作品情報
死者を抱えた小さな箱のなかで、祈りが育つ。
元幼稚園を住まいにする語り手が、ガラスの小箱に宿る子どもの魂、手紙の解読、葬送のような儀式を通して、失われたものと生き続ける人々を見つめる。小川洋子らしい静謐さと寓意性が強い長編で、朝日新聞出版から刊行された。
レビュー要約
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死者の魂や小さな楽器のイメージを重ね、喪失を静謐な美しさへ変える筆致が印象的だと評されている。儀式めいたディテールが作品の余韻を強めている。
書籍情報
- 出版社
- 朝日新聞出版
- 発売日
- 2019-10-07
- ページ数
- 216ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 18.8 x 13 x 2.05 cm
- ISBN-13
- 9784022516428
- ISBN-10
- 4022516429
- 価格
- 724 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
『ことり』以来7年ぶりの、書き下ろし長編小説。 死んだ子どもたちの魂は、小箱の中で成長している。死者が運んでくれる幸せ。 世の淵で、冥福を祈る「おくりびと」を静謐に愛おしく描く傑作。 私の住む家は元幼稚園で、何もかもが小ぶりにできている。 講堂、給食室、保健室、人々の気持ちを慰める“安寧のための筆記室"もある。 私は郷土史資料館の学芸員であったバリトンさんの恋人から来る小さな文字の手紙を解読している。 従姉は息子を亡くしてから自分の人生を縮小した。 講堂にはガラスの小箱があり、亡くなった子どもたちの魂が成長している。 大人は自分の小さな子どもに会いに来て、冥福を祈るのだ。 “一人一人の音楽会"では密やかな音楽が奏でられる。 今日はいよいよあの子の結婚式で、元美容師さん、バリトンさん、クリーニング店の奥さん、虫歯屋さんが招待されている。
レビュー
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絶望と孤独と喪失感に包まれた物語だが、不思議と苦難の物語の向こうに「美しい生の刻印」が映る傑作
近未来を舞台とした一種のディストピア小説。ヒロインは元幼稚園に住んでいる女性で、この地域の子供は死に絶えてしまったらしい。産院を壊してしまった事で「もう子供は産まれない」と断言しているので、絶望と孤独が強く漂う。題名の「小箱」とは背景的にはヒロインが子供の頃に(畸形とするために)カマキリを飼ったキャラメルの箱、直接的には後述のガラスケースの事だが、縮小し続ける微細なヒロイン達の世界のメタファーであろう。新聞で作者が「正倉院展」を称して、「残欠」という言葉が印象に残ったと述べていたが、子供達が生きていた頃の「残欠」の拾い集めを試みた物語とも言える。 筆致は何時もの如く静謐で透明感に溢れ、数多の小物を用いたお伽噺の様だが、内容は残酷無比で、その落差に愕然とする。例えば人形。遺児の遺髪を身に纏った人形をガラスケースに飾り、その人形をニックネームで呼び(本名で呼ぶのは禁忌)、遺児の成長に伴って人形をメンテナンスする辺り、怖くて切ない。また、音に関する拘りも強く、遺児の形見の品を楽器とした音楽会(形見の品の持ち主以外には音が殆ど聴こえない)が定期的に開かれたり、歌う事で喋るバリトンさん(への微小な文字のラブ・レターをヒロインは解読している)の様な人物も登場したりするが、遺髪で作った竪琴の音色が美しいとは...。元幼稚園の講堂にガラスケースを収納する姿、ガラスケースを持たない奥さんが"おしゃぶり"を身に着けて元幼稚園の遊具で遊ぶ(偲ぶ)姿、1本しかないテープが擦り切れるまで観る元園児の学芸会の姿、何れも切な過ぎる。「名作は作者より長生きする」という言辞が本作には当て嵌まり過ぎる。 本作で作者は希望を与えない。バリトンさんの恋人は病気療養中だったらしいが、ラストで亡くなった事が分かる。絶望と孤独と喪失感に包まれた物語だが、不思議と苦難の物語の向こうに「美しい生の刻印」が映る傑作だと思った。
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小箱
最新作という事で、早速注文して読みました。集中できず途中で気が散って、読み終わるまでに別の本を三冊間に挟んで読みました。私は最後まで、意味が理解できず、イメージも浮かばず、どこかできっと、目の前が開けてクリアになるだろうと思いながら読みましたが最後まで、わからずに終わりました。私には難解過ぎました。イメージや、想像力に欠けるのではと落ち込むほど時間がかかって読んだ作品でした。
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子供に死なれた人たち
初めから終わりまで、主人公の周りに住む人たちのことや、主人公自身の日常のことが語られていく。物語がどこかで大きく展開するのかと読んでいっても、展開は最後まで少ししかない。登場人物たちが自分たちの子供の死を受け入れている(あるいは受け入れられずにいる)様子が、これでもかと言わんばかりに続く。 元幼稚園に住む主人公の体が幼稚園の家具のサイズに合わせて小さくなっていく(と主人公自身が感じている)様子はまるで『猫を抱いて象と泳ぐ』のリトル・アリョーヒンのようだし、耳たぶにぶら下げて自分にしか聞こえない楽器に耳を傾ける人たちの様子は、その後の『耳に棲むもの』に繋がっていくかのようだ(『耳に棲むもの』では遂に耳の中に楽器たちは入ってしまったけど)。
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最高に悪趣味
小川洋子の作品について、「刺繍する少女」の解説にあった、「小川洋子の作品は残酷小説集だ」という言葉に自分はすごくしっくり来ています。 自分の勝手な感じ方ですがこの作品はすさまじく残酷です。 個人的なことですが、自分は幼いころに祖父を亡くしました。 記憶の中の祖父はいつまでも大きくて、手のひらも背中もずっと広くて包んでくれるあの時の祖父のままです。 自分はもうずいぶん昔に少しずつ忘れて大人になってしまったのに。 祖父を思い出すたびに少しづつ補って、だから私の記憶の中の祖父はきっと本当の姿とは歪んでしまっているのだと思います。だからこそ何時までもそのままでいてほしいから、これ以上変わってしまうのが怖いから、自分は強く思い出すことをしません。 その代わり新しいことを見て聞いて感じてることで優しい過去よりも、もっと楽しい今を生きていけていると信じています。 他の方も仰っていますが、展示ケースの中身は奇形のカマキリを作るための小箱と同じに思えてなりません。 本来の人生であれば事故で大きなけがを負ったり、学業や仕事で大きな失敗をして中退や退職をしたり、恋愛や結婚ができないなどの人生もあるかもしれないのにケースの中では成功し幸せで満ち足りた人生しか歩むことは許されません。 大切に、忘れないために、ずっと愛しい我が子と一緒にいたいから、亡くなった我が子を我が子本人の思いと関係なく本来の形とは全く別の何かに歪めているのが滑稽でなりません。 それが純然な善意と親心だからこそ猶更酷たらしいです。 他にも演奏会の後のシーンは子供たちは笑って去ってるように個人的には見えるのに、そのあと親たちはしみったらしく遺品をずっと探しているところなど惨めでなりません。 作品としては起伏が乏しく日常描写が続くもので大きな事件などもあまりありません。 それゆえに退屈だと感じることもあると思います。 ですが他の様々な人々の描写の、狂ったあるいは真摯な奇行を何故その人は行っているかの背景を少し考えるととても楽しく悪趣味に感じて飽きることがありません。 それに延々古くから変わっていないであろう町の展示や奇行に見える行動を行っている人々を受け入れている街の雰囲気など、どこまでも鬱々としている静謐な様子が最高です! 最後にこの町は過去しか目を向けないから、新しく子供を持とうとするようなまっとうな思考の人はみんな逃げだしてしまったからこそ「子供が生まれない町」になってしまったのではないかと思えてしまいます。 その証拠にラストシーンなんかは、こうやって展示ケースは増えるのか、という感じです。
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どこがおもしろいかさっぱり
小川洋子さんの小説はいつも挫折するが今回も早い段階でやめた。 かまきりをキャラメルの箱に閉じ込めて殺したり、子犬を土手から転がして遊び、あるときそのまま川まで転がって落ちてしまい川に流されて姿が見えなくなった、とか。読むに堪えない。 心底嫌な気分になった。
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なんとも言えない…
頑張って最後まで読みました!っていうのが本音です。小川洋子さんのファンですが、読み進めることが難しかったです。「博士の愛した数式」とか「ことり」、「薬指の標本」が好きです。
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言葉の数々が痛いほどにこちらに伝わってきます
設定も含めて、不思議な読後感だった。 登場人物それぞれにストーリーがあって繊細でやさしく温かみのある感じを受けます。 悲しみの中にも生きる希望、生きがいを感じさせてくれる言葉の数々が痛いほどにこちらに伝わってきます。 「2人で1冊の本を読むのは、手紙を1通やり取りするのと同じよね」 「良い本は、作家より長生きするのね。寿命はあっけないけど・・・。」「本は生き残るのね。」 本に関する言葉が特に印象的で心惹かれますね・・・。
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小川洋子の毒がてんこ盛り
元々小川洋子作品は、不気味で怖い(超絶褒めている)。 美しく澄んだ文章に目を奪われるが、根底に流れているのは毒だ。『小箱」はその毒素がこれでもかと、てんこ盛りの恐ろしさだった。無論恐ろしさと言っても、ホラーの怖さではない。 人の持つ根源的な不気味さや歪みが、静謐な文章の隙間からにじみでてくるような怖さだ。 なんといっても圧巻は主人公の造形だった。子どもたちのいなくなった施設で、題名となっている例の小箱に囲まれて生活している。なんというメンタルの強さ! わたしなら御免こうむりたい。他にも難病の彼女さんの手紙を、彼氏さんの為に紐解く作業とか。窮屈な寝台に無理やり躯を合わせていくとか。子ども用プールで泳ぐシーンとか。深読みしなくても、鳥肌ものであった。「薬指」や「ことり」で描かれていた毒素が炸裂した本作であった。
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