作品情報
鞄の中にしまわれたもののように、人間の不安が静かに姿を現す。
講談社文芸文庫で再刊された短編集。表題作を中心に、吉行文学の乾いた感覚と幻視性を味わえる。
レビュー要約
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日常の物に不気味な意味を宿す筆致が評価されている。静かな文体の奥に、関係のずれや死の気配が漂う。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 1990-05-01
- ページ数
- 301ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784061960817
- ISBN-10
- 4061960814
- 価格
- 1680 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
自分の死体を鞄に詰めて持ち歩く男の話。びっしりついた茄子の実を、悉く穴に埋めてしまう女の話。得体の知れぬものを体の中に住みつかせた哀しく無気味な登場人物たち。その日常にひそむ不安・倦怠・死……「百メートルの樹木」「三人の警官」ほか初刊7篇を含め純度を高めて再編成する『鞄の中身』短篇19。読売文学賞受賞。
レビュー
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ずっと忘れられず
昔、高校の授業で「蠅」を習いました。 もう10年以上前のことなのに、強烈な印象が残っており いつも気になっていましたがついに購入しました。 今回初めて読んだ他の短編もそれぞれ独特な世界観なので また忘れられない作品に出会えたなぁと思います。
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見直されるべき「第三の新人」たち
「第三の新人」と云われながら、彼の系譜はまさしく昭和以前から続く純文学の系譜であることは間違いない。 確かに、吉行の真骨頂は情事や性風俗を扱った作品であるし、それが新しいと云われたことも納得できる。しかし、それ以外の作品は前衛的な技法には走らず、日本で培われた伝統が垣間見える。 「錆びた海」はいい例で都会の郷愁、そしてそれと対置される自然の荒々しい海。私と、上京してきた画家の対置。近代化することによって汚れていく都会の自然風景と風俗…全くもって、嫌悪されるようなモチーフを使いながら、その文章の美しさは魔術と言える。 「手品」は淡い恋に敗れ、東京の夜の街を徘徊する、少年はそれでも貞操を捨てきる勇気が持てないという結末。昔からテーマにされているので、恋に破れ情事に走る物語はいくらでもあるが、この、「捨て切らない」ところが絶妙のさじ加減であり作者の力量を感じる。それはどこか儚く哀しいが、綺麗で澄んでいる。この美しさは日本的美観の系譜に属している。 一方で、意欲的として「埋葬」「曲った背中」「古い家屋」などは怪奇譚としての色が濃い。その奇譚の延長として「鞄の中身」は夢をテーマにした物語であるが、安部公房的な趣があり、どこか哲学的問題を想起させる。 作者の作風の幅の広さを垣間見ることができる好短編集だった。
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成れの果て
数十年前にはあったという文壇とうい閉鎖社会と、当時はあった文学信仰のお蔭で行けた銀座の高級クラブ通いですっかり萎んでしまった果実の成れの果て。文学の冒険??お笑い草では。(浅学の徒の感想)。
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短編の切り方の質が高い!
小説内ではおよそ変わったことが起こらないですし、描写されるのは僅かに庭の場面のみなのにこのヒロガリの広さはまさに驚愕の「紺色の実」、観察記から怪談に変わる「百メートルの樹木」、シュールな夢なだけでは終わらせない表題作「鞄の中身」、やはり違和感を感じる人物なのですぐにピンと来た「スーパースター」、この短編集で最も強烈な印象を残す「暗い道」、そうかと思えば心地よい余韻を感じさせる「ミスター・ベンソン」。 どの短編も切り方が非常に絶妙です。この切り方に短編小説の妙があると個人的には思いますが、かなり好きな切り方ですし作者と作品の距離の取り方がイイです。 短編小説が好きな方にオススメ致します。
関連する文学賞
- 読売文学賞 第27回(1975年) ・受賞