不幸を描きだしてどうしたいのですか?という意見があったが作者がどうしたかったかよりも自分がどう思うかだと考える。 自分の愛する人が不幸だから愛するのをやめるのか? 犬は尽くしてくれる。なんでこんな自分に懐くのかとも思う 単に餌を貰えるからだとは思いたくない。 犬がどう思ってるかなんてわからない。 ニューハーフの方が女性よりも女性らしかったりするように 犬になりたい人間が犬になればそれはずっと人間の理想とする犬に近いのかもしれない。 ペットは家族だとよくいう 本当の家族が壊れた飼い主はフサを家族と言わず犬は犬といった そしてそれは家族よりも大きな絆だった。 この作品でなんども魂という単語が出る。セクシャリティーについて思考し続けた作者の出した結論なのかもしれない。 魂というものがあるかは分からない。 だが性別や種、境遇そんなものは関係無いのだと思いたい。 愛する人と魂が惹きあうならそれはとても素晴らしい事だと思う。

  • 松浦的通俗小説といっていいのか

    松浦理英子は一貫して、一般的な性愛の概念とは違ったかたちの人間関係のありようを描き続けていて、この小説も変わらずその変奏曲であるといえる。 主人公の房恵が、自らドッグセクシュアリティと呼ぶ「あの人の犬になりたい」という欲望をつのらせ、ついには犬になってしまったあたりまでは、いかにも松浦理英子的な官能表現にさすが、と唸らされていたのですが、物語の思わぬ展開に、全然別の意味で引きずり込まれてしまいました。。。ある意味すごい通俗的な展開。止まらなくなって一気に最後まで読んでしまいましたが。。。 この通俗さはもしかすると小説家としての成熟というべきものなのかもしれないけど、そっちに引きずられて、どうも犬としての房恵改めフサが表面的なものになってしまって、結末も含め最終的に中途半端な感じがしてしまった。 いや、小説としてはすごくおもしろいですよ、飼い主となる梓の家族の人物描写も巧みで、止まらない。たぶんこのほうが一般受けするだろうし。 でも、こういうおもしろさは私は松浦理英子には求めていないのですが。もっと、大学の同級生の久喜とかの関係性を掘り下げていくとかのほうが、松浦小説としては深いものになったと思うけどな、と個人的には惜しまれます。 もし、確信犯的にこのような通俗的組み立てをしているとすればそれはそれであるかもしれないけど、この小説に関しては結局のところ「犬になった女性が遭遇した物語」で終わってしまって、松浦理英子が挑み続けている本質的なところに及ばない気がしてしまいました。松浦理英子だからこそあえて星3つで。

  • 現実か?

    読み進めていくうちに テレビの教育番組で 父や兄に虐待にあった本人が 出演されていました。小説のなかのことがらじゃなく 現実にもこんな 苦しいおもいをしている人がいるのを 知りました。 兄が死ぬ所は、痛快でしたし 他の犬に姿をかえてまた 愛してもらえるラストは、拍手ものでした。 読破に一年かかりました。

  • すみません。面白くない

    『八犬伝』から人物名などをとりながら書かれたファンタジー小説。女が女を好きになってその女の犬になるというおはなし。しかし文章はしまりがなく、リアリズム小説の体裁で書かれているから、ひたすら現実感も、ファンタジー感もなく、だらだらと続くだけで、面白くない。まあ松浦理英子といえばかつてはインテリたちのアイドルだったわけだが、面白くないものはしょうがないですね。

  • 読みごたえあり。

    寡作な松浦さんの待望の新作。じっくり読み、離れられなくなりました!何てよくできたものがたり。。。面白いし、読書の醍醐味満載。何というか、やはり、この方の小説を読むと、そこらのベストセラーがペラペラに見えます。

  • 読んだ人と話してみたい。

    作者の技量を一番感じた点は人間描写で、とくに玉石家の面々の造形はリアリティがあり、個々のキャラクターの心理的傾向に基づいた言動が貫かれていたこと、それが家族という狭い器の中で反響しあって事態が動いていく様子が、作品に影の部分として重厚感を与えていたと思います。 一方で、章でいうと結尾の部分ですが、ここまで描いてきて、この長さと深みを見せながら読者を引っ張ってきてこの終わり方……着地はこれで本当によいのだろうかという疑問は残りました。 ネタバレになりますが、殺人罪のなかでも刑期はもっとも軽かっただとか朱尾に言わせたり、その彼の態度の軟化を好意的に描いてみせたり、そもそも再び犬の身となり再会する筋書きそのものが、あたかも読後感のよさでも指向しているかのようで、骨太な本編に対していささか不釣り合いなのでは、と感じました。 この話はどう終わるのがよいのか、誰がどのタイミングでどうしていたらよかったのか、「よかった」ってそもそもこの場合どういうことか。彼らは殺されて(死んで)然るべきだったのか。などなど、批評的であってもなくても、おおいに語り合う材料に富んだ作品であることは間違いないと思います。 あとごく主観的な感想なのですが、主人公が私と同い年で性別も同じという観点からすると、豊かな筆致で描き出される玉石家の人々と比べて、核となる犬に関する部分をのぞいて人物像がぼんやりしていたことが若干気になりました。 設定上、ヒトとしての部分はぼんやりしていると言ってしまえばそうなのですが、あのお母さんを書くエネルギーでもっと「ヒトとしてはぼんやりしている」30の女を描き重ねたバージョンも見てみたかったです。 なんならその分久喜の登場シーンとかは減らして構わないような。彼の出番の尺に対して作中で果たす役割、効果はやや影が薄いと言わざるを得ないと思うのですがどうなんでしょう。 最後に、全体のトーンについて。 主人公に八犬伝を読んだことがあると言わせておきながら、自分の名前(八束房恵)や玉石梓の名前の符号になんら言及しないことや、つっこみ不在の犬尽くしの地名。朱尾の存在感。 そっちに寄せるんなら、玉石家の人間や嫁、ネットや実在の楽曲といった小道具はリアルさよりもたとえば一段階デフォルメしたり、ひとさじの浮遊感なり狂気をもたせたほうが、ファンタジーとしてのトーンが均一になるのではないか、と思います。 反対に、切れ味鋭いホームドラマか映画のような玉石家の内乱やネットや楽曲というツールを活かすのであれば、たとえば朱尾はもう少し描き込めたのではないか。 写実と幻、鮮やかに対比しているかというとそうでもなく、どちらがどちらに収斂していくのか、期待して読みましたが最後まで構図的な美しさや納得できる交点が示されなかったように感じました。

  • とにかく面白い

    この小説では、性差をめぐる議論が主に会話文によってしばしば展開されている。 松浦氏の他の小説との関連から言えば、本作のテーマがジェンダーであると即決することも決して不自然ではない。 しかしながら、この長編で描かれるのは家父長制の悪しき慣習にとどまらず、家族という閉鎖的共同体そのものである。 そこに見出されるのは彼らのいびつさであったり、またほんの少しの滑稽さであったりする。 (筆者がSOG賞をあえて辞退したのもこのような理由なのではないかと推測してしまう) という風に語れば、いかにも真面目な文学作品といった印象をもたれるかもしれないが、本作の魅力は何と言ってもその面白さである。 本屋大賞にノミネートされるような「ほっこり」系の小説よりもよっぽど娯楽性が高くスリリングであり、読めば読むほど展開が気になって仕方がない。 というわけで結局、二日で読み終わってしまった。

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