作品情報
小さな無責任の連鎖が、法で裁けない殺人を生む。
幼い子どもの死を発端に、新聞記者である父は事故の背後にあった出来事を追い始める。そこに見えてくるのは悪意ある一人の犯行ではなく、さまざまな人の小さな怠慢や自己正当化の積み重ねだった。ミステリの緊張を保ちながら、現代社会の倫理の空洞を突く作品。
レビュー要約
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日常の些細な身勝手さを積み上げて悲劇に到達する構成が強く印象に残る。犯人探しよりも、社会全体に広がる責任の所在を問う読み味が評価されている。
書籍情報
- 出版社
- 朝日新聞出版
- 発売日
- 2009-02-20
- ページ数
- 516ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784022505415
- ISBN-10
- 4022505419
- 価格
- 165 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
ひとりの幼児を死に追いやった、裁けぬ殺人。街路樹伐採の反対運動を起こす主婦、職務怠慢なアルバイト医、救急外来の常習者、事なかれ主義の市役所職員、尊大な定年退職者……複雑に絡み合ったエゴイズムの果てに、悲劇は起こった。残された父が辿り着いた真相は、罪さえ問えない人災の連鎖だった。遺族は、ただ慟哭するしかないのか? モラルなき現代日本を暴き出す、新時代の社会派エンターテインメント!
レビュー
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日常に潜む現代人のけだいと欺瞞
良いものが届きました。 帯付き、新品のようです。 内容は、異色の問題作!
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何度も読み返す本ではないが忘れてもいい本でもない
簡単に言うと、古くからよく言われた「風が吹けば桶屋が儲かる」を現代風に書いたもの。読み進むうちに大体の結末は見える。本作は、直接的でもないのだが社会的なルールではないような少々モラルを欠いた各々の小さな行為の積み重ねが大きな事件を引き起こす物語。こういうこともあるのだとは、日頃うすうす思っていたことなのだが、現代を舞台に具体的な話を読んで、なるほどなぁ、と。本作ではすべてがネガティブ要因ではあったが、実際にはポジティブな良かれと思っての行動が原因となることもあるだろう。また、この小説では要因を作った人たちは現実を知り、後悔、或いは心に棘が刺さったようだが、今の時代では後悔どころか完全に開き直って逆切れする人の方が多いのでしょうね。 本書は何度も読み返す本ではないかもしれないけれど、忘れてもいい本でもないなぁ。
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心に刺さる作品です
終盤は主人公の心情に入り込み心が痛かったです。でも、その先が気になり最初から最後まで一気に読みすめました。これくらいなら大丈夫と誰もが一度はやってしまいそうなこと。その先にこんなことが起こることも想像せずに。自分の良心にも訴えかける作品でした。
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ラストがもう一捻りあれば完璧
ストーリーは、同著者の愚行録同様、章毎に人物が切り替わり、なぜ主人公の子供が死ぬ事になったのか、その伏線となる愚かな行動が延々と語られる。何故死んだのかその理由を知りたくて黙々た読み進められる。 以降ネタバレになりますが、 最後に、主人公自身も1度だけという息子を間接的に殺した愚かな人々と同じ気持ちで、1度だけならとパーキングエリアのゴミ箱に自宅のゴミを捨てたことを、自身が攻めてきた愚かな人々と同じ人種だということを深く悔いるが、できればそのパーキングエリアに捨てたゴミが息子を死に追いやる連鎖が始まるキッカケだった、とかだとより良かったと思う。例えばパーキングエリアに捨てたゴミの中に家庭で出た天ぷら油が含まれていて、犬の散歩をしていた叔父さんは実はそのパーキングの掃除夫として一時期働いていて、片付けた際に油に足を滑らせ腰を悪くし、その際で犬のフンを片付けられなくなったとか。。。素人考えですが、何か始まりが主人公の愚かな行いだったという鬱エンドを期待せずにはいられませんでした。
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恐らくミステリ読み以外は真価に気づけない怪作
とても評価に困る作品だ。 読んでいて楽しかったかと問われれば、楽しい瞬間はひとかけらもない。自己正当化に必死な醜い日本人のオンパレードだし、しょっちゅう登場する日本社会の病理とやらへの批判も紋切り型でまったく胸に響かない。サプライズはひとつもなく、こうなるのだろうなと予想できることが予想できる通りに再確認されていくだけの小説だ。 しかし明らかに、作者はそんなことは先刻承知で書いているのだ。社会派っぽい内容そのものもミスディレクションのひとつだろう。 これは序章に書かれている通りあの歴史的名作に対する挑戦であり、「本当に『全員』が犯人というのはこういうことだ!」と高らかに宣言してそれを成し遂げた作品なのだ。だから被害者の父親がクライマックスで冒頭を思い出して慟哭する時、探偵も犯人であり読者さえも犯人であると指弾してこの小説は「完成」するのである。 恥ずかしながら自分も、推理作家協会賞の北村薫選考委員の選評を読むまでこの点にまったく気づかなかった。この点が北村薫の深読みや過大評価などではなく貫井徳郎の狙いそのものであることは受賞のことばを読めばよくわかる。 しかし、それを措いても、だ。 まったく楽しくなかった。読むのがつらい小説だった。 こんなものを、しかし最後まで読み通せるように書いてしまう作者の筆力が恨めしい。
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深い洞察力を感じる社会派作品
前半がマイナスナンバーから始まる章の設定は、作者の意図的な構成を感じられて効果的でした。 ゼロ章に至るまでは、接点がないごく普通の人々の日常生活を描き、プラスナンバーから始まる後半は、各人の小さなルール違反が偶然の重なり合いにより、一人の幼児の事故死へとつながるという展開です。自分が犯したささいな違反に、この程度なら構わないだろうと見過ごし忘れ去ってしまう人それぞれの身勝手さが連鎖となり、いつかは膨張して、見も知らない他人を撃つ凶器となり得るということです。まさに「乱反射」とは絶妙なタイトルです。 ちょっと無理な展開も見受けられますが、それに勝る作者の発想と構成力にはさすかだと思いました。
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満足
嫁に頼まれて購入。 満足してました。
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タイトルが秀逸
乱反射というタイトルが、作中には一回も出てこないが作品をよく現わしていると思う。 人は誰しも自分が善人だと信じて行動している。しかし、他人にまったく迷惑をかけない、 ルールを一切破らない、で居続けられる人はどれほどいるだろう。 些細な出来事によって他人に迷惑をかけたり、不快な思せたとき その負のパワーは誰かに吸収され、蓄積されるか、すぐさま別の誰かに跳ね返ってゆく。 まさに乱反射を繰り返していき、運悪くその無数の乱反射が1点に集中したとき悲劇が起こる。 息子を亡くした主人公が最終的に行き着いた結論は、うーむとうなるばかりです。 ただ、私見を言わせてもらうならば、この小説の素晴らしいところは、作品の二面性です。 レビューも見ても、ほとんどの方は、この事故を作った些細な罪を犯した人々の罪に対してコメントされていますが、 それと同等か、それ以上に著者のメッセージには、事故の被害者となった主人公の罪、より正確に言えばこの時代の罪を問いていると思います。 主人公も何度も自問自答していますが、事故を作った原因を、関係者にいいがかりを付けているだけではないか というものです。泣き寝入りはしたくないし、すべきではないし、罪ある人には罰を与えなければいけない。 しかしながら、あらゆる不幸にその原因を求めれば、際限がなくあらゆる人が罪人となる現実。 どこかで聞いた言葉ですが、「都会は、生活するには天国、働くには地獄」とかいうのがありました。 これは時代的にもあはてはまる気がする。 この時代は被害者の訴えが受け入れらる能性は高いが、一方加害者になる可能性も高い。
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- 日本推理作家協会賞 第63回(2010年) ・受賞