日本の文学賞

← 受賞作品一覧に戻る
ギアをあげて、風を鳴らして

小説すばる新人賞

ギアをあげて、風を鳴らして

平石さなぎ

第38回小説すばる新人賞受賞作。小学四年生の吉沢癒知は、宗教団体「荻堂創流会」の近畿支部で「降り子(=創父の生まれ変わり)」として信徒から崇拝されていた。幹部の母からは、神聖な身体を持つ者として食事や他者との触れ合いを厳しく制限されていたが、自分に寄せられる信徒の信仰心や日々の「儀式」に抵抗をおぼえはじめていた。そんな癒知の前に現れたのは、家庭の事情で何度も転校を繰り返している渡来クミ。ある日、学校のトイレで遭遇したことをきっかけに、ふたりは距離を縮めていく。母親同士も親交を深めるようになり、やがて二人を取り巻く状況は思わぬ方向へと展開していく。新興宗教の閉鎖的な世界で育った少女と、転校を繰り返し居場所を探し続ける少女が紡ぐ、シスターフッドの物語。

宗教二世シスターフッド少女の友情新興宗教ヤングケアラー子どもの自由関西弁

作品情報

「しあわせ」がずっと同じ形で続くことはないし、逆に「しあわせ」がなくなったとしても、完全に消えてしまうものではなく、きっと形を変えてその人の心のどこかに残るものなんじゃないか。

「ギアをあげた日」から改題。宗教団体の「降り子」として生きる小学四年生の吉沢癒知と、父の転勤で何度も転校を繰り返す渡来クミ、ふたりの少女の出会いを描いたデビュー長編。著者の平石さなぎは1997年京都府生まれ、大阪府在住で大阪文学学校夜間部出身。帯には「シスターフッド小説」と明記されており、女性同士の深い連帯を描く作風が特徴。装画は中島花野。

レビュー要約

  • 宗教団体で信仰対象として育った少女と転校生の友情を、関西弁の温かみある文体で描いた作品として高く評価されている。宗教二世の描写が重く切なく感じる一方で、二人の少女の交流シーンは瑞々しく心が温まるとの声が多い。感情移入しやすく、登場人物のその後を強く気にかけるほど引き込まれる内容で、シスターフッド小説としての評価が高い。

  • 読売新聞書評でロシア文学研究者の奈倉有里が取り上げ、宗教施設の壁を友と越えていく少女たちの姿を好意的に評価した。

書籍情報

出版社
集英社
発売日
2026-02-26
ページ数
256ページ
言語
日本語
サイズ
13.4 x 2.1 x 19.4 cm
ISBN-13
9784087700428
ISBN-10
4087700429
価格
1870 JPY
カテゴリ
本/文学・評論/文芸作品/日本文学

第38回小説すばる新人賞受賞作。 小学4年生の吉沢癒知は、宗教団体「荻堂創流会」の近畿支部で「降り子(=創父の生まれ変わり)」として信徒から崇拝されていた。幹部の母からは、神聖な身体を持つ者として、食事や他者との触れ合いを厳しく制限されていたが、自分に寄せられる信徒の信仰心や日々の「儀式」に抵抗をおぼえはじめていた。そんな癒知の前に現れたのは、家庭の事情で何度も転校を繰り返している渡来クミ。引っ越し当初、近所を散策中に見かけた「めっちゃきれかった」癒知に興味津々。ある日、学校のトイレで遭遇したことをきっかけに、ふたりは距離を縮めていく。そして繋がりを持ったのは癒知とクミだけでなく、母親同士も親交を深めるようになり……。 【著者略歴】 平石さなぎ (ひらいし・さなぎ) 1997年京都府生まれ。大阪府在住。本作で第38回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。

レビュー

  • 舞台設定が斬新。

    テーマが斬新でありながら、その中で書かれる友情が普遍的なものなので、エンターテイメントとしてバランスが良い作品になってるという印象。 電子書籍でも良いが、紙で読む方が行き戻りしやすいのでお勧めです。

  • 大人はどこへでも行けるようで、どこにも行けない。

    面白かった。大人が願っても二度と戻れない場所に今まさにいる2人の物語。誰もが一度は感じたことのある「大人になって失くしてしまったけど、かつては自分にもあった」という名前もついていない感覚に久しぶりに触れた気がする。読後感も素晴らしい。

  • 次の本が楽しみ

    あまり詳しく感想書いちゃうとネタバレになんだけど、ちょっとこれは凄かったわ、、 グサクザ、ウルウル、イケイケ!

  • 圧巻。

    さすがスバル新人賞…というか、とにかく最高でした。終わりが近づくと、ページを捲るのが惜しくなり、しかし手が止まりませんでした。 最近読んだ中でも群を抜いて、心に響いた作品でした。

関連する文学賞