日本の文学賞

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ガラスの靴・悪い仲間 (講談社文芸文庫 やA 2)

芥川龍之介賞

ガラスの靴・悪い仲間 (講談社文芸文庫 やA 2)

安岡章太郎

「悪い仲間」「陰気な愉しみ」は、安岡章太郎の初期短編で、第29回芥川賞を受賞した二作である。幼少期からの孤立感、やましさ、病と家庭への違和を、軽妙さと自嘲を帯びた文体で描き、第三の新人を代表する作家の出発点を示した。

第三の新人孤立感やましさ芥川賞

作品情報

やましさと孤立を軽妙な文体で捉え、戦後文学に新しい内面の声をもたらした受賞二作。

「悪い仲間」「陰気な愉しみ」は、1953年に安岡章太郎が芥川賞を受けた初期短編である。講談社文芸文庫『ガラスの靴・悪い仲間』には、デビュー作「ガラスの靴」とともに両受賞作が収録され、幼少からの孤立感、“悪い仲間”との交遊、“やましさ”の自覚、父母との関係、脊椎カリエスなど、安岡文学の自己形成の原点を示す初期名品集として紹介されている。国立国会図書館の書誌でも、同文庫は350ページ、ISBN 9784061960534 の図書として確認できる。

書籍情報

出版社
講談社
発売日
1989-08-03
ページ数
350ページ
言語
日本語
サイズ
10.8 x 1.2 x 14.8 cm
ISBN-13
9784061960534
ISBN-10
4061960539
価格
1540 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

初期作品世界デビュー作「ガラスの靴」芥川賞受賞「悪い仲間」「陰気な愉しみ」他、安岡文字一つの到達点「海辺の光景」への源流・自己形成の原点をしなやかに示す初期短篇集。幼少からの孤立感、“悪い仲間”との交遊、“やましさ”の自覚、父母との“関係”のまぎらわしさ、そして脊椎カリエス。様々な難問のさなかに居ながら、軽妙に立ち上る存在感。精妙な“文体”によって捉えられた、しなやかな魂の世界。 幼少からの孤立感、“悪い仲間”との交遊、“やましさ”の自覚、父母との“関係”のまぎらわしさ、そして脊椎カリエス。様々な難問のさなかに居ながら、軽妙に立ち上る存在感。精妙な“文体”によって捉えられた、しなやかな魂の世界。出世作「ガラスの靴」をはじめ、芥川賞受賞作「悪い仲間」「陰気な愉しみ」ほか初期名品集。

レビュー

  • 「悪い仲間」論

    本作には三人の主人公が登場する。語部であり大學予科生の《僕》と、《悪い仲間》となる藤井と倉田である。時代ははっきりしないが、おそらく満州事変が勃発した爾時であり、所謂一九四五年までの《一五年戦争》が濫觴したあたりとおもわれる。 まず、大學予科生の僕は不良少年藤井と邂逅し、飄然と《悪》をなす藤井の大胆なる性格に蠱惑される。と雖も、藤井の《悪》とは、無銭飲食や食器食物の偸盗といった範疇である。藤井が故郷へ帰還すると、藤井の《かわり》に、僕は純粋無垢なる旧友の倉田に《悪》を伝授してゆく。倉田を魅惑してゆくなかで、僕は倉田より優位な立場にあるとおもっていたが、其処に藤井がまた上京し、倉田と昵懇になってゆく。畢竟、僕+藤井+倉田という《悪い仲間》三人組が結成されるのだが、僕はやがてふたりを《裏切って》、従順なる学生になろうとする――。 前述のとおり、物語の設定年代が満州事変爾時となると、《悪い仲間》三人組は、『星の王子さま』の三本の樹木のように、単純明快に《日独伊三国同盟》の隠喩として読めるし、斯様に解釈するのがまず自然かとおもわれる。同時に、本作は戦争の隠喩というよりも、即物的に《三人の虞犯少年の青春》を描破した青春小説として見事である。三人にとっての《悪》とは体制、畢竟、家族や世間へのささやかな抵抗であり、おおくの少年が経験する反抗期にほかならないのだが、僕と藤井と倉田、其其の心理の振幅、複雑なるからまりあいを描出する《ねちっこさ》は見事である。其処に、何時徴兵されるかわからない戦前の雰囲気が背景となり、戦争の隠喩、戦争そのものの肉薄、戦争へと体制化する社会への反撥という重層化が複雑になされる。また、倉田の失踪からなるクライマックスにおいては、前述の《日独伊三国同盟》の隠喩としての構造は破綻し、語部である《僕》の巧妙なる裏切りが意味深長に描出される。物語の構造は一読して非常に複雑で一度読んだらやめられない。戦後まもなくの作者でしか描出できなかった、戦前の青春の群像劇として名篇である。 (筆者は雑誌『群像』70周年記念号の名作短編集で読んだものの、作品が膨大なため、こちらに各論を揮毫させていただきました。本短編集全軆の評価ではなく、「悪い仲間」個別の評価となります。すみません。)

  • 購入してよかった。

    第三の新人の著作本は書店で簡単に手に入れにくくなってるみたいでちょっと残念です。中でも安岡章太郎は一番の押しなので~読めてよかったです。

  • 甘酸っぱい匂いのする最初期の短編集

    1989年講談社文芸文庫刊。作家・安岡章太郎(1920~2013)の短編集。AMAZONのこういった書籍を紹介するときの悪弊により、収録作品が記されていないことが多く、あらためて記載させていただきますと、 1. ガラスの靴 2. ジングルベル 3. 宿題 4. 愛玩 5. 蛾 6. ハウス・ガード 7. 陰気な愉しみ 8. 悪い仲間 9. 剣舞 10. 勲章 11. 築地小田原町 12. 吟遊詩人 13. 王様の耳 となります。デビュー作の1の発表は1950年、その後順調に作品を書き続け、1953年に7と8で芥川賞を受賞していますから、デビューから5年くらいの間の作者最初期の短編集と言えるでしょう。まずは1940年前後という、今とは全く価値観が異なる時代に繰り広げられる、彼の学生時代の摩訶不思議かつ、やるせないエピソード満載の3、8、11、13。そしてまともな生活能力を有する者が誰もいない、戦後の安岡家に容赦なくのしかかる生活苦と、そこから生まれる不思議なペーソスを描いた2、4、5、7、9、10など、安岡ファンにはお馴染の、独特の匂いを放つ世界が、読者たちの心を虜にすることでしょう。ただし瑞々しい初恋の始まりと、陰鬱な終わりを描いた1は、その後の安岡作品の中にあっては異質な物語かも知れません。 私的に本書の一押しの作品は、吉行淳之介の文学的自伝「私の文学放浪」内でも、当時の安岡短編小説の最高傑作と絶賛されている4。他もユニークとしか言いようのない作品ばかり。今回久々に読み直してみても、初期の安岡作品は全然古くなっていません。若い読者に是非読んでいただきたい作家の一人。オススメです。

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