日本の文学賞

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喜べ、幸いなる魂よ

読売文学賞

喜べ、幸いなる魂よ

佐藤亜紀

18世紀ベルギーの小都市を舞台に、信仰と共同体のあいだで揺れる女性の生を描く歴史小説。

歴史小説女性共同体信仰ベルギー

作品情報

祈りと暮らしのあいだに、ひとりの人生が立ち上がる。

KADOKAWA刊の長編。小都市のペギン会に身を置く女性ヤネケの生を通じて、家庭と共同体の緊張を描く。

書籍情報

出版社
KADOKAWA
発売日
2022-03-02
ページ数
320ページ
言語
日本語
サイズ
13.6 x 2.8 x 19.4 cm
ISBN-13
9784041114865
ISBN-10
4041114861
価格
2090 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

不自由な時代を軽やかに駆け抜ける! 第74回読売文学賞受賞作 【第74回読売文学賞(小説賞)受賞作】18世紀ベルギー、フランドル地方の小都市シント・ヨリス。ヤネケとヤンは亜麻を扱う商家で一緒に育てられた。ヤネケはヤンの子を産み落とすと、生涯単身を選んだ半聖半俗の女たちが住まう「ベギン会」に移り住む。彼女は数学、経済学、生物学など独自の研究に取り組み、ヤンの名で著作を発表し始める。ヤンはヤネケと家庭を築くことを願い続けるが、自立して暮らす彼女には手が届かない。やがてこの小都市にもフランス革命の余波が及ぼうとしていた――。女性であることの不自由をものともせず生きるヤネケと、変わりゆく時代を懸命に泳ぎ渡ろうとするヤン、ふたりの大きな愛の物語。

●佐藤 亜紀:1962年、新潟県生まれ。91年『バルタザールの遍歴』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2003年『天使』で芸術選奨新人賞、08年『ミノタウロス』で吉川英治文学新人賞、23年『喜べ、幸いなる魂よ』で読売文学賞(小説賞)を受賞した。著書に『鏡の影』『モンティニーの狼男爵』『雲雀』『激しく、速やかな死』『醜聞の作法』『金の仔牛』『吸血鬼』『スウィングしなけりゃ意味がない』『黄金列車』などがある。

レビュー

  • 切なくて逞しい

    愛おしさに満ちた小説でした。 麻や布、水や板張りの床の匂い、年老いた人間の乾いた匂いが文章の中にあります。 終盤の主人公の年齢が自分と近いこともあり、生きて行く中で向こうから勝手にやって来る悲しみも自分に重ねました。 思うようにならないことが多い中でも何かのせいにせず人々は快活に逞しく楽しみややりがいを見つけ、時代に翻弄されながら生きて、尽きるまで終わらない。 最後は何だか泣けて仕方なかった。

  • 恋愛小説

    「吸血鬼」や「黄金列車」のような骨太の重さを持った作品も良いけど、「金の仔牛」や本作のような軽みを備えた作品も好きだ。佐藤亜紀作品で個人的なベストは「モンティニーの狼男爵」だが本作も匹敵する。要はこの作者の恋愛小説が好きなのかもしれない。

  • 豊潤な物語。

    快楽と言ってもいいが、それだとまだ足りないような気がします。至福というのがしっくりくるようです。本書の読後感、そして読んでいる間の感覚を表現すれば。深緑野分先生の解説もとても良かった。理解する助け、細部に光をあてて見やすくしてくれて、なにより佐藤亜紀先生を、本作を、敬愛していることがよく伝わってきて、気持よく読めました。本書に対して、極上、という言葉は使いふるされた感がありますが、極上で豊穣な物語。文章も、お見事。日本のお作ではなかなか得難い豊穣さは、一貫して流れるユーモアにあるように思われますが、ユーモアとは、けだし余裕かもしれません。余裕、そう、ゆったりと、しかしながら確実に時が重ねられ変化してゆく。ゆったり感じさせられ、豊かな彩りを見せられ、大長編を読んだような手応えを感じさせられながらも、実は分量としては大長編というまで長くもない不思議。贅肉がなく、的確に描く、名人芸でしょうね。抜群に頭のよい女の子がいて、惚れて振り回される男の子。子がとれてもなお振り回し続ける女人。人でなしと呼ばれ、確かにそうとしか言えませんが、けれども憎めない、むしろ魅力的ですらあって。読んでいるなか、幾つか想起させられた作品がありましたが、振り回す女人、ヤネケにはアン・シャーリーを思い浮かべました。アンは魅力的な女の子だったのに、どんどん凡庸な女性になってゆきました。ヤネケはヤネケなりにヤンを愛していて、最期はほろっと、涙は出ませんでしたが、胸が熱くなりました。二人の息子、レオ。深緑先生は解説で、女性蔑視と憎悪むき出しの「鬼子」と端的に言い表されていて、確かにそうとしか言いようがありませんが、なんだか駄々をこねているようにしか思えなくて。不惑を迎え駄々っ子というのも気色が悪いかもしれませんが、傷を後生大事に抱えこみ当たり散らしているようにしか思われない。問題を起こしている人の大方は、こんな具合なのかもしれない、と思ったりしました。抑圧する立場であって、実はそれによって自らを抑圧していて、自分が一番窮屈で、貧しくなってゆく、という。そんなレオにしろ、幼児のかわいらしさときたら。かわいらしく表現できる腕前、ということですが。大きくなってゆくさまも、また。どんどんかわいらしくなくなってゆく様も。移りゆき、変わるもの、変わらないものが、豊潤にあふれ流れしていて。タイトルに引っかけるつもりでもなく、魂が喜び躍動させられるお作でした。

  • 面白く読めました

    面白く読めました。 もっと長く続くと思いました。

  • モーツァルトのあの名曲

    ですね。伊坂幸太郎さんはアイネクライネでしたね。 御興味があれば、キリ・テ・カナワの素晴らしいCDもどうぞ。惚れ惚れする声ですよ。

  • 近代ヨーロッパに自立した女性として生きるという事

    私が最も高くその能力を評価するのは、団体や政府の応援なしに、障害を乗り越えながら目的地に到達するひとびとである。 と、著者がかつて発言していて、まさにそういう話。 ヤネケにとっての障害は、近世ヨーロッパで、女性であった事。ただそれだけ、ただそれだけなのに、ヤネケの希望通りの生活をするのにあたって乗り越える困難はたくさんある。それを軽々乗り越える。そこに感嘆の念を抱かざるをえない。 反対にヤンの障害は近世ヨーロッパで男性である事、いい事と見せかけて、沢山の義務に縛られている。そして、ヤンは、それをヤネケのようには乗り越えられない。意に沿わない事、ままならないもの受け入れる。 そんな二人を軸に回るお話です。 ヤケネの確率論─ばらつきが、繁殖によって生じるばらつきが、神の与える機会である、と論じられる様は鳥肌がたちました。 特筆すべきは、二人の子であるレオの書き方。ネタバレになってしまうので詳しくは描かないですけど、主人公の子供をこんな風に書ける人って、世界中探しても佐藤亜紀さんしか居ないんじゃないかと思う。しかも中途半端な退場は許さず、最後まで描いているという。散々人でなしだと言われるヤネケだけど、最後のシーンでのレオについての言葉、私は深い愛を感じました。

  • すがすがしい

    時代が大きく変わる過渡期のヨーロッパ。それぞれの人生を無我夢中で生きた人たちの姿が、小気味のいいパリッとした筆致で書かれています。女であること、男であることの不自由さ。義務から脱出し自分の道を究めていく至福と、義務に身を捧げつつ多くのものを積み上げていく尊さ。 つかず離れずという関係だった年老いたヤネケとヤンが、最後にやっと二人きりでまみえる場面は、しみじみとこみあげてくるものがある。見事です。

  • 相変わらず素晴らしい

    相変わらず充実の読書体験を味わえる作品。 佐藤亜紀のなかではかなり読みやすいし入り込みやすい作品だと思う。 もっともっと評価されていい作家さんなのに・・・

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