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偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理 (角川文庫)

日本推理作家協会賞

偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理 (角川文庫)

降田天

元刑事の交番勤務員が容疑者と向き合う連作短編集の表題作。老老詐欺をめぐる脅迫状を入口に、人の弱さと嘘を静かに追い詰める。

短編ミステリ交番詐欺心理

作品情報

逃げ場のない対話が、隠された嘘を少しずつほどく。

表題作を含む短編集として角川文庫から刊行。受賞短編の初出そのものではなく、単行本化された収録書籍のISBNを記録した。

レビュー要約

  • 対話で心理を追い詰める構成と、生活に近い犯罪の重さが評価されている。派手な事件よりも、人が嘘をつく理由へ迫る点が魅力である。

書籍情報

出版社
KADOKAWA
発売日
2021-09-18
ページ数
288ページ
言語
日本語
サイズ
10.6 x 1.1 x 14.9 cm
ISBN-13
9784041118764
ISBN-10
404111876X
価格
704 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品

この”おまわりさん”からは逃げられない。日本推理作家協会賞受賞作! 老老詐欺グループを仕切っていた光代は、メンバーに金を持ち逃げされたうえ、『黙っていてほしければ、一千万円を用意しろ』と書かれた脅迫状を受け取る。要求額を用立てるために危険な橋を渡った帰り道、へらへらした警察官に声をかけられ――。第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作「偽りの春」をはじめ、“落としの狩野”と呼ばれた元刑事の狩野雷太が5人の容疑者と対峙する、心を揺さぶるミステリ短編集。

●降田 天:執筆担当の鮎川颯(あゆかわ・そう)とプロット担当の萩野瑛(はぎの・えい)による作家ユニット。少女小説作家として活躍後、『女王はかえらない』で第13回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、降田天名義でのデビューを果たす。2018年、「偽りの春」(本書所収)で第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。他の著作に『彼女はもどらない』『すみれ屋敷の罪人』『ネメシス4』がある。

レビュー

  • 満足の吐息

    久々に一気読みしました。読み終えて、満足の吐息です。短編五作品ですが、主人公となる狩野と部下の月岡は毎回登場します。狩野の過去を伏線として張ってありますので、連作短編集といっていいでしょう。 特に「見知らぬ親友」から続けて「サロメの遺言」を読むことをオススメします。 深いため息が出ました。 「落としの狩野」の異名を持つ主人公の狩野。とても魅力的です。 冴えないへらへらした容姿で書かれていますが、洞察力の凄さ、その説得力に脱帽です。 人の行動のほんの些細な違和感を突いてきます。 読んでいて、私が容疑者で本当に追い詰められていくようにハラハラさせられます。 「もういいやん、見ぬかないで!」と言いたくなります。特に「偽りの春」 ラスト、泣きそうになります。 人の心理描写が素晴らしいです。 妬み、猜疑心、葛藤。 そうそう、こういうのを読みたかったのよね!と思いました。 どこにでもある日常。 どこにでもいる人たち。 表面上の顔と裏の顔。思惑。それに裏付けされた行動と結果。 降田天のお名前でのデビュー作品「女王はかえらない」も面白かったですが、あちらは展開自体と設定に妙があり、どうしてもそのトリッキーさに目がいってしまい、作者の実力は計れませんでしたが、この連作短編集はどの作品も見事でした。 今後もずっと読んでいきたいた思える作家に久々に出会えました。 この狩野雷太をシリーズ化して欲しいなと思ったら、2021年9月末に単行本として新作が出るようで、今からとても楽しみです。 本書は中古で買ったし、基本ミステリーは読み返さないので、読み終えたら処分するつもりでしたが、本棚に収納します。 処分するのは惜しくなりました。 そのくらい、秀作です。

  • 油断禁物の駅前巡査-登場!!

    ー交番勤務の狩野雷太巡査の5編からなる短編集ー ①鎖された赤→拉致された少女に蔵の中で行われる淫靡な行為が、 代を替えて、再び行われる悲しき連鎖。 ②偽りの春→高齢男性を相手にする結婚詐欺の女グループ。その 女ボスに息をつく間も与えず、職質攻めで落城させる狩野の洞察力 の凄さとテンポの良さ。 ③名前のない薔薇→花(バラ)泥棒の素敵な優しき恋心物語。 ④見知らぬ親友→すれ違いが生んだ友への想い。親友は親友で あらずして.........。 ⑤サロメの遺言→女性天才芸術家に対する倒錯した愛の果てに...。 一番面白かったのは② 一番好きなのは③

  • 交番モノではなかった!

    コロンボ方式の犯人がおまわりさんにジワジワ追い詰められていくサスペンス。 第1話は犯人の暗い欲望、犯行、どうしても交番に行かなくてはならなくなる焦燥、なめてたおまわりさんに少しずつ退路を塞がれてゆくハラハラ、意外な真相、の流れが最高にスリリングで面白かった。 でも2話以降はたまたま犯人がおまわりさんに遭遇して疑われて…で交番が舞台ではないので犯人が運が悪かっただけみたいに思えておまわりさんの神がかった観察力、推理力にも白けてしまう。 しかも同僚は「刑事に戻れ」と執拗に迫るし。元有能な刑事が過去の経緯のせいで交番勤務になったというよりも、生粋の巡査がたまたま交番に来た怪しい人物の謎を毎回暴いてしまうような交番ならではのフォーマットが良かったな。刑事時代の過去の話もますます交番から遠ざかるので不要。 ただミステリとしてはどの話も面白かったので普通に推理短編としては良作。

  • じわじわと迫って来るドキドキ感が、めちゃくちゃ面白い

    犯人側の視点で、この天才おまわりさんとの心理戦が繰り広げられます。 ①少女を誘拐した犯人の話 ②結婚詐欺グループのリーダーの話 ③元泥棒と園芸家の話 ④同居人に嫉妬する女子大生の話 ⑤復讐に燃える芸術家の話 5つに分かれた話が、最後の5話目で、大きな伏線を回収するかのような構成です。 漫画「デスノート」や「ハンターハンター」が好きな方は、気に入るかもです。

  • 既存の枠を超えた、面白い作品

    ネットを巡り、面白いミステリはないか、と探っていたところ、引きつけられたのが、本作品。 5つの短編を収めた作品集。 「上倉駅前交番狩野雷太の推理」とあるとおり、狩野雷太という警察官が探偵役のミステリです。 作品構成は、一見すると、「倒叙推理」。 つまり、犯罪らしきものを犯す人物が描写され、その後、狩野が登場、推理するという段取りです。 ただ、例えば、昔のテレビシリーズ「刑事コロンボ」などですと、犯人側が次第に追い詰められて、遂に罪を認めざるを得なくなり、終了、なのですが、この作品集は違う。 この推理の過程で、さらに予想外の展開があり、犯人側も気づいていないような新事実が明らかになります。 思わず、騙されてしまう傑作揃いです。 この作品ページにも、「卓越した筆力で選考委員をうならせた」とあり、次に著名ミステリ作家の選評が載っています。 普通、こういうのはそれなりに間違いではなくとも、ちょっと大げさ、というものがあったりします。 でも、今回は違いました。その選評を信じてよい、と私は感じています。 5つの短編の優劣ですが、出来栄えは、日本推理作家協会賞を受賞した「偽りの春」が一番だと感じます。 狩野雷太という探偵役の鋭い推理が光る、逸品です。 他の4編は、読む方の好みだと思いますが、個人的には、最後の「サロメの遺言」かな。 じつは、狩野雷太には、あるいわくありげな過去があって、各作品にほのめかされているのですが、その過去が、意外な物語展開の中で明かされているところは、締めくくりの一作に相応しく感じましたので。 このミステリ作家、奥付をみると、執筆担当とプロット担当のふたりの共同名義だそうです。 作風は違いますが、過去の巨匠、エラリー・クイーンを想起させますね。今後も、面白そうな作品があれば、読んでみたいと思っています。

  • 倒叙モノ好きにはたまらない短篇集

    古畑任三郎シリーズが好きな人、この本は買いです。 なかなかめずらしい倒叙で統一された短篇集。 犯人はわかっていて、そこへ主人公の警察官(いまは交番勤務、昔は刑事課の切れ者)狩野がどうせまっていくかを楽しめます。妙に嫌みったらしかったり、人の隙をついたかと思いきやとぼけてみたり、狩野の魅力にはまることまちがいなし。

  • こちらは短編集

    それぞれの犯罪者の話がとても味がありこれだけで十分物語りとして成立する。 捕まえないで欲しいと思うのだが、そこに絡んでくるのが狩野雷太。 訳ありの交番勤務のお巡りさん。 核心を突く質問にドキドキしますよ。 この短編集で交番勤務の理由が明かされている。 「名前のない薔薇」には泣かされた。 日本推理作家賞(短編部門)受賞も頷ける。 シリーズ化して欲しい「狩野雷太」です。

  • 5つの短編、それぞれに違った面白さがある!

    面白かった!経験豊富な警察官が、一見、ノンビリとしているようで、しかし、ジリジリと犯人を追い詰めていく描写が心地よい。そこに、犯人の悲哀や社会の描写が加わり、短編ながら濃密な読後感がある。

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