日本の文学賞

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宝石のこえ

小説現代長編新人賞

宝石のこえ

野沢きみ

地球に宇宙人がやって来たのは、「私」が中学二年生のときだった。彼らはすでに言葉を捨てており、人間とコミュニケーションを取ることはできないが、声の無い彼らは人間、特に女性の声を聞くと「宝石」と呼ばれる綺麗な石を排出する。忌み嫌う故郷を捨て都会に出た「私」は、学費や生活費を奨学金で支援してもらう代わりに「宇宙人の店」で働き、宇宙人に音読して宝石を回収することを仕事にする。同僚のカナリアとの交流や、りょうちゃんとの出会いが日々を彩る中、捨ててきた故郷への思いは募るばかりだった。大嫌いな母、育ててくれたおばあちゃん、いじめを繰り返す同級生、近所ののろちゃん——。のろちゃんの死を知った「私」は久しぶりに故郷に帰り、都会もまた憧れの場所ではなかったと自覚する。そして「私」は、宇宙人の星への移住という提案に乗ることを決める。

ふるさと疎外感アイデンティティ家族移住SF女性の声

作品情報

故郷を求める痛切なメモワール。

第20回小説現代長編新人賞受賞作(受賞時タイトル「ようこそ!ここはあなたのふるさとです」、単行本化にあたり「宝石のこえ」に改題)。宇宙人が声を聞くと宝石を排出するという独特の設定のもと、故郷を憎みながらも郷愁を抱く女性の半生を描いた作品。著者は1988年生まれ、青森県弘前市出身の野沢きみ。講談社より2026年6月刊行(『小説現代』2026年5・6月合併号に全編掲載)。

レビュー要約

  • 選考委員からは「文章は頗る上手い」「美しく流れるような文章」「細部に細部を重ねながら、奇をてらうことなく、平易でけれど光る表現の数々がある」と文章力を高く評価された。一方でラストの宇宙移住の動機の不明確さや、ファンタジーとリアリズムのバランスについて課題が指摘された。宮内悠介は本作を「私の一押し」と強く推した。選考委員の間で長い議論を生んだ賛否両論の作品。

書籍情報

出版社
講談社
発売日
2026-06-17
ページ数
320ページ
言語
日本語
ISBN-13
9784065435274
ISBN-10
4065435277
価格
2310 JPY
カテゴリ
本/文学・評論

第20回小説現代長編新人賞受賞作! 人間の声を聴くと口から宝石のような物質を排出する宇宙人。主人公の瑠璃は、彼らのその性質を利用して対価をもらう「宇宙人の店」で働く代わりに、大学に進学するための費用や生活費などを奨学金として援助してもらっている。 故郷を捨て都会に出てきた瑠璃は、働きながら新たな友人や恋人と出会い日々を謳歌するが、恋人の了一に自らの過去を話せないでいた。 彼と親密になればなるほど、育った環境の違いによる瑠璃のひけめは増すばかり。そんな時、故郷で育ててくれた母代わりの存在が亡くなってしまう。根っこを失い、寄りかかる枝葉もなくなった瑠璃は、言葉の通じない、宇宙人に自らの過去を語り始める。 「故郷」を問う、痛みに満ちたメモワール。

1988年生まれ、青森県弘前市出身。2025年、「ようこそ! ここはあなたのふるさとです」で第20回小説現代長編新人賞を受賞し、翌年同作でデビュー。

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