作品情報
北海道の原野を背景に、少年から青年へ向かう暗い時間をたどる。
講談社文芸文庫版の紹介では、明治末から大正期にかけての少年期と青年期を北海道の原野を背景に描く自伝小説とされる。
レビュー要約
-
淡々とした語りの中に、時代と性の重さがにじむ点が読みどころである。回想の形式を取りながら、近代日本の地方生活を濃く伝えている。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2000-04-01
- ページ数
- 303ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784061982079
- ISBN-10
- 4061982079
- 価格
- 1000 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
ハレー彗星が地球に大接近し、湯河原で幸徳秋水が逮捕された明治43(1910)年、著者5歳から書き起こし、関東大震災の翌年、田舎の代用教員を辞し東京に出て地元の有力者の書生となった大正13年20歳を目前にする頃までを、北海道の原野を背景に描く自伝小説。抗し難い性の欲望に衝き動かされた青春の日々を独得の語り口で淡々と綴る傑作著篇。日本文学大賞受賞。
1906年(明治39年)3月30日(戸籍面4月6日)、北海道胆振国山越郡長万部村字訓縫(現在、長万部町国縫)に入婿であった父伊太郎、母リヱの四男として生まれた。同胞8人。家は荒物雑貨商を営む。
レビュー
-
エロいが、女性の描き方がうまいからだ
辛口批評の小谷野敦氏が☆5つ付ける高評価なのに釣られて購入して読んだ。著者の少年時代の性体験を基にした自伝的小説。小谷野氏がいうように生々しいエロさが際立つ描写だが、女性がよく書けている。なにより文章がいいし構成も独特で、最初はとまどうが、若者の実直さ、ストレートな感情表現には合っていると思う。日本文学大賞を受賞したのもわかる。傑作といっておこう。
-
独特な文章組み立ての自伝的小説
この作者は本作で初めて知ったのだが、読む前は名前から女流かと勘違いしてしまった。 文章の組み立てがかなり特徴的である。たとえば新たな登場人物の行動が、その人物について何の説明もなく、突然描かれたりする。人物説明は後からされることになる。あるいは現在の話の中で、わき道に突然それるような形で過去の話が挿入されたりする。そのような突発的なところがあり、最初のうちは読んでいてとまどってしまうのだ。 内容は老年の作者が、子どものころから20歳ぐらいまでのことを書いた、どこで終わってもいいような自伝的小説。最後が特に一つの明確な区切りというわけではないと思った。暗いといえば暗い、貧乏暮らしの話ではある。 解説では私小説について書かれているが、個人的には、私小説というのはあるテーマにしたがって(むしろ最近の)実体験の一部を切り取ったものだという意見なので、昔のことを書いた自伝は私小説だと思わない。まあ自伝的といってもフィクションはかなりあるそうだが。
-
驚くべき名作
本来なら十点つけたいところである。なんで品切れになっているのか理解できない。自伝的小説といっても、これは恐ろしくエロティックである。前近代的な気風の残る田舎での、今から見れば乱れきった男女関係に、まだ少年の主人公が巻き込まれていく。女が背中に負うて小便をさせるのから始まって、少年少女が性器をこすり合わせる遊び、陰毛が生えたのを友達に見せたり、事故で死んでしまったその友達の母親が好きになって、それを察知した母親が少年にセックスの手ほどきをしたりする。地味な自伝小説だろうと思ったら大間違いである。
関連する文学賞
- 日本文学大賞 第9回(1977年) ・受賞