作品情報
旅の座席で隣り合った子どもが、老優を意外な謎へ導く。
講談社文庫『グリーン車の子供』に収録された表題作。戸板康二らしい演劇的な観察眼と洒脱な会話で、日常のずれから謎を立ち上げる。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 1982-08-01
- ページ数
- 303ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784061362376
- ISBN-10
- 4061362372
- 価格
- 1 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
Amazon.co.jp: グリーン車の子供 (講談社文庫 と 2-5) : 戸板 康二: 本
レビュー
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舞台ならではの
『團十郎切腹事件』に続く中村雅楽シリーズの第2弾。 「滝に誘う女」「隣家の消息」「美少年の死」「グリーン車の子供」「日本のミミ」「姉の縁談」「お初さんの逮夜」「梅の小枝」「子役の病気」「二枚目の虫歯」「神かくし」の11篇が収められている。 ミステリとしてはどうしようもない。他愛ない楽屋落ちのような結末ばかりで、しかも現実味のないものがほとんど。本格ミステリ・ファンはがっかりするばかりだろう。 しかし、演劇界のミステリとしては上々だ。いかにも俳優が起こしそうな事件があったり、歌舞伎界に特有の事情がネタになっていたり、本歌取りがされていたり。 そのあたりを楽しめるなら、読む価値があるかも。
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魅力あるシリーズです。
今回はじめてこのシリーズを読んだのだが、ぼくはこれ大いに気に入った。各作品が短く小気味よくまとめてあるのも好感もてるし、なによりこのシリーズはあのシャーロック・ホームズの様式をそのまま踏襲しているのだ。謎があり、読者にはわけのわからない手掛かりを得て、雅楽一人がすべてを把握し、最後に謎解きがされる。雅楽と記者竹野のキャラのスタンスもそっくりそのままだ。これがまず第一に気に入った。竹野が雅楽に寄せる信頼と期待がストレートに読者に伝わってくる余裕のある書きっぷりも良かった。ただし、肝心のミステリの部分についてはそれほどサプライズはない。『作られた謎』としての作為が見え見えなので、そこに驚きはないのだ。いってみれば筋道をつけられたミステリとでもいおうか。構築された謎と解明のプロセスがあまりにもうまく型にはまりすぎているのでいささか御都合主義的な肩透かしを感じてしまうのである。だが、そうであるにも関わらず本シリーズは充分魅力的だ。ミステリとしての興趣以上に物語としての切れ味が抜群なのだ。すべてがそうだとは言えないのだが、ここに収められている短編のラスト一行にはまったく唸ってしまった。この最後の言葉のもたらす余韻が素晴らしい。これを味わう喜びがこのシリーズにはあるのだ。 読み始めるまでは馴染みの薄い歌舞伎の世界や時代的な格差が気になって、少々手が出し辛かったのだがこれはすべての作品を読まないと気が済まなくなってきた。もう古本には頼れないかもしれないし、創元の全集を買うことになりそうな気配である。
関連する文学賞
- 日本推理作家協会賞 第29回(1976年) ・受賞