作品情報
言葉の壁を越えて始まる、静かでユーモラスな恋の物語。
集英社文庫として2001年11月に刊行された受賞作。表題作を含む三篇で、北京を舞台に言葉と文化のずれを軽やかに描く。
書籍情報
- 出版社
- 集英社
- 発売日
- 2001-11-20
- ページ数
- 216ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784087473834
- ISBN-10
- 408747383X
- 価格
- 499 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/文芸作品/日本文学
北京を舞台に、言葉の通じない中国人男性との性愛を通して、日本人女性が直面する「文明」の差異。越境する恋愛をユーモアを込めて描く第19回すばる文学賞受賞作。 (解説・藤井省三、莫言、王朔)
レビュー
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実際のハンスーインはすごい女傑
映画『慕情』のファンでビクトリア・ピークに3回ほど行ったが、だんだんハンスーインってすごい人だとわかった。 最初中華民国の軍人と結婚するが夫は国内戦で死亡し、その後イギリス軍人と結婚し、離婚、 今度はインドの大尉と結婚し、死別。その間に、医師として病院に勤務し、小説を書き、 現在の南洋理工大学の設立に貢献し、晩年はスイスに住み、96歳の時、自宅(ローザンヌ)で永眠した。 頭がよく、行動力があり、普通の人の何人分も生きた人だった。 『韓素音の月』は北京を舞台に日本女性と中国人男性の恋愛を描いている。 言葉の通じない不思議な状況の恋物語だ。
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若い女性ってこんなものでしたっけ
感覚だけで男性を選び恋から恋と渡り歩く表題の主人公。今から読むとあの時代のふわふわした空気と自由を得た若い女性達のロマンチックな生き様がよくかかれてます。全く言葉の通じない中国人とデートして、そのまま付き合ってしまう。なんて向こう見ずで最高に楽しいでしょうね。楽しく読みました。
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一番美しくて大きなのは北京の月
書名の韓素音(ハンスーイン)は中国人女性のことです。父親が外交官でベルギー在任中にベルギー人と結婚して生まれたハーフで医師です。写真を見ると目鼻立ちのはっきりした鼻梁の高い顔立ちです。ハリウッド映画「慕情」の原作はこのハンスーインなのです。面白いのはヒロインの名もハンスーインで自分の名前を使っています。自伝的小説も書いています。中国では著名な人で、韓素音の名を付した弁論大会があります。最も名誉な賞だそうです。書名の由来は、この小説の中ほどで書かれていますが、映画「慕情」の中でハンイースンのさりげない台詞”一番美しくて大きなのは北京の月よ”これがこの本「韓素音の月」の表題の意味です。主人公の”園子”もそのように感じたことがあります。かつて、主演の米人ウィリアム・ホールデンの目で映画を見ていたが、中国へ来てハンスーインの目で見られるようになってきた”園子”は映画の中で唐突に出てきた台詞”一番美しくて大きなのは北京の月よ”に動揺します。日本に身を置ききれなく(著者は資本主義的快楽消費者という言い方をします)コスモポリタンと化した”園子”が、中国と言う世界に身を置ききれない”ハンスーイン”を発見するからです。それからは、”園子”は中国の少数民族になりきります。少数民族としての視点から生活し考え続けます。著者茅野裕城子自身が世界放浪の中で到達した感性を表現します。小説の中で、自分が何処に居るかわからない浮遊感がたまらなく好きだと言います。オルターナティブな視点でネイションを漠然と横目で見ているという感性が感じられます。次世代の感性なのでしょうか。
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日本人女性と中国人男性の奇妙な恋愛
三作からなる短編集。それぞれ北京、東京、ニューヨークが舞台で、主人公は日本人、日系アメリカ人、韓国系ブラジル人とすべてアジア人女性。この設定がユニークで今のボーダレス時代を感じさせる。 表題作は、友人に会いに北京を訪れた園子と中国人舞台演出家の奇妙なラブストーリー。二人は惹かれ合うものの、お互い全く言葉が通じない。コミュニケーションの手段は筆談のみ。だがら誤解ととんちんかんな思い込みの連続。思わず「おいおい」と突っ込みたくなる。間がもたずに性的関係を結ぶが、皮肉なことに体の相性は最高にピッタリ。しかしいつまでたっても心は理解し合えない。そんな奇妙な恋愛が軽快でユーモラスに描かれている。全篇が会話体中心なのでまるで自分が園子の友人で実際に彼女の身の上話を聞いている感覚を味わえ、ストーリーにすんなり入っていける。あとの二作も国際色満載のラブストーリーだが、アイデンティティーの問題も絡んでちょっぴりせつなくほろ苦い。
関連する文学賞
- すばる文学賞 第19回(1995年) ・受賞