日本の文学賞

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死の島 上 (講談社文芸文庫 ふC 6)

日本文学大賞

死の島 上 (講談社文芸文庫 ふC 6)

福永武彦

広島で被爆した女性画家と、彼女に惹かれる男、同居する女性をめぐる長篇小説。愛と死、記憶と創作が複数の時間軸で交錯し、戦後文学の重い主題を緻密な構成で描く。

愛と死広島記憶芸術家戦後文学

作品情報

絵の中の島は、愛する者たちを死と記憶の中心へ引き寄せる。

『死の島』は、福永武彦の代表的長篇。広島、絵画、恋愛、死の予感を結び、日記や小説内小説を取り込む複雑な構成で人間の孤独と愛を描く。講談社文芸文庫の上巻 ISBN を識別子に用い、作品全体は上下巻で刊行されている。

レビュー要約

  • 重層的な構成と心理描写の深さが評価されている。読むには集中を要するが、愛と死をめぐる問いが最後まで緊張を保つ。

書籍情報

出版社
講談社
発売日
2013-02-09
ページ数
446ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784062901864
ISBN-10
4062901862
価格
649 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

じっくりと長篇を読む楽しみ 日本文学の金字塔 広島で原爆に遭遇した女性画家、過去にいわくのある純真な女性、両者に愛を感じてしまった主人公。三人が生と死を突き進む24時間。

レビュー

  • 日本文学史に残る名作

    キンドル版を出してくださったことに心から感謝します。かなり分厚い本ですし、電子版で助かりました。 「メメント」や「テネット」が作られる何十年も前に本作が発表されていたのかぁと感動しつつ、今の今まで読んでいなかった自分は人生かなり損したなと思っています。テーマはタイトルの通り「死」が強く関連していますから重たいです。重たいですが、ぜひぜひ1人でも多くの人に読んでほしい。 いやー、すごいですぜ、この構成と展開。 文字・文章という二次元の表現手法は、こんなにも豊かで多層的で立体的で刺さるモノなのだということを改めて感じさせてくれる作品です。 繰り返しになりますが電子版を出してくださった出版社の英断に感謝します。本当にありがとうございます。電子版どんどん出してほしい。本好きは同一作品の電子版も紙版も買ったりしますから。紙版が絶版になっている名作はこれからも電子版で出してほしいです。

  • 電子版のスピード感でこそ読み終えられる。当時の背景も「鉄」な描写も。

    学生時代、文庫版で落伍し、40年余りたって電子版に挑戦してみました。正解。実験的な手法を使った学者詩人の作品と思うからいけない。のろのろ読んでは鮮度が失われる。電子版だとめくる速度も速くなり、その分、軽快に読める。作者がアメリカの現代文学にも、平和運動にも詳しいんだから、いっそ、黒澤映画みたいなスピード感で読みました。途中の「きりしま」のシーンも今となっては面白いし、主人公・相馬鼎とは正反対の、「或る男」のエピソードも哀切極まりない。途中、拡張新字体(涜)があったりしたので一点減点。文庫版はおそらく編集者の手が入ってるのかもしれません。でも楽しかった。

  • 読み継がれてほしい名著

    死のベクトルを持っているようで実は生への思いもある芸術家肌の素子と、生のベクトルを持っているようで実はそれに反する気持ちを持つ家庭的な綾子という2人の女性。そしてその間で揺れる作家志望の男性、相馬鼎の姿を描いた小説です。 この相馬鼎はなかなか鈍感で、様々なヒントに気づかず、いたずらに時間を費やしてしまいます。結局、相馬鼎は代償(それも読者が全く予期しえない形で示される代償)を支払うことで、自分の過ちを悟ります。この相馬鼎が悟るラストシーンと「或る男」のラストシーンの表現はただただ美しいです。興味深いのは、作中に相馬鼎の書いた小説がでてくるのですが、その内容のつまらないこと。このかき分けは非常に巧みと思います。これからも読み継がれるほしい作品です。 なお、アマゾンレビューで版面について批判されているレビューを見て心が痛みましたので、少しだけ蛇足を。本作は長らく絶版で、わたしはどうしても読みたくて古書店巡りをしましたが、四六判の上巻しか見つけられなかったため、とある復刊サイトで復刊希望に一票を投じたこともあります。その甲斐あってか2003年に新潮社オンデマンドで買えるようになりました。値段は上下巻で計1万円もして痛い出費でしたが、復刊活動が実を結んだと大喜びして購入しました。それから十余年、待望の文庫での再登場……だったはず。 確かに講談社文芸文庫版のページを開くと文字がびっしりで面喰らいます。正直なところ、最初は読みにくくて仕方なかったです。でも、私はすぐ慣れました。それに、今まで1万円出さなきゃいけなかったところ、4千円で買えるようになり、そして何よりこの本がまた文庫として日の目をみられたという意義は非常に大きいとわたしは思っています(なので、もちろん文芸文庫版も迷わず買いました)。このため、文芸文庫の編集部さんもこれを世に出すためにいろいろご苦労があったのではと推察しますので、なんだか残念だなあと思ってしまいました。まあ、版面を気にしている方は、おそらく『忘却の河』が新潮文庫から復刊してるので、なぜ同様にできなかったのか……という思いがあるのでしょう。確かにそれは私も重々理解できるのものです。 だた、一ファンとして、この名作が1人でも多くの読者を得られることを願ってやみません。

  • より力強い「生の存在理由」を描きこまなければ 読者への説得力に欠く

    本作品は福永の長編であり、代表作ともいえよう。 冬の朝、薄気味の悪い夢からさめた相馬鼎は創作ノートを繰りながら机の上に掛けられた絵を眺める。彼は300日前に展覧会場でみたその「島」という作品にひきつけられ、作者の萌木素子を尋ねる。 との紹介文のとおり、広島の原爆体験と共に「生を傍観する」女性と、男との愛に破れて「死を傍観する」 二人の女性と、「私」が絡み合いながら悲劇的結末に向かう。 戦後の、文学環境に適した内容であり、テーマの重々しい提示や 時空を変えたオムニバス風の構成も相まって畢竟の力作と評されるのも十分理解出来る。 しかし、読み進めるにしたがって 描かれる世界が「奇麗ごと過ぎないか?」という疑問が読者の胸に去来するのはなぜであろうか。。。 入念に、手が込んで作られた世界が 次第に、「虚構のむなしさ」を感じさせてしまうのである。 生と死を描き、その対比から「生の在りよう」を模索するのであれば、より力強い「生きることの存在理由」を描きこまなければ、読者への説得力に欠ける、と強く感じる。

  • 文学賞受賞の傑作

    ジブリ映画では「風立ちぬ」が話題になっていますが、堀辰雄の同名作品から着想を得ているのだそうです。この堀辰雄の流れをくむのが福永武彦で、「死の島」はこの福永を代表する長編小説です。この作品は最近、新刊文庫書として発売されましたが価格も装丁も違和感が強く、やはり新潮文庫のものを手にするに至りました。昭和51年の印刷・発売ですからそれなりに経年の劣化はありますが、福永の時代をも感じさせる文庫商品と考えます。良い作品を手元におけました。

  • あまりに早く書かれた実験作

    先のレビューにつけ加えるものは何もありません。 ただこの作品が傑作である点に私も一票を投じたく思い、 このレビューを書くことにしました。 数年前、映画『21g』が公開された当時、ストーリーの時間軸を バラバラにしてちりばめ、突然の場面転換を図るその手法に、 「斬新だった」という感想が巷にあふれました。 しかし、本当に斬新でしょうか? 福永武彦は、すでに30年以上も前に、 この『死の島』でそれを試みているではありませんか。 福永武彦という作家は小説技術というものに大変意識的だったようで、 それぞれの作品で何らかの実験を試みています。 この作品のように時間軸をバラバラにしたり、 『幼年』で、幼年期の自分と回想している現在の自分を 区別して書いてみたり。 それでいて、「技巧に走っている」という印象を 与えないその手腕は、まったく見事と言うほかありません。 福永は「作者と読者は作曲者と演奏家の関係のようだ」 と何かのエッセイで言っています。 作品は、それ自体で完成しているのではなく、 想像力を働かせて読むという読者の参加あってはじめて、 物語は完結するというのです。 この『死の島』のクライマックスをお読みになれば、 この作者の言が、決して空言ではなかったことがわかるでしょう。 賛否両論だったあの終わり方は、作者・福永武彦の小説観を 見事に体現したものなのです。 長々と書いてしまいました。 もう一度だけ繰り返して筆を置きます。 この作品は、偉大な実験作にしてまれに見る傑作です。

  • こんな小説があったとは・・・・

    乱読の傾向のあるものですが、最近、「草の花」、「忘却の河」と読み進め、この小説にたどり着きました。 テーマとか、心に残るシーンなど、私の乏しい語彙力では表現しきれませんが、この小説を読んでいる間は、完全に別世界に没入していました。 こんなすごい小説が身近にあったのか・・・・ 人間の心の闇をいやと言うほどのぞき込まされた感じです。 けど、読んだ後は、希望の光も見えた気持ちにもなりました。 文庫本にしては、ぱっと考えればすごく高価に感じますが、それだけの分量、内容は十分すぎるほど含まれていると思いました。 ほぼ映画2本分の金額で、これだけの世界を楽しめるんだと考えればいかがでしょう? 文字は小さいですが、読みやすいですし、文庫本なので持ち運びも便利です。潲

  • 作品自体は最高なので星ひとつにするのは心苦しいのだが

    この作品がとても好きで、長い間復刊を待ち望んできましたが、まさか講談社文芸文庫から出るとは… この文庫の価格設定はどう考えても正常ではありません。 いくつか読みたい本もあるのですが、他の文庫の倍近い値付けに恐れをなしてこれまで一冊も買ったことがありません。 今回の「死の島」も上下巻で4000円に迫るという、もはや文庫とはとても思えない超高額です。 この文庫お得意の手抜き感が滲みでた装丁もあいまって、 この作品の復刊を待ち望んでいた私でさえ全く食指が伸びません。 ましてこの作品の価値を知らない読者が、こんな高額の本を買うはずがないでしょう。 こんな出し方をしてすぐに『やっぱり売れなかったから廃刊』ではやりきれません。 今回の再発には怒りさえ覚えます。 今すぐ半額にして再発売して欲しいくらいです。

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