書籍情報
- 出版社
- KADOKAWA
- 発売日
- 2021-03-25
- ページ数
- 336ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 10.6 x 1.3 x 14.9 cm
- ISBN-13
- 9784049136838
- ISBN-10
- 404913683X
- 価格
- 715 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
どこまでも蒼いこの島で――未来を描けない僕と彼女のひと夏の恋物語。 僕の世界はニセモノだった。あの夏、どこまでも蒼い島で、君を描くまでは――。 美大受験をひかえ、沖縄の志嘉良島へと旅に出た僕。どこか感情が抜け落ちた絵しか描けない、そんな自分の殻を破るための創作旅行だった。 「私、伊是名風乃! 君は?」 月夜を見上げて歌う君と出会い、どうしようもなく好きだと気付いたとき、僕は風乃を待つ悲しい運命を知った。 どうか僕といた夏を君が忘れないように、君がくれたはじめての夏を、このキャンバスに描こう。
●国仲 シンジ:第27回電撃小説大賞≪メディアワークス文庫賞≫受賞作「はじめての夏、人魚に捧げるキャンバス」でデビュー。
レビュー
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今、この時代にこそ読むべき
沖縄のとある民家にて、祖母からヒロインである風乃へ、寓話を語り聞かせる場面がプロローグとなっている。内容は『人魚伝説』といい、1771年、沖縄の八重山諸島一帯を襲った明和の大津波、そこから生まれた人魚にまつわるお伽話だ。しかし祖母曰く、実際にあった話だという。 本編からは東京の男子高校生、海斗の一人称視点となる。美大を目指す海斗は沖縄の離島「志嘉良島」を訪れ、風乃と出会う。天真爛漫な彼女に振り回されながら、やがて海斗は一点の油絵を描き上げるがーー。 印象としては綾崎氏の帯による売り文句通りとにかく「王道」。 意外な展開こそ少ないが、丁寧な描写による没入感と展開に対する納得感がある。特に後半に明かされる風乃の健気さや海斗の情熱と優しさは、ボーイ・ミーツ・ガールとしての押さえるべき部分を的確に押さえている。キャラクター、構成演出、文章力など新人賞における採点項目は高水準で満たしていると言っていいだろう。 それだけでは単なる秀作となるが、よくある琉球方言の皮を被せた表面的な沖縄小説ではなく、物語の根幹に組み込まれた沖縄の歴史や考え方が強い個性とリアリティを放っている。 さらに、今年は東日本大震災から10年の節目となる年である。作中でも何度となく比較として登場しているが、震災を経験した者からすればあれはまさに「呪い」に他ならない。 復興するにあたって志嘉良島は土着宗教に頼ったが、本当の意味で呪いから立ち上がるには人の力が欠かせない。お互いがもたれかかる依存のような助け合いではなく、将来を見据え、お互いの心に嘘がない協力でなければならない。それが海斗と風乃の優しい選択によって示されている。 一見するといわゆるセカイ系の王道ボーイ・ミーツ・ガール。しかしその裏には強いメッセージが隠されている。 この作品が、震災の節目となる今年、東北から遠く離れた沖縄出身の作者から、しかも電撃小説大賞というエンタメの畑から見出されたことに、深い意味があるように思えてならない。一読をお勧めする。
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八重山を舞台に少年少女が「生きる意味」と出会うまでを描いた物語。作者の故郷・沖縄の風土がよく反映されている。
第27回電撃小説大賞【メディアワークス文庫賞】受賞作品 物語は東京の高校三年生・高木海斗が進学を前にした夏、沖縄行きを持ち掛けられる場面から始まる。かつては神童として持て囃されていた海斗だったが中学時代のある事件をきっかけに感情が乗らない技巧だけの絵しか描けないスランプに陥り、他人に自分の絵を見せない態度を貫いてきた。そんな頑なな海斗も有名美大への進学の為には何かの形で殻を破って実績を残す事が求められる事になり、一人で絵を描ける場を提供し続けてきた画商・秋山の勧めもあって沖縄を訪れる事に。 石垣島から高速船で一時間、「おーりとーり」の看板と人魚の像が出迎える志嘉良島を訪れた海斗は仕事があるという秋山とも別れて一人島に残される。紹介された民宿へ向かう道すがら海斗は東京都は全く異なる星空の下、岩の上に腰掛けて鼻歌を歌っている少女・伊是名風乃と出会う。すぐ傍にいたウミヘビを足で捕まえるなど、命など全く惜しくない様子で「今この瞬間にやってみたいと思った事を全部する」という風乃の奇行に戸惑う海斗だったが、一方的に懐かれて島中を案内すると一方的に宣言される羽目に。だが、島には海斗が知らない事情が不穏な空気を醸しており…… 新人賞受賞作にしてはえらく読み易い、というのが読み終えての第一印象。同期の大賞作品「ユア・フォルマ」でも感じた事ではあるのだが今回の審査員は「読み易さ」を重点ポイントとして評価したのではないか、とそんな事を思ってしまう位にストレスフリーでスルスル読める。その上で作品の舞台となる沖縄の風土を上手い事物語の中に織り込みストーリーに反映させる手腕は見事。ただ、若干読み易さ重視故にキャラの掘り下げが弱く感じられた部分があるのが惜しい。 物語の方はボーイ・ミーツ・ガールをベースにしながら、八重山諸島を舞台にある種の「閉鎖社会もの」的な要素を絡ませてある。有り余る才能故に中学時代にぶつけられた悪意や嫉妬が元で自分の感情を乗せない、技巧だけの絵しか描けなくなった海斗が沖縄の離島で育った天真爛漫な少女・風乃と出会い自分を変えていく……という点だけであれば些か陳腐になってしまうが、そこに沖縄独特の土着信仰の世界を絡める事でオリジナリティを出す事に成功している。 最初から随分と琉球方言が自然に飛び交うので不思議に思ったのだけど、後書きによれば作者は石垣島で生まれ育った方だそうで作品の中にも地の人ならではの沖縄の風土が反映されている。沖縄はちょっと面白いぐらいにシャーマニズムが生活と結びついて生き残っている地域なのだけど、例えば「どうにもやる事為す事が上手くいかない」という誰しも人生の中では経験するであろう不運の連続を前に精神が弱った時、カウンセラーに頼るのと同じ様な感覚で「ユタ」と呼ばれるある種のシャーマンに相談する風習が残っていたりしているのは「医者半分、ユタ半分」という言葉からも窺い知れる。 問題は沖縄に限らずシャーマニズムに支配された社会は故人の問題だけでなく、共同体の問題も人為を尽くして解決できない場合にはシャーマンの判断に委ねてしまう所がある部分かと(この辺りは中島らもの「ガダラの豚」なんかでも描かれていたが) 物語の前半は他人を遠ざけていた海斗が開けっ広げな性格の風乃に振り回されながらコバルトブルーの海に囲まれた八重山の離島を連れ回される、まるで沖縄の日差しの様な明るさが基調となっているのだけど、陽が明るければ明るいほど影は濃くなる様に海斗が島に滞在する事に反対する島の住人の醸し出す不穏さが良い感じでコントラストを産み出している。 物語の中盤からはその影の部分が少しずつ色を濃くしていく。風乃との交流の中で少しずつ過去に向き合い始め、やがて風乃に自分が受けた傷の事を告白する海斗だけど、これなど環境によるカウンセリングと土着のカウンセラーたる「ユタ」によって癒されてきた土地の特性を反映させていると言っても良いのではないだろうか? その一方で作者は八重山独特の「昏さ」も作中に反映させようとしている事が伺える。八重山諸島は歴史上琉球王朝から重税を課せられてきた厳しい土地なのだけど、その中で共同体を維持する為に個人を犠牲にする風土が「トゥング田」や「クブラ割り」といった悲しい風習を生んできた事は広く知られている。そしてその共同体として生き残っていくための厳しさは環境破壊や高齢化といった問題を抱えたままの島々では現在進行形の問題なのである。個人と共同体の関係というのは風土がモロに反映される部分であり、時に個人を犠牲にする事で共同体を生き延びさせてきた八重山の歴史を直視し、ストーリーに反映させようとした作者の心意気には大いに喝采を送りたい。 そんな共同体維持の為に自らを捧げようとした少女を助ける為に、自分の傷を乗り越えて絵筆をとった海斗は立ち上がるのだけど……本作は何の犠牲も無しにハッピーエンドを迎えさせてくれるほど甘くは無い。海斗は大いなる犠牲を払う羽目になるのだけど、それ故に見失っていた「生きる目的」を見付けるが故に読者には救いが与えられる形となる。そして同時に不自然なほどの明るさの中に諦念を抱え込んでいた風乃にもこの「生きる意味」というテーマは反映されている。共同体の中で与えられた役割に自分自身を埋没させようとしていた少女が「個人としての自分はどうしたいのか?」を問い直すのは「生きる意味」を見出そうという行為そのものではないだろうか? ただ、欲を言えば登場人物の背景というか思考・行動を産み出す「動機」の部分が若干弱く感じられた。具体的に言えば海斗が「自分の感情を得に乗せられない」というスランプに陥った事件の経過があっさりし過ぎていて序盤から強調されていた海斗のウジウジとした内向性の背景としては若干弱い。また、風乃の抱えている事情を知りながら自分は本土へ出て行きたいと願う少女・京花が抱え続ける後ろめたさはもう少し強調した方が終盤での島を裏切る様な行動の説得力が強くなったのではないだろうか?人物造形は悪くないだけにそのバックボーンたる「動機」にはもう少し拘りを持って欲しかったところ。 ともあれ、技術的には文章力・構成・人物造形と新人作家とは思えないぐらいの完成度を見せ、その上で自分が生まれ育った八重山という土地の歴史や風土をストーリーやテーマに反映させようとした点は大いに評価したい。特定の土地に根差した視点からストーリーやテーマといった作品の根幹となる部分を紡ぎ出すという手法を打ち出してくる新人作家さんは中々お目に掛かれないだけにこれからも期待したい。
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生きていてくれるだけでいい
この作品を予定調和のテンプレ小説だと感じる読者さんもいると思うので、あくまで主観的・個人的な好みでの評価だとお断りしておきます。 画家を目指す東京の高校3年生高木海斗が、夏休みを志嘉良島で一人の少女風乃と過ごす物語です。 少女には重い宿命が待ち受けているのだけど、海斗はそれを知りません。「その時」が来るまで二人がどのように時間を重ねていくか、二人で過ごす一瞬一瞬を追いかけたくなるストーリーです。 海斗の才能を認め、それを輝かせようと手助けする大人たち。 海斗が志嘉良島で描く渾身の一作。 文章からあふれでる絵の魔術のような鮮やかな色彩。 コンクールの審査員長と同席したことが不正ではないかと、公正であることを大切にする海斗の純粋さ。 志嘉良島の儀式を田舎の因習と鼻で笑うような愚をおかさず、島の価値も個人の願いもどちらも正しく、海斗が自分が間違っていることを重々理解した上で自分の意思を貫いていることがしっかり書かれています。正しさとか善悪では測れない領域があることを強く訴えかけてくる作品です。 海斗は大きな代償を払いますが、私にとっては読んでよかったと思える小説でした。 ところで、海斗が書き上げた絵の画題、出てきましたっけ?
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初小説なのに一気読み。
小説なんて今まで読んだ事はなく、途中で飽きて読まなくなったりする性格だったが、初めて一気に読んでしまった。 一言で言うと面白い。 あの頃の自分の青春と重ね合わせ、この世界に引き込まれた。 小説っていいな。と気付かされた作品。
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全体の雰囲気が良い
一気に読めました。面白い。
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面白い
1日で読めるほど楽しくワクワクします! 是非読んでみてください!
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いい(≧∇≦)b
良いね(≧▽≦)
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伝統、しきたり、溢れる想い
日本全国どこの地域にでも様々な風習が残っています。そこに焦点をあてながらも少年と少女の物語が進んでいく中で登場人物たちの葛藤、すれ違いが描かれていてもどかしい気持ちになりました。
関連する文学賞
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