作品情報
わたしたちには家族をめぐる秘密がある。傷つき、傷つけ、思いあう。痛切な家族の愛のかたち。
偏頭痛の持病を持つ女子高生たまきは、何度目かの不妊治療の結果にナーバスになる両親を前に持て余した心を抱えて、近所の「縛られ地蔵」へ会いに行く。そこで出会ったしずくもまた、家族をめぐる秘密を抱えていた。語り手が「あなた」に語りかける形式で紡がれる、ステップファミリーの複雑な愛と傷みの物語。タイトルの「ジューンドロップ」は、樹木が弱い実を自然に落下させる生理現象に由来し、登場人物たちの心情の隠喩となっている。2023年7月31日、講談社より刊行。
レビュー要約
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文章の丁寧さや情景描写を評価する声がある一方、物語の展開についての賛否もみられる。評価傾向は賛否両論。
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高い評価を得ている。心情や情景の描き方の丁寧さ、構成の完成度を評価する声が多く、現代の家族問題を繊細に描いた作品として受け入れられている。
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選考委員の評価は賛否両論。島田雅彦は候補作中最もリーダビリティが高いと評価し、柴崎由香は心情や情景の丁寧な描き方と構成の完成度を評価。一方、町田康と松浦理英子は伏線的な叙述技法に疑問を呈した。
書籍情報
- 出版社
- 講談社
- 発売日
- 2023-07-31
- ページ数
- 160ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.5 x 1.9 x 19.5 cm
- ISBN-13
- 9784065326794
- ISBN-10
- 4065326796
- 価格
- 1600 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論
わたしたちには家族をめぐる秘密がある 母の不妊治療の失敗、凶暴な白い光と共に襲ってくる片頭痛。 しずくとタマキは、持て余した心を抱えて 縛られ地蔵に会いに行く――。 傷つき、傷つけ、思いあう。痛切な家族の愛のかたち。 「ふと脳裏に、幼い未発達の実が木から落下する光景が過りました。 どうして自分は彼らと同じ道をたどらなかったんだろう」 第66回群像新人文学賞受賞作!
1986年東京都生まれ。東京女子大学文理学部社会学科卒業。本作で第66回群像新人文学賞を受賞。
レビュー
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ちいさな光のような作品
現代の純文学とはどのようなものかと知りたくなり、2019年以降に芥川賞・三島由紀夫賞・泉鏡花文学賞・太宰治賞・林芙美子文学賞・文藝賞・群像新人文学賞の各賞の受賞作をアトランダムに15冊ほど読んだが、そのほとんどに辟易し「もう純文学はだめなのではないか?」と幻滅した。そんな中、本作はキャラクターがいて、物語があり、起承転結があり、カタルシスがあり、作者が「これを書きたい」という声が伝わってきた。甘さや弱さはあるかもしれないが一服の清涼剤のような読後感があり、純文学に絶望しかけていた私にわずかな希望を与えてくれた。
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わかっているなら教えてくれよ
ご都合主義の、誘導的な、そんな話の作り方を感じたので、この受賞作にはいまひとつ入りきれなかった。結局この話、二百五十枚も使って自分の父親が自分が生まれた日の次の日に自殺したことをずっと根に持って、母親が違う男の子供を身ごもったら、その赤ん坊が流れることを本心で願っていたという、それを懺悔した話だった。でも、そこまで言うんなら、翌日に死んだ経緯も教えてほしい。どうせわかっているんだろ、と思った。 この主人公は、入念に片頭痛と付き合いをしたい人のようであった。会社に、社会に片頭痛を持っている人間なんて掃いて捨てるほどいる。これしきのこと、みんな身の、忘れ無きケアとして特効薬を常に携え、自己を鼓舞することで乗り切っているのに。自分を育ててくれた人たちへつべこべと恨みがましい。祖父祖母は亡き息子の血を引いた孫を懸命にサポートしたいと言ったと思う。育てたいとすら言ったのではないか。結局なにか、弱い振りをしたい?しないと受賞しない? そういうのは文学として大変つまらない。
関連する文学賞
- 群像新人文学賞 第66回(2023年) ・受賞